おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

レッド・オクトーバーを追え!

2024-03-29 07:05:43 | 映画
「レッド・オクトーバーを追え!」 1990年 アメリカ


監督 ジョン・マクティアナン
出演 ショーン・コネリー アレック・ボールドウィン
   スコット・グレン  サム・ニール
   ジェームズ・アール・ジョーンズ
   ピーター・ファース ティム・カリー

ストーリー
ソビエトのムルマンスク沿岸、副長ボロディンから出発の時を告げられたソ連最新鋭原子力潜水艦レッド・オクトーバーの艦長ラミウスは、秘かな決意を胸に、艦の前進を命令する。
その頃、CIAのアナリスト、ジャック・ライアンは、英国情報局から入手したレッド・オクトーバーの写真を片手に、その謎の解明に奔走していた。
レッド・オクトーバーの不審な行動が次々と米国に報告される中、ライアンは、ラミウスが亡命するつもりなのかもしれない、と直感する。
国家安全対策顧問ジェフリー・ペルトから、3日以内にラミウスの真意を証明するよう命じられたライアンは、直ちに北大西洋沖の米空母エンタープライズに向かった。
一方モスクワから、レッド・オクトーバー撃沈の命をうけたソビエト海軍の潜水艦コノヴァロフのツポレフ艦長は、血眼になってレッド・オクトーバーを追っていた。
そんな折、レッド・オクトーバーの動きを察知したダラスの艦長バート・マンキューソは、ソナー員のロナルド・ジョーンズからその行動を聞き、レッド・オクトーバーを待ち伏せしようとする。
しかし同じ頃レッド・オクトーバーでは、乗組員の中に破壊工作員がいることが判明し、艦内は緊迫していた。
嵐という最悪の天候の中、命からがらダラスに着いたライアンは、駐米ソビエト大使リセンコの連絡をうけ、レッド・オクトーバーを攻撃するよう命令があったことを知る。
ライアンはマンキューソを説得し、ラミウスとの接触を試み、そして彼の真意が亡命にあることを確認する。
レッド・オクトーバーが沈没したと見せかけるラミウスの機転で、ライアンたちは無事レッド・オクトーバーに乗り移るが、その時破壊工作員の襲撃をうけ、ボロディンが命を落とした。


寸評
潜水艦を使った軍事スリラーとして手堅い演出が見て取れるが、人物や背景が説明不足になっていたのは見終ると惜しかったなあという印象を持つ。
レッド・オクトーバーの艦長ラミウスがなぜ亡命を希望しているのか?
ラミウスの部下たちも彼に従って亡命を希望しているようなのだが、ラミウスと部下たちの結びつきはなぜ出来上がっていたのか?
ソ連側の彼等の背景が描かれていないので、原子力潜水艦レッド・オクトーバー内部の緊迫感、ソ連がレッド・オクトーバーを沈めようとする緊張感が少々かけていたような気がする。

映画冒頭ではラミウスを初め、ボロディンらのソ連人役のキャストがロシア語を話していて、政治士官プーチンが艦長室でラミウスの私物の聖書の黙示録を読むシーンから英語にスイッチしているのだが、最後までロシア語で通した方がリアル感があったと思う。
どのみち字幕を読む我々とは違って、アメリカ映画なのに字幕を読まされる米国の観客に配慮したのだろう。
ラミウスは出航前にソ連首脳部へ自分の意図をしたためた手紙を出していたのだが、その目的をもう少し描き込んでいたらもっと盛り上がったかもしれない。

レッド・オクトーバーの推進システムが「キャタピラー・ドライブ」と呼ばれる無音の推進システムであることで、ソナーを使った海底での敵潜水艦の動向を見失うくだりなどは、潜水艦の検知能力とシステムを教えてくれるトリビアとなっていて興味を沸かせる。
レッド・オクトーバー撃沈を目指すソ連の潜水艦が航行ルートを先読みして待ち伏せし、レッド・オクトーバーに攻撃を仕掛けてくるが、この時レッド・オクトーバーに乗り込んでいた米兵と協力しながら対決する様子も痛快で、娯楽作としての盛り上がりを見せている。
潜水艦という密閉された狭い空間でのドラマが展開されるが、ドラマとしてはうまくまとめられている。

子飼いの士官達は亡命に同意しているようなのだが、それ以外の士官たちはラミウスの目的を知らない。
彼等を初めとする乗組員をレッド・オクトーバーから退艦させる必要が有るのだが、そのプロセスは観客を納得させるものである。
とくにラミウスが艦長として艦と共に運命を共にする決意を伝えた時の士官の態度が笑わせる。
情報分析官のジャック・ライアンも非常に重要な登場人物だが、作品中ではラミウス大佐のショーン・コネリーがやたら目立っていてカッコイイ。
ショーン・コネリー単独作品と言ってもいいぐらいの存在感だ。

米ソ冷戦末期の時代に製作された作品だけに、露骨なまでの反共プロパガンダ振りで、共産主義イコール悪という単純図式が強烈だ。
ヴァシリー・ボロディン中佐がモンタナを夢見て死んでいくなどはその最たるものだった。
潜水艦の追いかけっこが楽しいし、意表を突いた仕掛けもあって、潜水艦物としては水準を保った作品だ。