おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

会社物語 MEMORIES OF YOU

2019-03-01 08:07:05 | 映画
今年も3月に突入です。
今月はタイトルが「か」で始まる映画でスタートします。


「会社物語 MEMORIES OF YOU」 1988年 日本


監督 市川準
出演 ハナ肇 西山由美 植木等 谷啓
   犬塚弘 桜井センリ 安田伸
   石橋エータロー 伊東四朗 木野花
   すまけい 村松友視 ジャイアント馬場
   イッセー尾形 余貴美子

ストーリー
花岡始(ハナ肇)は57歳。東京の商事会社で34年間真面目にコツコツと働き続けた万年課長だが、間もなく定年を迎えようとしていた。
いまや仕事もさほど忙しくなく、若い部下達もあまり相手にしてくれない。
家に帰れば家族間のトラブルがまたストレスの種。
そんな花岡にとって唯一の心の安らぎは、愛らしく気立てのよい新入社員の由美(西山由美)だけだった。
彼女は若いエリートの恋人がいたが、わざわざ花岡のために二人だけの送別会を開いてくれた。
退職が近づいたある日、同僚がジャズ・バンド結成の話を持ってきた。
若い頃に情熱を傾けたジャズで有志を集めて、コンサートをやろうというのだ。
犬山(犬塚弘)、安井(安田伸)、桜田(桜井センリ)、谷山(谷啓)、上木原(植木等)とメンバーも揃い、花岡は練習に精を出して再び生活に張り合いを取り戻した。
そして12月25日にコンサートが始まったが、その時花岡の家では息子が暴れ回っていた。
花岡は途中で家に帰り、息子を止めようとしてケガをしてしまう。
しかし花岡は再び会社に戻り、コンサートを成功させたのだった。
また、退職の日に花岡は、娘のように親しみを感じていた由美を二股にかけて振った生意気な若いエリートをぶっ飛ばし、会社を後にするのだった。


寸評
サラリーマンをやっていると定年という日はいつかは迎えるものである。
僕も何人もの先輩を見送って来たし、中には花岡のように送別会を辞退する上司もいた。
多くの人はその頃にはもう戦力にならないという立場で、日数だけを消化するために出勤されて士気が低下するのも困るから、残りの有給休暇を含め最後の1ヶ月以上を休んでもらっていた。
幸いにして僕は役員としてM&Aの仕事に係わり(わが社は買収される方)後始末もあって定年という縛りから外れていたので、退職日が決まっている定年を迎える時の気持ちは理解できないでいる。
僕は会社を辞めるその日は淋しさよりも重圧から解放された安堵感でウキウキだった。

花岡は社員から送別会に出るのをためらわれている浮いた存在だし、花岡自身にも生気がない。
くたびれた花岡の姿をカメラは延々と追い続ける。
総務課長という自分に向いていない仕事を長年務めあげたせいかも知れない。
花岡を演じるハナ肇のしおれた表情がサラリーマンの悲哀を感じさせて胸に迫る。
真面目そうな花岡は最後まで仕事をこなしているが、他の連中はクレイジー・キャッツの「はいそれまでよ」ではないが「サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ」という勤務ぶりである。
勤務中と思われる時間帯で役員たちは麻雀を楽しんでいる(我が社でも、銀行の支店長や他社の役員と勤務時間中に麻雀をやっていた役員がいた)。
社員はゴルフ談義などでくつろいでいる。
必死で働いているのは女子社員と若手社員だけという風景が度々映し出される。
誇張はあるがそんな風景はどこかで見たなあという感じだ。
部長は退職後の勤め先を確保しているが、花岡にはそんな口もない。
疲れ切った花岡の心情も分ると言うものだ。
気立ての良い由美や、花岡を素敵だと思ってくれていた木村さん(木野花)のような人がいただけでも良かったと言わざるを得ない。

娘は離婚して子連れで戻ってきているし、息子は警察に補導されるようなことを仕出かして家庭に問題を抱えているが、それでも花岡は残りの日数を出勤しなければならない。
そんな花岡にジャズバンド結成の話が持ち込まれるのだが、そこからの雰囲気はガラッとかわってなかなかいい。
集まった面々はクレイジー・キャッツの面々である。
コント的な番組を持って植木等のコミカルな歌で人気を博していたクレイジーキャッツだが、彼等はれっきとしたジャズバンドで、その演奏シーンは楽しく、ジャズっていいよなと思わせてくれる。
彼らが居酒屋で集いジャズ談義をするシーンが楽しい。
ジャズについて楽しそうに語る姿は、僕が映画仲間と映画について語り合うのに共通するもので、至福の時間に浸っている彼等と自分を重ね合わせてつい和んでしまう。
苦労を共にした会社仲間もいいが、会社を離れた趣味の世界の仲間もいいものである。
由美が吹っ切れて幸せをつかむことを感じさせるが、はっきりと描いても良かったように思う。
サラリーマン物としては切実としたものを感じるが、なかなか上手くまとめ上げていると思う。