おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

マイレージ、マイライフ

2024-03-08 08:03:26 | 映画
「ま」行になります。

「マイレージ、マイライフ」 2009年 アメリカ


監督 ジェイソン・ライトマン
出演 ジョージ・クルーニー ヴェラ・ファーミガ
   アナ・ケンドリック  ジェイソン・ベイトマン
   ダニー・マクブライド メラニー・リンスキー
   
ストーリー
年間322日も出張するライアンのモットーは“バックパックに入らない人生の荷物は背負わない”だった。
カードに貯まったマイレージは1000万マイル目前で、それを達成することが人生の目標となっていた。
リストラ宣告人として働くライアンは、自分の社員にリストラを宣告できない会社に代わって、リストラ対象者にリストラを宣告する仕事をしている。
リストラを宣告する相手は、いつも初対面の人で、今後、2度と会うことがないため、ライアンは、リストラを宣告された人の痛みをそれほど感じることもなく、仕事と割り切り、淡々と仕事をこなしていた。
ある日、若くて優秀な女性社員のナタリーが入社してきてライアンが指導することになったが、彼女はリストラ宣告をオンラインでするという案を提案するほどの非常に合理的な女性だった。
ライアンに同行して仕事のやり方を習得したナタリーは、初めて、自分の口からリストラ宣告をする。
リストラを宣告された人の、リアルな悲壮感を目のあたりにし、さすがのナタリーも胸を痛めた。
しかし、優秀なナタリーはショックを受けながらも、着々と仕事をこなしていく。
出張先で、ライアンは、偶然知り合って意気投合したアレックスという女性と逢瀬を重ねていた。
ライアンとアレックスは割り切った気軽な関係を続けている。
2人の関係を知ったナタリーは、真剣にアレックスと向き合おうとしないライアンの生き方を非難する。
ナタリーと接するうちに、ライアンは、人と真剣に向き合ってこなかった自分の生き方に疑問を抱き始めた。
妹の結婚式に出席したライアンは、結婚相手のボブが直前になってためらいを見せたので、不本意ながらも結婚して伴侶を得ることの素晴らしさを語り説得する。
やがて、アレックスと真剣な交際をしたいと思ったライアンはアレックスの自宅を訪ねた。


寸評
僕が務めた会社は中小企業だったので、情報、総務、経理、求人と兼任でいろんな仕事を任されたのだが、時期は違うが二度ほど社員のクビ切りを命じられたことがある。
同じ職場で共に働いてきた同僚へ退職を促すのは嫌な仕事で、在職中で一番辛くてやりたくない仕事だった。
ここで描かれているライアンたちの会社は、自分の手でリストラを宣告できない会社に代わってリストラを宣告するのを業務としている。
全米を飛び回っているライアンは一年のほとんどを出張で過ごしており、そのためマイホームも持たず妻もいないし、もちろん子供もいない。
むしろその生活を良しとしており、出張先でのアバンチュールを楽しんでいる。
そんなライアンが若くて合理的な女性社員のナタリーを指導する形でリストラ宣告をしていく様子が描かれていく。
宣告される側の人の戸惑いは当然であるが、ナタリーは面識のない対象者に対してビジネスライクに話を進めていくが、それでも実際に行ってみると心が痛んでくることもある。
リストラされる人の家庭状況が分からないし、言い分もわずかに描かれているだけなので、リストラによって起きる辛い状況が伝わってはこない。
ライアンとナタリーの世代間相違の主張は面白いけれど、リストラ宣告の辛さはにじみ出ていないと思う。

後半はリストラよりもライアンが出会ったアレックスという女性とのラブロマンスに重点が置かれていく。
アレックスも全米を駆け巡っているキャリアウーマンである。
二人は出張先が同じ方向になると示し合わせてデートを重ねる。
お互いに深い仲にならない事を確認し合っているが、人生の重荷を背負いたくないと思っていたはずのライアンが徐々にアレックスに魅かれていく様子が、ラブロマンスとして中年には受ける内容のように感じる。
時にはライアンの結婚式に二人して出席するぐらいだから、二人の仲はかなり親密なものになっている事をうかがわせる。
気軽に電話をして呼び出せる異性の存在は想像しただけで羨ましく思える関係である。
アレックスは妹の婚約者のボブに「一番幸せだった時は一人だったか?」と問いかける。
ボブはその言葉を聞いて再び結婚を決意するのだが、ライアンは妹とボブの姿を見て自分の将来を想像したのかもしれない。
自由気ままな独身生活は楽しいものかもしれないが、幸せを分かち合えない伴侶がいないのは淋しいものだ。
そうであったのが、いつの頃からかお互いがうっとうしい存在になったりもするのが夫婦関係なのかもしれない。
不満を持ちながらも一生を共にして、最後には感謝して旅立っていくのも又夫婦なのだと思う。

ライアンが意を決してアレックスを迎えに行くと、意外や意外という展開が待ち受けている。
主客転倒する面白い展開で、僕はこの場面に唸ったし、この場面が用意されていなかったら存在価値のない映画だったように思う。
ジョージ・クルーニーがケリー・グラントだったら二人は結ばれていたような気がする。
その意味でジョージ・クルーニーはハマリ役だった。
男にとっては仕事を除けば羨ましい世界である。