中東の「かの地」では、いまだ戦火がやまない。その「かの地」から、2つの情報が届いた。いずれもクリスマスの昨夜、夕餉の食卓で聞いたNHKのニュースである。
(1)「パレスチナ暫定自治区のベツレヘムには、キリスト生誕の地に建つとされる『聖誕教会』があり、25日、恒例のクリスマスのミサが行われました。
ミサのなかでピッツァバッラ総大司教は『ことしのクリスマスには喜びと平和はない。2万人以上が犠牲になり、多くの人が避難生活を送るガザ地区に思いをはせている。政治的なことに立ち入りたくはないが、言わねばならない。停戦について話すだけでなく暴力の応酬を完全に止めなければいけない。暴力は暴力を生み出すだけだ』と説きました。」
(NHK NEWS WEB 12月25日配信)
(2)「ガザ地区への地上侵攻を続けるイスラエルのネタニヤフ首相は、24日の閣議で『ハマスとの戦いは長期戦になるが最後まで戦い続ける』と述べて強硬な姿勢を示し、引き続きガザ地区への激しい攻撃を続ける構えです。ガザ地区の保健当局は24日、過去24時間だけでガザ地区では166人が死亡し、これまでに2万424人が死亡したと発表しました。」
(同前)
相反する主張だが、これら2つの言説のうち、いずれが歴史の検証に耐えるかは、明らかである。
「暴力は暴力を生み出すだけだ」。これは今現在も続くこの地の現状そのものであり、今後も抵抗の暴力が止むことはないだろう。ネタニヤフ首相は「最後まで戦い続ける」と息巻くが、この戦いが「最後」を迎えることはおそらくないに違いない。
イスラエルは、また、この国を支援するアメリカは、なぜこうも強気なのか。それは、日米戦争の戦勝国・アメリカが敗戦国・日本を完全支配し、日本のゲリラ勢力を根絶した、80年近く前の成功体験がそうさせるからである。
イスラエルは、(80年近く前のアメリカ軍と同様)ハマスを武力制圧すれば、以後はこの武装組織を完全に根絶することができると思っている。だが、イスラム教の武装組織・ハマスと、天皇の赤子たる旧日本軍との違いを見逃すことはできない。
旧日本軍の兵士たちは、いったん天皇が敗戦の詔書をラジオで発表すると、悲嘆にひざまずきこそすれ、なお武力をもって米軍に抵抗しようと企てる者はほとんどいなかった。米軍に抵抗しようと企てる部隊は、天皇によって「賊軍」とみなされるからである。
戦いに敗けたとはいえ、敗戦直後の日本国内では、天皇の権威はまだまだ絶大であり、この天皇の権威が旧日本軍を制圧していた。だからこそ進駐軍に対する旧日本軍のゲリラ活動(=反乱)は顕在化しなかったのである。
問題は、この天皇に代わるラスボス的人物がイスラム教の武装組織・ハマスの中にいるかどうかである。存在/不在の違いを考えず、80年近く前の米軍の成功を再現できると思ったら、それは大きな誤りである。
(1)「パレスチナ暫定自治区のベツレヘムには、キリスト生誕の地に建つとされる『聖誕教会』があり、25日、恒例のクリスマスのミサが行われました。
ミサのなかでピッツァバッラ総大司教は『ことしのクリスマスには喜びと平和はない。2万人以上が犠牲になり、多くの人が避難生活を送るガザ地区に思いをはせている。政治的なことに立ち入りたくはないが、言わねばならない。停戦について話すだけでなく暴力の応酬を完全に止めなければいけない。暴力は暴力を生み出すだけだ』と説きました。」
(NHK NEWS WEB 12月25日配信)
(2)「ガザ地区への地上侵攻を続けるイスラエルのネタニヤフ首相は、24日の閣議で『ハマスとの戦いは長期戦になるが最後まで戦い続ける』と述べて強硬な姿勢を示し、引き続きガザ地区への激しい攻撃を続ける構えです。ガザ地区の保健当局は24日、過去24時間だけでガザ地区では166人が死亡し、これまでに2万424人が死亡したと発表しました。」
(同前)
相反する主張だが、これら2つの言説のうち、いずれが歴史の検証に耐えるかは、明らかである。
「暴力は暴力を生み出すだけだ」。これは今現在も続くこの地の現状そのものであり、今後も抵抗の暴力が止むことはないだろう。ネタニヤフ首相は「最後まで戦い続ける」と息巻くが、この戦いが「最後」を迎えることはおそらくないに違いない。
イスラエルは、また、この国を支援するアメリカは、なぜこうも強気なのか。それは、日米戦争の戦勝国・アメリカが敗戦国・日本を完全支配し、日本のゲリラ勢力を根絶した、80年近く前の成功体験がそうさせるからである。
イスラエルは、(80年近く前のアメリカ軍と同様)ハマスを武力制圧すれば、以後はこの武装組織を完全に根絶することができると思っている。だが、イスラム教の武装組織・ハマスと、天皇の赤子たる旧日本軍との違いを見逃すことはできない。
旧日本軍の兵士たちは、いったん天皇が敗戦の詔書をラジオで発表すると、悲嘆にひざまずきこそすれ、なお武力をもって米軍に抵抗しようと企てる者はほとんどいなかった。米軍に抵抗しようと企てる部隊は、天皇によって「賊軍」とみなされるからである。
戦いに敗けたとはいえ、敗戦直後の日本国内では、天皇の権威はまだまだ絶大であり、この天皇の権威が旧日本軍を制圧していた。だからこそ進駐軍に対する旧日本軍のゲリラ活動(=反乱)は顕在化しなかったのである。
問題は、この天皇に代わるラスボス的人物がイスラム教の武装組織・ハマスの中にいるかどうかである。存在/不在の違いを考えず、80年近く前の米軍の成功を再現できると思ったら、それは大きな誤りである。