おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

日曜日が待ち遠しい!

2024-01-24 07:50:57 | 映画
「日曜日が待ち遠しい!」 1982年


監督 フランソワ・トリュフォー
出演 ファニー・アルダン ジャン=ルイ・トランティニャン
   カロリーヌ・シオル ジャン=ピエール・カルフォン
   フィリップ・モリエ=ジュヌー フィリップ・ロダンバッシュ

ストーリー
バルバラ・ベッケルは、南仏のニースに近い町にあるヴェルセル不動産のオフィスで秘書として働いている。
社長のジュリアン・ヴェルセルは狩猟好きで、その朝も鴨撃ちに行っていた。
留守中に社長夫人のマリー・クリスティーヌから電話が入り、預金を下ろして送って欲しいと依頼される。
オフィスを留守にできないことなどを理由にバルバラが断っているところへ、ジュリアンが戻って来た。
電話をかわった彼に、秘書の悪口を言う夫人。
結局、バルバラは、クビになってしまった。
その日、警察署長のサンテリと助手のジャンブロー刑事がオフィスにやって来て、ジュリアンの狩猟仲間のジャック・マスリエという男が、その朝やはり鴨撃ちに行って銃で撃ち殺されたことを知らされた。
バルバラは、素人劇団の団員で仕事を終えると、稽古に入る。
次の日曜日にヴィクトル・ユゴーの「王のたのしみ」が上演されることになっていて、バルバラは、道化師トリブーレの娘で小姓姿のブランシュ役だった。
道化師トリブーレを演じるベルトランは、バルバラとは一年前に離婚しているが、今でも時々関係を迫っていた。
バルバラにクビを宣告したはずのジュリアンが、自分の殺人の容疑を晴らすために無実を立証して欲しいと協力を頼みに来た。
ジュリアンの許に女性の声で脅迫電話がかかり、ヴェルセル夫人と恋愛関係にあったマスリエをジュリアンが嫉妬から殺したのだ、となじった。
その夜、ニースのホテルから戻った妻とその電話をめぐって口論するジュリアン。
遂に警察に呼ばれたジュリアンは、親友の弁護士クレマンのおかげで拘留はまぬがれたものの、家に帰ってみると、妻が惨殺されていた。
ジュリアンの頼みで、マリー・クリスティーヌの結婚前の行動を探ることになったバルバラは、ニースに向かった。


寸評
クレジット・タイトルがかぶるオープニングがとてもサスペンス映画と思えないところから、カットが変わって猟をする男が猟銃で撃ち殺されるのはミステリーの入りとしてはスムーズだったのだが、そこからのシーンは少し興味を削がれる描写だったと思う。
ベルセルが猟銃を持って出てきて止まっていたポルシャのドアを締めてやる。
このポルシェは殺された男のものらしいので、いかにもベルセルが犯人であるらしいことを匂わせるのだが、彼が犯人なら指紋を残すような締め方をしないだろうから、彼が犯人でないことは容易に想像がつく。
その後も、わざとらしいエピソードが多すぎるし、エピソード同士を絡ませすぎたために全体がぼやけてしまっている印象を持つが、ネストール・アルメンドロスのモノクロカメラも美しいので、二転三転しながら真相に迫っていくストーリーは楽しめる。
今見ると、僕がトリュフォーのファンだったこともあり、彼の遺作ということもあって感慨を持って見ることが出来た。

犯人として疑われ、警察の追及を受けているのがジャン・ルイ・トランティニャンのヴェルセルなのだが、作中での彼の影は薄い。
ファニー・アルダンのバルバラがやたら目立ち、完全に彼女の独り舞台と言った感じだ。
クビになったバルバラが、自分をクビにした社長のヴェルセルの為にどうしてそこまで必死になるのかわからず、少々興ざめしていたのだが、最後の方でその理由が明かされる。
その展開は唐突過ぎて盛り上がりに欠けている。
全体のまとまりに欠ける無理がちりばめられているとはいえ、ここまで見せる作品を最後まで作ったトリュフォーはやはりすばらしい監督だったのだと思わせる。
バルバラは素人劇団の団員で、稽古中の演目はヴィクトル・ユゴーの「王のたのしみ」であったり、マスリエが館主だった映画館“エデン”座にかかっている映画がキューブリックの「突撃」だったりするのはトリュフォーのこだわりだったのかもしれない。
演劇におけるバルバラは道化師トリブーレの娘で小姓姿のブランシュ役なのだが、艶めかしさを感じさせるそのコスチュームを時々見せるのは、ファニー・アルダンをヒロインとして盛り立てる為に一役買わせていたのだろう。

作品がモノクロで撮られていることで光や影の使い方が効果的な雰囲気を出している。
特に、真犯人が夜の電話ボックスで警官に捕まる映像演出は美しい。
「日曜日が待ち遠しい!」というタイトルの意味も明かされるが、ちょっと笑ってしまうようなハッピーエンドのための一言だった。
それぞれの殺人事件の関連が一気に明かされるのはミステリーの常道だと思うが、僕は真犯人とチケット売り場の女性の関係がイマイチ理解できなかったのだが、僕の見落としだったのだろうか。
タイトルバックで子供たちのものらしいらしい足元を蹴とばされていたものが、ああこれだったのかと知らせてくれる処理に、僕は送別の拍手を送った。
1970年の日本万博におけるフランス館で「大人は判ってくれない」を見てからトリュフォーに興味を持ち、名画座上映を含めて随分と彼の作品を見たのだが、もうトリュフォー作品を見ることが出来なくなってしまったのは、やはり淋しい思いがする。


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