おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

風と共に去りぬ

2019-03-09 10:30:01 | 映画
「風と共に去りぬ」 1939年 アメリカ


監督 ヴィクター・フレミング
出演 ヴィヴィアン・リー  クラーク・ゲイブル
   レスリー・ハワード  オリヴィア・デ・ハヴィランド
   トーマス・ミッチェル バーバラ・オニール
   ハティ・マクダニエル ジェーン・ダーウェル
   ウォード・ボンド

ストーリー
前篇=1861年、南北戦争が始まろうとする直前。
ジョージア州タラの大地主ジェラルド・オハラの長女スカーレットは、同じ大地主ウィルクス家で明日開かれる野外宴会に、そこの嫡子で彼女の幼馴染みであるアシュリーと彼の従妹メラニーの婚約が発表されると聞いて心おだやかでなかった。
激しい気性と美しさをあわせ持つスカーレットの心はアシュリーとの結婚をかたく決意していたのだ。
宴会の当日スカーレットは想いのたけをアシュリーにぶちまけたが、彼の心は気立ての優しいメラニーのものだった。
スカーレットはそこで、評判の良くないレット・バトラーに出会い、彼の態度に激しい憎しみを感じながらも何か惹きつけられた。
突然、戦争の開始が伝えられ、スカーレットは失恋の自棄からメラニーの兄チャールズの求婚を受け入れ結婚した。
メラニーと結婚したアシュリーもチャールズも戦争に参加したがチャールズは戦争で病を得て死に、スカーレットは若い身を喪服に包む生活の味気なさからアトランタのメラニーの元へ行き、陸軍病院のバザーでレットと再会した。
レットは強引に彼女に近付いてきた。
スカーレットと生まれたばかりの子供を抱えたメラニーは、レットの御する馬車で故郷へと向かった。
レットは途中ひとり戦線へ向かい、のこされた2人はやっとの思いでタラの地に着くが、すでに廃墟になって、北軍にすっかり蹂躪されたあとだった。
後篇=戦争は南軍の敗北に終わった。
捕虜になっていたアシュリーがかえって来てメラニーを喜ばせたが、スカーレットは再び彼に愛を告白してはねつけられた。
土地を守る決意を固めたスカーレットはレットに金策を頼みに行ったが、断られた。
彼女は妹スーレンの許婚フランクが事業に成功しているのを見て、欺いて彼と結婚し、事業を自分の手中に収めてアシュリーを仲間に引き入れ、唯金儲けだけに生きるようになった。
フランクが死んで、スカーレットはレットと結婚し、娘ボニーを生んだが、まだアシュリーへの想いが断ち切れず、レットはもっぱらボニーへ愛情を注いだ。
ところがボニーが落馬して死に、メラニーも病死してしまった。
このためレットとスカーレットの結婚生活はまったく破れ、レットは去っていった。
スカーレットはこのとき初めてレットを愛していたと気付くが、一番愛しているのはやはりタラの土地であった。
彼女はタラに帰ってすべてを考え直そうと決心した。


寸評
ヴィヴィアン・リーのスカーレット・オハラは実に嫌な女である。
これだけ嫌味な女であれば、普通は嫌われ者の悪役で憎しみが湧いてきても不思議ではない。
ところがどうしたわけか、ひどい女だと思いながらも嫌いきれない。
それはヴィヴィアン・リーが美人であることにもよるが、使用人を大事にする一面を見せたりするし、なによりも彼女の生きることへの力強さと故郷タラへの愛を感じさせるからだろう。
前半の終わりに、ひもじい彼女は畑の大根をかじり決意を表明する。
「神よ、私は誓う。決して負けるものか。必ず生き抜いてみせる。二度と飢えはしない。家族を守りぬく。盗みを働き、人を殺そうとも。神にかけて誓う、二度と飢えはしない」
その時、カメラはグーンとズームアウトして夕陽に浮かぶスカーレットをシルエットで捉える。
決意通りスカーレットは北軍の脱走兵が略奪に訪れた時に、その男を射殺し持っていた金を巻き上げている。
男勝りの強さが彼女を魅力的に見せている。対するメラニーがあれほど立派な女性に描かれているのだから、スカーレットに対してはもっと嫌悪感があっても良さそうなのだが、時折見せる愛くるしさに許してしまう。

この映画は美しいシルエットをあちこちに散りばめた作品でもあると思う。
特にタラの赤く染まる夕陽の中で邸宅を眺めながらのシルエットは3度登場するがどれも感動的だ。
1度目は父と見るタラであり、2度目は上記の決意を表した場面、3度目はラストで明日に希望を託す場面だ。
最も印象的なシーンの一つに、スカレーットがレット・バトラーとジョージアからタラへ逃げ延びる場面がある。
スカーレットは馬車に乗っている。燃え落ちる大きな建物の前をレットが馬車馬を引いていく。崩れ落ちる巨大な建物の前をシルエットとなって消えていく。
この映画のスケールを感じさせる脳裏に残るシーンだ。
兎に角、この作品はその豪華過ぎるとも言えるセットや、エキストラの動員数など贅を尽くした感が有り、ハリウッド映画が到達したひとつの集大成映画とも言える記念碑的な作品だと思う。
人物描写に切り込んでいるわけではなく、物語性を追求した展開を薄っぺらに感じたりもするが、それを補ってあまりある豪華さを力ずくで感じさせてしまうのだ。

スカーレットが思いを寄せるアーシュレイは「僕より愛しているもの・・・タラだ。タラの赤い土が君の支えだ。土地が全てだ」と言う。
ラスト、それを受けたような形で、レットを愛していたことに気づいたスカーレットが「故郷に帰って彼を連れ戻す方法を考えよう。明日に希望を託すのは・・・」と呟く。そして前述のシルエットとなる。
ちょっと軽いけど、なかなかいい。
ゲーブルもいいが、ゲーブルよりもヴィヴィアン・リーが目立った作品だが、二人の名前はこの作品で永遠不滅のものとなった。私の良き時代の恋が風と共に去ったように、古き良き南部が風と共に去っていったと思わせる。
最近ではとんとお目にかからなくなった序曲がある。シネコンのなかった時代は、この序曲が始まると「さあ映画が始まるぞ」という気分になり、ロビーに残っていた観客も席に着くという光景が見受けられたものだ。
228分の長丁場なので途中休憩が有り、その間に間奏曲が流れる。
オーケストラの演奏が何とも言えない至福感をもたらした。