おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

カラマーゾフの兄弟

2023-09-26 06:44:02 | 映画
「カラマーゾフの兄弟」 1968年 ソ連


監督 イワン・プイリエフ
出演 ミハイル・ウリヤーノフ マルク・プルードキン
   リオネラ・プイリエワ  キリール・ラウロフ
   ワレンチン・ニクーリン スヴェトラーナ・コルコーシコ

ストーリー
五十を過ぎてもなお、肉欲にとりつかれているフョードル・カラマーゾフ。
親譲りの性格により、予備大尉の身を放縦な毎日に埋没させている長男ドミトリー、神を否定する大学出の秀才の次男イワン、清純な魂と深い信仰を持つ三男アリョーシャ。
カラマーゾフ家には、激しい葛藤があった。
特に、ドミトリーが婚約者カテリーナがありながら、ある老商人の世話になっているグルーシェンカに惹かれ、そのグルーシェンカが借金に苦しんでいるのを幸いに、父フョードルが自分のものにしようとしているので二人の対立は大変だった。
一方カラマーゾフ家の召使いのスメルジャコフは、昔フョードルが乞食女に産ませた子供で、彼は父を憎み、他の兄弟に嫉妬していた。
彼は前からイワンに近づいていたが、しきりにイワンにモスクワ行きを勧めて、行かせた。
ドミトリーは、グルーシェンカのために金の工面に奔放したが、都合はつかなかった。
ついに彼は、スメルジャコフの手引きにより父親を殺し、そして逮捕された。
実は犯人はスメルジャコフだったのだが、彼は自殺してしまい決定的な証言もないまま裁判は進行した。
アリョーシャの証言もグルーシェンカの愛情も役にはたたなかった。
彼はシベリア送りと決定した。
雪の広野を行く囚人の一行。
その後を、行く一台のソリ。
ドミトリーとの愛に生きる決心をしたグルーシェンカだった。


寸評
僕はロシアの文豪と言えばトルストイ、ツルゲーネフとこの「カラマーゾフの兄弟」を著したドストエフスキーの3名しか思い浮かばず、しかも彼らのどの作品も読んでいない。
全て映画をつうじての作品鑑賞である。
映画がどこまで原作を忠実に表現しているかは知らないが、映画化されるにあたって旧ソ連の映画はどうしてこんなにも面白くないのだろう。
小説はきっと面白いものなのだろうと想像できるのだが、僕は映画化されると映画としての表現力に見劣りを感じてしまうのである。
本作は三部構成で、第一部では登場人物の性格描写と、宗教論が論じられる中で「神は存在しているのか」との命題が示される。
フョードルはカラマーゾフ家の当主で三兄弟の父親だが強欲で好色な地主である。
ミーチャと呼ばれるドミトリーはカラマーゾフ家の長男で直情的な放蕩息子といった感じ。
イワンは次男でインテリ風な無神論者である。
三男のアリョーシャは真面目な修道僧なので信仰心が強く、登場人物たちの接着剤のような存在である。
グルーシェニカはフョードルとドミトリーの親子を翻弄する女だ。
カテリーナはミーチャの婚約者だがプライドが高い女性である。
スメルジャコフはカラマーゾフ家の使用人であるが、謎めいた雰囲気を有している。
それぞれに問題がありそうな人物が紹介されるのが第一部といった感じである。

度々宗教に関して語られるが、長時間語られると娯楽性を求める僕は退屈になってくる。
親子のいがみ合い、女同士の競い合い、男と女による愛の確執など人間関係に潜む愛憎劇が描かれるが、そのどれもが会話によって示され、感じ取るような所がないので僕は面白くないとの評価を下してしまうのだろう。
第二部の終わりで父親のフョードルが殺害されると言う衝撃的な事件が起きるのだが、それは殺害されたことが語られるだけで殺害されるシーンも、死体の状態も描かれることはないので盛り上がりを欠いている。
そしてグルーシェンカがフョードル、ミーチャ、イワン、将校の間を泳ぎ回り、アリョーシャを誘惑するような行動もとる悪女的な女性として描かれるのだが、彼女の本心は一体誰にあったのか、それとも生きていくために男を利用していたのか、面白い存在の女性なのだが悪女的な描写が不足しているので、アリョーシャが言う純真性を示す態度に僕は感動しなかった。

誰がフョードルを殺したかのミステリー性も出てきて、作品は大いに盛り上がるはずだったのだが、演出が稚拙に感じられてミステリーとしての面白さは十分とは言い難い。
裁判劇も何人かの証言者が登場してミーチャに関する証言をするのだが、裁判劇としての醍醐味を欠いている。
実際に殺人を行った者、殺そうとした者、殺して欲しいと願っていた者たちのぶつかり合いも空回りだったように思うのだが、それはストーリーだけを追う会話が多すぎて、映像を通して観客に訴えかける要素が少なかったことによるのではないのかと思う。
スメルジャコフが三兄弟と同じようにフョードルの子供であった衝撃もそのままだったしなあ・・・。
僕には、ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」の映画化ということで見続けることができた作品であった。


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