おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

天地創造

2022-11-27 09:29:43 | 映画
「天地創造」 1966年 アメリカ / イタリア


監督 ジョン・ヒューストン
出演 マイケル・パークス ウラ・ベルグリッド リチャード・ハリス
   フランコ・ネロ ピーター・オトゥール ジョージ・C・スコット
   エヴァ・ガードナー スティーヴン・ボイド ジョン・ヒューストン
   エレオノラ・ロッシ=ドラゴ ガブリエル・フェルゼッティ

ストーリー
神の6日間にわたる創造のいとなみから、最初の人間アダムとイヴが誕生する。
エデンの園で暮らすうち、禁断の木の実を食べたイヴは、アダムにもそれを食べさせた。
神の怒りにふれた2人は楽園を追われ、アダムは労働に従事しなければならなくなった。
やがてカインとアベルという2人の息子が生まれ、カインは農場にアベルは羊飼いとなった。
ある日2人の神への供え物のうち、神はカインの供物を認めなかった。
怒りと嫉妬から、カインはアベルを殺してしまい、神の裁きを受けて放浪者となった。
イヴに三男セトが生まれ、この子孫がノアである。
彼は信仰あつく、神が洪水で人類社会を滅ぼした時も、彼だけは救われた。
はこ舟に、あらゆる生物と一緒に乗り、1年ののち、アララット山についた。
やがて、ノアの子孫クシの息子ニムロデは王となり、民を使役して、天にもとどくバベルの塔を築いた。
神はこれを喜ばず、彼らにさまざまな言葉をしゃべらせて、地球上の各地へ四散させた。
アブラムは妻サライ、弟ロトを連れてカナンの地へ行き、そこで栄えたが、サライには子が生まれない。
アブラムは妻の勧めで召使ハガルに子を生ませイシマエルと名づけた。
やがて隣国との戦いが起こり、アブラムは神の手引きにより敵を破り捕虜となったロトを救けた。
神は夫妻の名を、アブラハム、サラと改め、子孫は王になると予言しサラに子を授けると約束した。
ソドムとゴモラの都が滅びた時、ロトの妻は神の命令にそむき、塩の桂と化した。
アブラハムは神の命に従いイサクをつれ旅立ち、神にいけにえを供える場所にたどり着くが・・・。


寸評
僕はこの映画を高校時代の封切時に見ているのだが、保存しているパンフレットの日付を見ると1966年11月6日となっている。
キリスト教、聖書について詳しくなかった僕は、旧約聖書を忠実に映画化したとの触れ込みに興味を持って行ったところ、随分と大雑把な映画だなあとの印象を持ったように記憶しているのだが、再見してもストーリーを追い過ぎてドラマチックでないとの印象を持つ。
映画は「天と地の創造」、「アダムとイブ」、「カインの殺人」、「ノアのはこ舟」、「バベルの塔」、「アブラハムの放浪」、「ソドムとゴモラ」、「イサクの誕生」、「アブラハムの試練」という9編の物語を紡いでいる。
僕にとっては、概要しか知らなかった内容をビジュアル的に教えてもらったような教育映画である。

「初めに神、天と地を作り給えり」というナレーションから始まる神の6日間にわたる創造の営みから、最初の人間アダムとイブが生まれる。
アダムとイブは古事記で言えばイザナギとイザナミに相当すると思うが、物語的には古事記の方がドラマチックなような気がする。
アダムとイブにカインとアベルという二人の息子が生まれるが、カインによって人間にとって最初の殺人が弟に対して行われるが、カインの子孫が拡がっていくので人間は罪を背負って生きていく存在だと言うことらしい。
理屈から言えば僕たちはカインの子孫ということになるから、それは荀子の人間性悪説だ。
少なくともカインの弟殺しはもっとドラマチックに描けたはずだ。

前半のメインは「ノアのはこ舟」の物語である。
はこ舟のセットは存在感があり、選ばれた動物たちがよく調教されているというのが一番の印象。
世界の人々が国ごとで違う言語を有しているのはバベルの塔に由来するという解釈を初見時に初めて知った。
後半はアブラハムの物語となっている。
ソドムとゴモラという腐敗した街の滅亡も、子供が出来なかったアブラハムの妻サラに高齢にもかかわらず子供が生まれるのも、すべてアブラハムが関係している。
登場人物の中ではジョージ・C・スコットのアブラハムが一番印象深い。

音楽を日本の黛敏郎が担当している。
当初、音楽担当は「火の鳥」で知られるロシアの作曲家イーゴリ・ストラヴィンスキーに依頼しようとしていたらしいが交渉が決裂し、黛の「涅槃交響曲」をレコードで聞いたJ・ヒューストンが彼に白羽の矢を立てたとのこと。
キリスト教につながる映画の音楽を、仏教につながる交響曲を作曲した黛敏郎に依頼したと言うのが面白い。
芸術に宗教は関係ないと言うことだろう。

神は「光あれ」と言うと光があり、神はその光を闇と分けたと冒頭の天地創造のところで述べられている。
人間世界には戦争や犯罪と言った闇の世界ともいえるものが存在しているが、闇は結局光に勝てなかったのだとの思想が物語の中に流れているのではないか。
それこそ宗教を超えた人類共通の望みではないかと思う。


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