おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

リボルバー

2024-03-27 07:01:30 | 映画
「リボルバー」 1988年 日本


監督 藤田敏八
出演 沢田研二 村上雅俊 佐倉しおり 柄本明
   尾美としのり 手塚理美 南條玲子 小林克也
   山田辰夫 村田雄浩 長門裕之 高部知子

ストーリー
巡査部長の清水信彦(沢田研二)は見合いの相手・亜代(南條玲子)と付き合っていたが、あまり結婚したいとは思っていなかった。
ある日清水は公園で阿久根(小林克也)に背後から頭を打ちつけられ、拳銃を奪われた。
阿久根は部長昇進目前の会社員であったが、6年も前から不倫関係にある同じ課のOL・有村美里(吉田美希)が阿久根との関係を清算し、営業課の男との結婚を決意したことに耐えられず、家族も地位も自らの命さえも捨ててこの結婚を阻止するつもりだった。
しかし、二人を殺すことはできず、拳銃を動物園のゴミ箱に捨てた。
それを拾ったのは高校生の進(村上雅俊)。
彼はある晩レイプの現場を目撃したが何もできず、犯人に殴られてしまった。
進はその男・石森(山田辰夫)を殺したくて鹿児島から札幌へ追った。
清水は拳銃を奪われた責任をとって警察署を退職。
ふと知り合ったホステスの節子(手塚理美)のヒモのような生活を送っていた。
だが、自分の拳銃のありかを知って少年に殺人を犯させまいと、進のガールフレンド、佐伯直子(佐倉しおり)と共に札幌へ旅立った。
進は石森の居場所をつきとめたが、いざ命乞いされると撃てなかった。
しかし、その時進の落とした拳銃を亜代が拾い、自分をふった清水に向けて撃った。
だが、その弾ははずれて、競輪狂・蜂矢(柄本明)の体に当たった。
それまでツキに見放されていた蜂矢は痛みをこらえながら相棒の永井(尾美としのり)と共に「これでツキが戻ってくる」と喜んだ。


寸評
警官が拳銃を奪われる映画は度々描かれてきており、その多くはサスペンス劇だが、本作はサスペンスの要素は少なく男女を絡ませた群像劇となっている。
冒頭で登場人物の簡単なエピソードが次々と描かれていく。
その一見関係なさそうな連中が磁石に引き付けられるように集められていくのがこの映画の醍醐味となっている。
サスペンスの重厚感はなく、むしろ青春物語のような軽さがあるのだが、そうでありながら主人公を演じているのが中年にさしかかった元アイドルの沢田研二なのが面白い。
沢田研二が演じるのは冴えない警官だが、もっと冴えないのが小林克也のもうすぐ部長になる会社員の阿久根
である。
阿久根は美里と不倫関係だったが、美里が結婚することになり別れを切り出される。
上司としてその結婚式に出席していて、そこで挨拶でも頼まれていればシリアスだと思うが、顛末は滑稽なものとなっている。
阿久根はみじめったらしく美里にすがるが、清水と高校生の進に対しては女性の方が積極的だ。
亜代は清水が上司の勧めで見合いした相手で、清水が指摘したように結婚することと、その後の安定した生活を目的としている女性だ。
それが清水のストーカーのように変節する。
清水をめぐって繰り広げられるホステスの節子とのバトルも面白いのだが、愛憎劇ではないので二人の確執をそれ以上は描かれていない。
描いても面白かったと思う。

競輪仲間として柄本明と尾美としのりが狂言回し的に登場してくるが、僕は登場人物の中でこの二人の存在が一番面白かった。
二人が行きつけのスナックでホステスさんたちと会話する。
「金を持てば使いたくなる、酒があれば飲みたくなる、タバコがあれば吸いたくなる」と言う蜂矢に、ホステスの一人がすかさず「マッチがあればつけたくなる」と答える場面だ。
拳銃を持てば撃ちたくなるということで、進は暴行を受けた石森を撃ちに行く。
撃つつもりはなかったかもしれないが、拳銃に力を得て仕返しをするために札幌に向かう。
誰だって屈辱を受ければ「今に見ていろ」とかの気分になるから、進の気持ちは分らぬでもない。
僕も長い人生の中で何度もそんな気分になったことはあるが、幸いにして暴力による屈辱は受けたことがない。
ばらばらだった人々が拳銃に引き寄せられるようにして事件現場に登場する。
蜂矢は流れ弾で足を撃たれてタンカで運ばれながら、いい加減だが根がポジティブな彼は「弾に当たったからついている。しかもお足(お金の呼び名)だ」と狂喜する。
蜂矢と永井のデコボココンビはこの映画をポップにしている立役者だ。
清水はホステスの節子と別れる決心をするが、部屋の鍵を受け取った節子が清水の後姿に拳銃を撃つ真似をして「バン!」と言う。
店を出た清水は背中を撃たれた恰好をしてニコリとし、やがて物悲し気な顔で去っていく。
ここで終わっても良かったように思うが、その後のシーンはこの映画らしい。
藤田敏八の遺作だが、往年の彼なら進の屈折した気持ちをもっと描き込んだのではないかと想像した。


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