ささやんの週刊X曜日

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

マクロンのジレンマ(2)

2022-04-01 09:39:34 | 日記



フランスのマクロン大統領は、明らかにジレンマに陥っている。

彼は第一に、(ロシアに敵対すべき)NATOの一員であるフランスの、その政治的トップであり、しかも、もうじき大統領選挙を控えている。自明のことだが、多数の国民の支持を得ようとするなら、彼はヒューマニストとして、残虐非道なプーチンのやり方を口をきわめて非難しなければならない。

しかし第二に、彼は反面、国家首脳として国益の増大を図り、ロシアへの武器輸出を促進してきた立場でもある。国益をおろそかにできないフランス首脳の立場からすれば、ロシアはありがたい大口顧客なのだ。

言い換えれば、彼は(1)人道(ヒューマニズム)の倫理と、(2)国益ファーストのビジネスの倫理と、その間で板挟みになってしまっている。

そんなマクロン大統領がロシアのウクライナ侵攻にどういう態度をとるのか、とりわけプーチン大統領との会談においてどういう発言をするのか、私はこれまで大きな関心をもってウォッチしてきた。

しかしその具体的な内容は、(「彼はウクライナでの軍事作戦停止や、原子力発電所の保護などを求めた」といった通り一遍の報道以外)ネットでもことさら取り上げられることはなかった。

むろんマクロン大統領がプーチン大統領との会談を避けているわけではない。電話会談も含めれば、マクロン大統領の会談の頻度は、他の首脳のそれと比べて群を抜いている。こんな記事がある。

「マクロン氏はここ1か月、どの国の首脳よりもプーチン氏との対話に時間を割いてきた。ロシアのウクライナ侵攻をめぐり、西側諸国とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領を代表し、ロシア政府に対する外交面での働き掛けを主導した。
先月7日にモスクワを訪問した際には、6時間近くも対面で会談した。その後も10回、電話会談を行っている。会談はマクロン氏から提案することもあれば、プーチン氏が希望することもあった。
AFPのまとめでは、両首脳は過去5週間で累計約20時間対話している。
しかし、これまでのところ、侵攻を停止させたり、市民の犠牲を抑制したりするなど大きな成果にはつながっていない。何のための対話なのか、なぜそこまでするのかといった疑問の声も上がっている。」
(JIJI.COM 3月18日配信)

この記事は、マクロン大統領の苦境をよく伝えている。彼はプーチン大統領と頻繁に会談を重ねることにより、「侵攻を停止するよう、一生懸命プーチン大統領の説得を試みているのだ」というポーズを示したいのだが、この説得は原理的に不可能だと言ってよい。なにせ武器商人は、売りつけた武器が戦場で戦果を上げてこそナンボだからね。


コメント
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