たどり着くまでが大変だった!
軟弱な現代の都会人を自認する我々ではあっても、
宿泊先に向かうくらいのことで、あんな事態に陥るとは、
正直思っていなかった。
今時のレンタカーにはナビだってあるし、
いざとなればGoogle先生が、目的地までの道を懇切丁寧に教えてくれる。
逆をいえば、そう『たかをくくっていた』がために、
いざという時の対応策を考えていないという落とし穴もあったりするが、
まさに我々のこの日が、そうだった。
宿の住所をナビに入れ、まずは快調に滑り出した、夜のドライブ。
が、段々道は細くなり、ついには山道に。
進むにつれ、徐々に少なくなる街灯と、多くなってゆくカーブ。
時々、かすかな、民家の灯りらしきものが見える他は、
ゆけどもゆけども何も見えず、
標高だけが高くなってゆく。
ナビの画面上、目的地のそばに近づいているのは確かでも、
右側にはダムの表記のみ、
左手には、車窓と闇を透かして鬱蒼と迫る、手入れのされていない深い山。
「...なんか違う気がする」
言葉少なになり始めた二人が、ついに不安を抱き始めた矢先。
山道は突然途絶え、
目の前にはヘッドライトに照らされ浮かび上がる、
一枚の立て看板が見えたのである。
『この先、道はありますが、車はすれ違うことが出来ないため進めません』
「えぇ!?」
...なるほど、
看板の脇に目をやれば、辛うじて人が通れるほどの隙間が見えるが、
すでに不安が増大する一方の我々に、当然進む勇気もなく、
今さらのように気づいた、『携帯の電波も届かない』闇の中で、
ただ戦慄するのみ。
...と。
ようやくゴンザが重い口を開き、
「引き返そう!」
と言い出した。
視界も怪しい暗闇の中、
ガードレールのない山道を、命からがらUターン。
やっとの思いで引き返し、
とりあえずは電波の届く場所で、宿に電話を入れたはいいのだが、
おばちゃんは呑気に、
「あー、変な山道の方に行っちゃったんだねぇ。
ナビの言うとおり進むとそうなっちゃうんだよ」と。
「うぇえ?」
しかし、ここで文句を言っても仕方ない。
とにかく、我々は宿にたどり着かねばならないのだ!
おばちゃんに正しい道順を聞き、
今度こそはと、気を取り直す。
けれど、走り出せばまたしても、目の前に続く、
さっきとは別の『変な山道』。
しかも!
今度の道に至っては、ついに舗装すらなくなり、
草がボーボー生えた、かすかな轍を残すのみ...。
そして、さらに恐怖を煽ったのが、
我々の乗った車の後底部に引っかかったと推測される、
折れた枝か何かを引きずる音である。
ずるずるずるずる...
(ひぃぃぃい!)
新月の夜ゆえに、月明かりすらない山の中、
今、ここで車が壊れたらどうしよう?
もはやパニック寸前のモヤシ二人組。
「...絶対に、絶対にこっちじゃない!」
再び、命からがら引き返し、電波の届く場所まで、
さっきよりもさらに苦労して辿り着いた我々が宿に電話すると、
先ほどのおばちゃんがまた電話口に出て、
「あれー?どう説明したらいいのかな~?」と、
呑気な声を出した。
「いや...」
「あの~」
話し続けるうちに、さすがにこちらの『必死のパッチ』を察したのか(笑)
おばちゃんは「ちょっと待ってよ」と、
今度は『出来るおばちゃん』に電話を代わってくれた。
(最初からそうしてくれたらよかったのに...)
と、次は『出来るおばちゃん』のわかりやすい説明通り、
宿泊先に向かうくらいのことで、あんな事態に陥るとは、
正直思っていなかった。
今時のレンタカーにはナビだってあるし、
いざとなればGoogle先生が、目的地までの道を懇切丁寧に教えてくれる。
逆をいえば、そう『たかをくくっていた』がために、
いざという時の対応策を考えていないという落とし穴もあったりするが、
まさに我々のこの日が、そうだった。
宿の住所をナビに入れ、まずは快調に滑り出した、夜のドライブ。
が、段々道は細くなり、ついには山道に。
進むにつれ、徐々に少なくなる街灯と、多くなってゆくカーブ。
時々、かすかな、民家の灯りらしきものが見える他は、
ゆけどもゆけども何も見えず、
標高だけが高くなってゆく。
ナビの画面上、目的地のそばに近づいているのは確かでも、
右側にはダムの表記のみ、
左手には、車窓と闇を透かして鬱蒼と迫る、手入れのされていない深い山。
「...なんか違う気がする」
言葉少なになり始めた二人が、ついに不安を抱き始めた矢先。
山道は突然途絶え、
目の前にはヘッドライトに照らされ浮かび上がる、
一枚の立て看板が見えたのである。
『この先、道はありますが、車はすれ違うことが出来ないため進めません』
「えぇ!?」
...なるほど、
看板の脇に目をやれば、辛うじて人が通れるほどの隙間が見えるが、
すでに不安が増大する一方の我々に、当然進む勇気もなく、
今さらのように気づいた、『携帯の電波も届かない』闇の中で、
ただ戦慄するのみ。
...と。
ようやくゴンザが重い口を開き、
「引き返そう!」
と言い出した。
視界も怪しい暗闇の中、
ガードレールのない山道を、命からがらUターン。
やっとの思いで引き返し、
とりあえずは電波の届く場所で、宿に電話を入れたはいいのだが、
おばちゃんは呑気に、
「あー、変な山道の方に行っちゃったんだねぇ。
ナビの言うとおり進むとそうなっちゃうんだよ」と。
「うぇえ?」
しかし、ここで文句を言っても仕方ない。
とにかく、我々は宿にたどり着かねばならないのだ!
