おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

居眠り磐音

2024-04-13 08:34:31 | 映画
「居眠り磐音」 2019年 日本


監督 本木克英
出演 松坂桃李 木村文乃 芳根京子 柄本佑 杉野遥亮
   佐々木蔵之介 奥田瑛二 谷原章介 中村梅雀
   柄本明 波岡一喜 高橋努 荒井敦史 ベンガル
   桜木健一 宮下かな子 永瀬匡 川村ゆきえ 山本浩司
   石丸謙二郎 財前直見 西村まさ彦 陣内孝則

ストーリー
明和九年(1772)四月、江戸、佐々木道場で同郷の河出慎之輔(杉野遥亮)と小林琴平(柄本佑)が打ち合って
勝負がついたあと、琴平は次に坂崎磐音(松坂桃李)を指名する。
この三人は同じ豊後関前藩の藩士で、もうすぐ江戸での修行を終え国に戻ることになっている幼なじみだ。
磐音の“居眠り剣法”にのらりくらりとかわされた琴平は「いつか本物の反撃が見てみたい」と不服そうに言うのだった。
その年の夏、ついに三人は関前湾を臨む峠まで戻ってきた。
琴平の妹、舞(宮下かな子)を妻にもつ慎之輔は早く帰りたくて仕方がない様子。
そして磐音もまた、明日には琴平の下の妹、奈緒(芳根京子)と祝言をあげることになっていた。
屋敷に戻った磐音は、両親に帰郷の報告をし、父の正睦(石丸謙二郎)は三人で藩のために尽力するよう話す。そして妹、伊代(南沙良)との再会を磐音は喜ぶのだった。
小林家では奈緒が病気の父と母に嫁ぐ前のあいさつをしているところへ琴平が帰ってきた。
一方、家路を急ぐ慎之輔は、道で叔父の蔵持十三(水澤紳吾)に呼び止められた。
強引に酒場に連れていかれた慎之輔はそこで、妻の舞が、山尻頼禎という男と浮気をしていて噂になっていると聞かされた。
その証拠にと、慎之輔が祝言の際に舞に送った簪(かんざし)を十三は取り出し、二人が密会している待合いで拾ったと告げ、そして今は山尻からもらった、べっ甲の簪をしていると話した。
我を忘れた慎之輔は屋敷に戻り、べっ甲の簪をさした舞の姿を見るや、有無も言わさず斬り殺してしまった。
その報せはすぐ琴平に伝えられ、明け方、舞の亡骸を引き取りに琴平は慎之輔の屋敷を訪れた。
説明をもとめる琴平に、ひどい形相の慎之輔は妻の不貞を話す。
そしてそこに現れた蔵持十三を、琴平は斬ってしまったところで、舞の噂はデマだったことが判明する。
慎之輔は混乱し、舞の亡骸を取り戻そうと刀を抜いて琴平たちに迫り、琴平は反射的に慎之輔に刀を振り下ろしてしまった。
坂崎家では伊代が、舞に関する最近の出来事を話し始めた。
実は、山尻頼禎が偶然見かけた奈緒を見初め、小林家に次々と贈り物を届けて面会を迫ったというのだ。
姉の舞が、奈緒は結納を済ませた身であることを説明し、山尻の行動をとがめたところ、お詫びと称して酒場に呼び出され、そのあとから妙な噂が流れるようになったという。
するとそこへ琴平が山尻の屋敷に乱入し、頼禎を斬って外に投げ捨てたという知らせが届く。
国家老、宍戸文六(奥田瑛二)は家臣に小林琴平を討ち取るよう命じた。
磐音は伊代に、奈緒に渡すつもりだった匂い袋を託し、琴平のもとへ向かう。
腕の立つ琴平を討ち取ることができない目付けの東源之丞(和田聰宏)に磐音は、自分に行かせてほしいと頼み、ひとりで山尻の屋敷に入っていった。
琴平は、磐音との“尋常の勝負”を望み、琴平は磐音に斬られて死んだ。
半年後。お家断絶となった小林家は生活に困窮し、奈緒は城に呼び出されて宍戸文六に妾になるよう迫られていたが、磐音だけを思い続ける奈緒はきっぱりと断り、追い出されるように城を出た。
一方、浪人となった磐音は江戸、深川のうなぎ屋で職人として働いていた。
長屋で暮らす磐音はある日、大家の金兵衛(中村梅雀)から用心棒の仕事を紹介され、今津屋に用心棒として雇われた。
磐音は、主人の吉右衛門(谷原章介)から、老中田沼意次(西村まさ彦)の政策に反対する者から脅されていると聞かされた。
その相手はおそらく阿波屋有楽斎(柄本明)で、金の相場が崩れ、今までのように儲けられなくなることを嫌がる阿波屋は、田沼の意向に従っている今津屋が邪魔だったのだ。


寸評
小林琴平、河出慎之輔、坂崎磐音は幼なじみで親友だ。
慎之輔の妻である舞は琴平の妹で、磐音も琴平の妹と祝言を上げようとしている。
義兄弟となる三人は切っても切れない間柄なのだ。
ところが、噂話がきっかけで悲劇が起きる。
慎之輔が妻の舞を斬り、その慎之輔を琴平斬り、さらにその琴平を磐音が斬るというものだ。
こんな悲劇があろうかと思われるのだが、発端となる噂の背景や慎之輔が妻の舞をいきなり斬り殺す唐突さが作品から重厚性を削いでいる。
何があろうとも慎之輔は妻を問い詰めるであろうに、それをせずにいきなり斬り殺すのはリアリティに欠けている。
そうせざるを得ない意味づけは必要だったのではないか。
同じことが、琴平が慎之輔の叔父である蔵持十三を殺害することにも言える。
磐音が班を抜けて江戸に向かう経緯もない。
また奈緒が国家老の宍戸文六から言い寄られるのだが、その場面でも奈緒がきっぱりと断るとそれで終わりとなっている。
そこに至る説明もないので、このエピソードは唐突過ぎる。
ことほど左様に、描くべきことを描いていないので作品自体が薄っぺらい印象を受けてしまい、劇的とも言える人間関係の面白さが生かされていないように感じる。

そこにいくと木村文乃のおこんという女性は面白い存在となっている。
おこんは磐音に好意を持っているようなのだが、奈緒と言う女性の存在を知っているために身を引いているような所がある。
父親の金兵衛は似合の夫婦だと思っているのだが、仕事口を告げに来たおこんは磐音に「1200両の身請け金の足しになるといいわね」と囁く。
奈緒は花魁となっていきていこうとするが、磐音は菜緒を身請けするつもりのようで、それを支えようとするおこんと連れ立つラストシーンは風情があった。
為替差益を描いているのは面白い着想で、柄本明の有楽斎の最後も意表をついていて面白い展開であった。
随所に見どころはあるのだが、それが十分に生かされていたとは言い難いのは残念だ。