おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

四畳半襖の裏張り

2024-03-18 07:37:50 | 映画
「四畳半襖の裏張り」 1973年 日本


監督 神代辰巳
出演 宮下順子 江角英明 山谷初男 丘奈保美
   絵沢萠子 芹明香 東まみ 粟津號 吉野あい

ストーリー
日本全国で米騒動が頻発する大正中期、東京・山の手の花街の夏。
料亭“梅ヶ枝”では、おかみが芸者・袖子を待ちかねていた。
客の信介は、三十歳半ばのちょっとした役者風のいい男で、世の中は米騒動で騒々しい最中なのに遊びに興じようという根っからの遊び人である。
座敷に通された信介は、袖子の恥かしそうな仕草がもどかしい。
信介が上になって布団をはがそうとすると「初めてですもの、恥かしい」と電気スタンドの明りを暗くする袖子……。
外では号外の音が鳴り、騒がしい。
置家、“花の家”では、芸者の花枝と花丸がすっかり仕度を整え、あてのない客を待っていた。
一方、信介の動きがだんだん激しくなるが、袖子は半分お義理である。
そのうち信介が横になると袖子も仕方なしに横になる。
やがて、袖子の鼻息も次第に荒くなり、夜具は乱れ、枕はきしみ、伊達巻も徐々に乱れてくる。
そして、信介の動きにつれて、袖子はもう気が遠くなりかけていた。
袖子は初めの様子とはうって変り、次第に激しさも加わり、枕がはずれても直そうとせず身悶えるのだった。
そんな袖子の乱れる反応を、信介は反り身になって見つめていた。
やがて、信介は袖子の様子を見ながら、じっと辛棒していたが、袖子が「あれ! どうぞ」と髪が乱れるのにもかまわず泣きじゃくるのにとうとう我慢ができなくなり、袖子におおいかぶさっていった……。
そして、二人は一息入れた後、二度、三度と頂点を極めるのだった。


寸評
宮下順子はロマンポルノ女優の代表格の一人であり、彼女の出演作の中ではこの「四畳半襖の裏張り」と1979年の「赫い髪の女」は傑作である。
随分と長い間ロマンポルノを支え続け、ロマンポルノが終了してからは一般映画にも随分出演している女優だが、僕は日活ロマンポルノにおける彼女のイメージが強く残っている。
「四畳半襖の裏張り」は大正時代の置屋で働く芸者たちを描いているが、中でも芸者・袖子の宮下順子と遊び人・信介の江角英明が濃厚な絡みを見せる。
ロシア十一月革命(大正6年)、富山の米騒動(大正7年)、大日本帝国からの独立運動である万歳事件(大正8年3月1日)などが号外などを通じて登場させ、大正時代の雰囲気を生み出している
画面に「初回の客に気をやるな」の文字が出て、それにかぶさるように女将が「初回の客に気をやるなんて恥もいいとこだよ」と言う。
画面に「男は顔じゃない。男の顔はお金」の文字が出ると、それにかぶさるように女将が「男の顔のいいのって誠がない。そんなものにだまされるのは下の下だよ。お金だよ」という。
しかしちょっといい男の信介と初めて床を共にした袖子はセックスに溺れていく。
馴染み客で通うよりと結婚してしまう仲である。
結婚してもそっちの遊び心は衰えを見せず、林の中でもやるし、真昼間でもお構いなしで、信介と袖子はセックスに関しては息が合う二人なのだ。

置屋には花枝というベテラン芸者が17歳の芸者を指導する場面も面白い。
お座敷芸としてストリップをやりコインを吸い込んで吐き出す場面も滑稽だ。
僕は芸者遊びをしたことがないのだが、今でもこのようなお座敷芸をやっているのだろうか。
大正時代の置屋ではそのような遊びがあったのかもしれない。
粟津號の兵隊が幼なじみの芸者といつも短時間でことを済ませて兵舎に戻っていく。
世の中は物騒な様相を呈しているが、遊び人たちはそんなことを気にせず色ごとに熱心である。
それが人間の本能であるかのごとしである。
これだけの作品を撮られるとピンク映画は歯が立たない。
神代辰巳と宮下順子のコンビではこれが一番であろう。