おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

時代屋の女房

2021-03-18 08:33:40 | 映画
「時代屋の女房」 1983年 日本


監督 森崎東
出演 夏目雅子 渡瀬恒彦 大坂志郎 初井言榮
   津川雅彦 藤木悠 藤田弓子

ストーリー
東京の大井で、三十五歳でまだ独り者の安さんと呼ばれている男が「時代屋」という骨董屋を営んでいる。
夏のある日、野良猫をかかえ、銀色の日傘をさした、真弓という、なかなかいい女がやって来ると、そのまま店に居ついてしまう。
一緒に暮すようになっても、安さんは、真弓がどういう過去を持っているか訊こうともしない。
そんな真弓がひょいと家を出ていくと、暫く戻ってこない。
喫茶店サンライズの独りもんのマスターやクリニーング屋の今井さん夫婦、飲み屋とん吉の夫婦などが親身になって心配していると、真弓は何事もなかったかのように帰って来る。
闇屋育ちのマスターは、カレーライス屋、洋品店、レコード屋などをやったあげく、今の店を開き、別れた女房と年頃の娘に毎月仕送りをしながらも、店の女の子に次次と手をつけ、今はユキちゃんとデキているが、その彼女は、同じ店のバーテン、渡辺と愛し合っている。
今井さんの奥さんが売りにきた古いトランクから昭和11年2月26日の上野-東京間の古切符が出てきた。
47年前、ニキビ面だった今井さんが近所の人妻と駆け落ちしようとして連れ戻され、使わなかった切符で、青春の思い出を蘇らせる今井さん。
真弓がいない間に、安さんは、どこか真弓に似ている美郷という女と知り合い、関係を結ぶ。
東京の孤独で華やいだ暮しを畳んで、彼女は東北の郷里に戻って結婚しようとしており、その寂しさの中で、安さんと出会ったのだ。
マスターは遊びが過ぎて店を閉める羽目となり、ユキちゃんと渡辺クンに店を引き取ってもらい、小樽の旧い友人を訪ねて旅に出ることにする。
安さんも、岩手でのぞきからくりの売り物があると聞き、一緒に車で旅に出る。


寸評
夏目雅子は惜しまれながら若くして亡くなった惜しい女優である。
早世した為に半ば伝説化して、出演作の評価以上にその死を惜しまれている。
僕は彼女の出演作の中でこの「時代屋の女房」の夏目雅子が一番気に入っている。

オープニングがいい。
白いパラソルが揺らめいて陸橋の上をやってきて、そしていい女としか言いようのない夏目雅子が現れ、安さんの店にやってくるのである。
いいんだなあ、このオープニング。
また、ちあきなおみの歌う「Again」の哀愁を帯びたメロディが流れると、一度聞いただけでそのメロディが脳裏に残ってしまうのだから、このテーマ曲の選定と使い方は的を得ていたという事だろう。
映画の内容は不思議に思うことの連続で、その疑問は最後まで解消されないのに、見終ってしまうと不思議と納得してしまう。
夏目雅子演じる真弓はぶらりと渡瀬恒彦がやっている骨董屋にやってきて、二人はできてしまい居ついてしまう。
氏素性が分からないままに同棲を始めるのだが、そんなに簡単に・・・と思う。
おまけに、この真弓は度々「しばらく留守にします」と言い残して出ていき、数日間返ってこない。
その間に何をしているのかは分からないし、渡瀬恒彦のやっさんは何も聞かないから全く不明である。
真弓は安さんを気に入っているのか、出ていっては何事もなかったように戻ってくる。
なぜ消え去らないで戻ってくるのかは分からない。
それでも、そんな真弓に惹かれていく安さんの切ない思いがよくわかり、僕は彼と一体化していくのである。

本筋とは離れて付随的にいくつかのエピソードが描かれているが、そのどれもが僕には思い当たるふしはある。
クリーニング屋の大坂志郎は法事にことよせて、昔駆け落ちを約束した女性がまだ住んでいると聞いて遠い故郷に出かけていくが、ホームで待っていた彼女は昔とは違う見栄えのしない老人だったのでそのまま引き返してきてしょげかえっている。
憧れた女性の姿は歳を取っても昔のままで残っているが、会えばその変わりように愕然とすることは想像出来る。
別れた女性に会ってみたい気もするが、彼女も今の僕を見ればきっと幻滅するに違いない。
美しくて懐かしい思い出と、心にとどめておくのが無難なようである。
夏目雅子が二役をやる美郷という女性も、不本意な自分の人生に不満を持ちながらも結局運命に従っていく。
一方の真弓とは対極にある女性である。
彼女も一夜を安さんと過ごすが、そんな美郷にもフェミニストの安さんは精一杯の態度を見せる。
安さんはいい男なのだ。
安さんがたむろしているのは津川雅彦の喫茶店であったり、もと女子プロレスラーの藤田弓子夫婦がやっている居酒屋だったりするのだが、そんな店が近くにある町なら僕も住んでみたいと思ったりするいい関係だ。
喫茶店の渡辺クン役で趙方豪が出ているが、いい俳優だったのに彼も若くして亡くなっており残念なことだ。
真弓は帰ってくるが、安さんは多分何も聞かないのだろうな。
そう思わせるエンディングもよかった。


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2 コメント

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行ったことがあります (FUMIO SASHIDA)
2021-03-22 22:30:02
昔は、品川に住んでいたので、何度か行ったことがあります。
もちろん、あんな美女はいませんでした。
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品川 (館長)
2021-03-23 10:45:56
品川は再開発で随分変わったと聞いております。
新幹線もとまるようになりましたからね。
大阪人の私は東京のことがよく分かりません。
特に下町風情の残る場所のことは。
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