おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

シャイアン

2019-07-21 04:43:26 | 映画
「シャイアン」 1964年 アメリカ


監督 ジョン・フォード
出演 リチャード・ウィドマーク
   キャロル・ベイカー
   ジェームズ・スチュワート
   アーサー・ケネディ
   エドワード・G・ロビンソン
   カール・マルデン
   ドロレス・デル・リオ

ストーリー
故郷イエローストーンから、荒涼たるインディアン居留地に移されたシャイアン族は、病気と飢えのため約3分の2が死んでいった。
酋長達は相談の上、生き残った同胞をつれて故郷に帰ることにした。
一行の中には、子供達に読み書きを教えているデボラという白人の娘が加わっていた。
脱出の報に合衆国警備隊は追跡を開始。
その中には、デボラを妻にと望んでいるアーチャー大尉がいた。
酋長達の努力にもかかわらず、仲間割れが原因でついに戦いは始められた。
ニュースは誇大宣伝され内務長官は鎮圧しなければ、自分の政治的生命も危ないと悟った。
ダッジ・シティでは市民軍が結成され、隊長には名保安官ワイアット・アープが選出された。
アープの努力にもかかわらず、両軍は大混乱をおこす始末。
やがて冬になり、寒さと飢えがシャイアンを苦しめた。
大尉とデボラの説得で、酋長の1人は降伏したが、白人達の苛酷な態度に再び戦う決心をした。
洞窟に身を隠したシャイアン達に、合衆国陸軍は大砲で攻撃した。
もはや時間の問題と思われた時に騎馬隊が現れた。
その先頭にいたのはシャイアンの生命を救うため、政治的生命を捨ててやってきた内務長官とアーチャー大尉であった。
うららかな春の日、シャイアン達がアーチャー大尉の部隊に護られてイエローストーンに到着した。
愛しながらも、シャイアンを苦しめた大尉を許す事ができなかったデボラは、初めて彼と喜こびを分ちあう。


寸評
この「シャイアン」は僕が映画館で最初に見た西部劇であり字幕映画なので、その為に作品内容以上に思い入れのある映画となっている。
それまでテレビドラマで見ていたものでは騎兵隊は善で先住民は悪という描き方が圧倒的だったが、ここではアメリカ政府によって翻弄されるシャイアン族の苦難の逃避行が描かれ、先住民に同情的である。
西部劇の神様と称されるジョン・フォードが、それまで手がけてきた西部劇の中で敵として描いてきた先住民への贖罪の気持ちがあったのかもしれない。
騎兵隊の中には命令こそ絶対唯一のものとする者や、感情を無視して職務を忠実に遂行しようとする者、あるいは父を殺されたことで先住民への復讐心に燃える者などがいる。
それでもアメリカ人の中にもいい人もいたのだというスタンスはなくしていない。
その代表がキャロル・ベイカー演じるデボラ・ライトだ。
彼女は先住民の子供たちに英語を教えていて慕われている。
最初から最後まで先住民と共にあり、先住民の信頼を得ている女性で、アメリカの良心の象徴だ。
リチャード・ウィドマークのアーチャー大尉も先住民に対して同情的で、無謀な攻撃を加えようとしない。
先住民側から描きながら白人側の善も描いているので告発映画という感じはしない。

ジョン・フォードとしては初のスーパーパナビジョンによる70mm作品だが、それを生かした騎兵隊と先住民の壮絶な戦いが描かれることはなく、戦いは局地戦の域から出ていない。
むしろ画面を圧倒するのは逃避行を続ける彼等の背景にある西部の風景だ。
追跡する騎兵隊の描写も含めて画面は詩情にあふれている。
その詩情を壊すのがダッジ・シティにおけるワイアット・アープの登場である。
ここでなぜワイアット・アープとドグ・ホリディが登場する必要があったのか。
なくても良いようなエピソードが挟まれ、僕は大いに違和感を持った。
ワイアット・アープを演じているのがジェームズ・スチュアートなのだが、まるで道化役者のような存在で、急に出てきて急に消えていった感じだ。
お腹を減らして食べ物をねだりに来たシャイアンを楽しみながら撃ち殺し、頭の皮をはいだ4人組の男たちの顛末も描かれておらず、どうもこのシークエンスには納得がいかない。
どこが「ダッジ・シティの戦い」なんだ。
この時間をもっとほかのエピソードでつないでいたら、更に詩情豊かな作品になっていたのではないかと思う。
ジョン・フォード晩年の作品で、ワイアット・アープへと西部劇への惜別の意味合いでもあったのだろうか。

ダル・ナイフとリトル・ウルフは実在の酋長で、ここで描かれた逃避行も実話だ。
映画と違って実際は、彼らに続く者たちが本来のワイオミングに保留地を認めさせたようだ。
最後にダル・ナイフの息子の赤シャツを殺し、去っていったリトル・ウルフ夫婦を浮かばせる夕陽は美しく悲しい。
彼等の崇高な精神が描かれている。
最後にシャイアン族は故郷であるイエロー・ストーンへ戻ることができたのだが、その決断をするエドワード・G・ロビンソンが渋い演技で締めくくっている。

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