ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

蛙化現象と恋愛の真理

2023-12-25 15:52:25 | 日記
蛙化現象
この言葉をご存知だろうか。
私はこの言葉を4日前にはじめて知った。
「皆さ〜ん、こんな言葉、知ってますか〜?」
先週木曜日のことだった。デイサのスタッフが始まりの挨拶でそう問いかけた。
かかげられた大きめの用紙には、「新しい学校のリーダーズ」、「アレ(A.R.E.)、「アーバンベア」、「憧れるのをやめましょう」など、今年の流行語がいくつも書きだされていた。
「蛙化現象」、この言葉だけは、私がはじめて目にする言葉だった。好奇心に駆られ、私は自宅に帰るとすぐこの言葉をググってみた。


片想いのうちは大好きで夢中になっていたのに、彼から興味を持たれたり、振り向かれたりすると途端に気持ちが冷めたり嫌いになってしまう心理的現象」だという。
「蛙化現象」という名前は、グリム童話の「カエルの王様」から来ているとあった。童話では、「王女に出会ったカエルが(王女のアクションをきっかけに)王子に変わる」という(蛙→王子の)経過をたどるが、現代の流行語では、これが逆になり、「王子のように魅力的に見えた彼氏が、ふとしたきっかけで魅力をなくし、ただのぼんくらになってしまう」という(王子→蛙の)経過をたどることになる。


「蛙化現象」という心理現象の意味を知った私は、この現象に大いなる興味を懐いた。なぜか。私は以前のブログで、次のように書いたことを思い出したのである。


「彼(ラ・ロシュフコー)は若かった頃、ある女性に惚れ、何度か拒絶されたあとで、やっと彼女をわが物にすることができたのだろう。だが、やっと手に入れたと思った瞬間、彼が味わったのは、『愛の成就』ではなかった。
彼が味わったのは、そういう至福感ではなく、『愛』が(砂上の楼閣のように)がらがらと崩れ落ちていく虚しさ・徒労感だったのではないか。」
(《愛の重荷を背負って行けば》12月20日)


ここに書かれているのは、まさしくラ・ロシュフコーが味わった「蛙化現象」の心理体験にほかならない。私はここに(カミュが描いた)「シーシュポスの神話」に通底するものを見、また次のようにも書いた。


「彼は運命に従って(恋愛感情という)岩を運ぶのだが、(恋愛の成就という)山頂に運び終えたその瞬間に、岩は転がり落ちてしまう。同じ動作を何度繰り返しても、結局は同じ結果にしかならないのだった。」
(同前)


これを「恋愛の真理」あるいは「人生の真理」の表出と見るとすれば、(「蛙化現象」が流行した)今年2023年は、多くの若者が「恋愛の真理」もしくは「人生の真理」を見出した(思想史上、記念すべき)年と言えるだろう。

コメント
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