おばちゃんに正しい道順を聞き、
今度こそはと、気を取り直す。
けれど、走り出せばまたしても、目の前に続く、
さっきとは別の『変な山道』。
しかも!
今度の道に至っては、ついに舗装すらなくなり、
草がボーボー生えた、かすかな轍を残すのみ...。
そして、さらに恐怖を煽ったのが、
我々の乗った車の後底部に引っかかったと推測される、
折れた枝か何かを引きずる音である。
ずるずるずるずる...
(ひぃぃぃい!)
新月の夜ゆえに、月明かりすらない山の中、
今、ここで車が壊れたらどうしよう?
もはやパニック寸前のモヤシ二人組。
「...絶対に、絶対にこっちじゃない!」
再び、命からがら引き返し、電波の届く場所まで、
さっきよりもさらに苦労して辿り着いた我々が宿に電話すると、
先ほどのおばちゃんがまた電話口に出て、
「あれー?どう説明したらいいのかな~?」と、
呑気な声を出した。
「いや...」
「あの~」
話し続けるうちに、さすがにこちらの『必死のパッチ』を察したのか(笑)
おばちゃんは「ちょっと待ってよ」と、
今度は『出来るおばちゃん』に電話を代わってくれた。
(最初からそうしてくれたらよかったのに...)
と、次は『出来るおばちゃん』のわかりやすい説明通り、
難なく目的地が見つかって、
我々は心底ホッとしながら、
脱力したように車を駐める。
「大変だったねぇ!」
どこか他人事のおばちゃんの声と、
息も絶え絶えにチェックインを済ませる二人。
部屋に案内された後は、早々に荷物をほどき、
別棟にあるという、貸切露天風呂に向かう。
昭和の頃に建てられたらしい建物は、
決して豪華ではないものの、掃除は行き届き、
簡素ながらも居心地が良い。
母屋と道路を挟んだ別棟の風呂は山小屋風で、
素朴かつ、野趣溢れる感じが、なんとも風情を誘う。
そして、なんといっても特筆すべきは、
『絶景の宿』に相応しい、
露天風呂からの眺めで、
我々が迷子になりかけ、見逃していたそれは、
『出雲の層雲峡』とも称されるほどのものとあって、
まさに険しく雄大そのもの。
湯船に浸かれば、厳しく聳え立つ岩肌と、
我々は心底ホッとしながら、
脱力したように車を駐める。
「大変だったねぇ!」
どこか他人事のおばちゃんの声と、
息も絶え絶えにチェックインを済ませる二人。
部屋に案内された後は、早々に荷物をほどき、
別棟にあるという、貸切露天風呂に向かう。
昭和の頃に建てられたらしい建物は、
決して豪華ではないものの、掃除は行き届き、
簡素ながらも居心地が良い。
母屋と道路を挟んだ別棟の風呂は山小屋風で、
素朴かつ、野趣溢れる感じが、なんとも風情を誘う。
そして、なんといっても特筆すべきは、
『絶景の宿』に相応しい、
露天風呂からの眺めで、
我々が迷子になりかけ、見逃していたそれは、
『出雲の層雲峡』とも称されるほどのものとあって、
まさに険しく雄大そのもの。
湯船に浸かれば、厳しく聳え立つ岩肌と、
足元を流れる川が、ライトアップにより美しく浮かび上がるのを、
ゆったりと眺めることが出来るのである。
これが天気の良い早朝ならば、
どれだけ心地良く、さらにすべてを満喫出来たことだろう!
夜に到着したことを、これほどいろんな意味で、
後悔したことはない(笑)
しかし結局、苦労はしても、
たどり着いてみれば、そこには素晴らしいものが待っていた。
これぞ神様のお導き!
ゆったりと眺めることが出来るのである。
これが天気の良い早朝ならば、
どれだけ心地良く、さらにすべてを満喫出来たことだろう!
夜に到着したことを、これほどいろんな意味で、
後悔したことはない(笑)
しかし結局、苦労はしても、
たどり着いてみれば、そこには素晴らしいものが待っていた。
これぞ神様のお導き!
朝になって見れば、この眺め!
そして...
実は真のお導きは、これだけではなかった。
さらなる次の『お導き』。
運命の女神は、翌早朝。
慌ただしく車に荷物を積み込む我々の目の前に、
突然舞いおりたのである。