次のニュースをどう見たらよいのだろうか。ウクライナの戦争に大きな転機が生じたと、そう見ることができるのだろうか。
「ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ東部の要衝マリウポリを掌握したと主張したうえで、ウクライナ側の部隊が拠点とする製鉄所については攻撃を中止し、一帯の包囲は継続するよう命令しました。
これに対しウクライナ側は、製鉄所をめぐる状況は何も変わらず、プーチン大統領の主張は国内向けに勝利を強調したいだけにすぎないと反発しています。」
(NHK NEWS WEB 4月21日配信)
このニュースによれば、ウクライナ側は「プーチン大統領の主張は国内向けに勝利を強調したいだけにすぎず」、したがって「製鉄所をめぐる状況は何も変わらない」と主張している。実情はこの見方の通りなのだろうか。
日本のメディアでも、プーチン大統領の発言は5月9日の対独戦勝記念日に向けたものであり、ウクライナ戦の勝利を国民に印象づけるために行った国内向けのパフォーマンスではないか、といった見方が多い。
尤もな解釈だが、これとは別に、次のように見ることもできるのではないか。このプーチンの発言は、むしろ国外向けのパフォーマンスであり、プーチンはそれによって「血も涙もない非情・暴虐な独裁者」という海外での悪評を拭い去ろうとしているのではないか、と。
そうだとしたら、彼はこれまでのように手荒なことはせず、実際に製鉄所への攻撃を中止させる腹なのかもしれない。
ただ、「一帯の包囲は継続するよう命令した」ということだから、製鉄所地下の要塞に立てこもったウクライナ兵たちへの包囲網は解かず、兵糧攻めを行うつもりなのだろう。
ともあれ、現下の膠着状態では、兵糧攻めぐらいしか打つ手がないというのが、戦線現場の実情だろう。プーチン大統領は、この状況を「撃ち方、やめ!」への作戦転換の結果として印象づけ、これを勝利の証としてロシア国民にアピールしようとする。それだけでなく、これを「血も涙もあるヒューマニスティックな独裁者」として自己演出するための舞台装置として利用しようというのだから、いやあ、よく考えたものだ。いや、悪智慧を働かせたものだ。
いやはや。