おはようございます!
さて、木曜日の村上論考ですが、章が進み始めてだんだん楽しくなってきましたね。
というか、まあ、今回は、天吾くんストーリーということで、気の弱い男性向けストーリーなんですけど、
まあ、今までは、あんまり、自分向けじゃないなあ、と思いながら読んでいたんですが、
こう、昔の弱い自分を思い出せばいいのかな?と思いながら、読んだら、まあ、けっこう
楽しめたかな、ということで、まあ、そんな感じで、話していきたいと思います。
えー、天吾くんは、「空気さなぎ」のリライトも終え、凪のように平和な日々を手にしたそうです。
「日々は規則正しく滑らかに、こともなく流れていった。それこそがまさに天吾が求めている生活だった」
「ひとつの週が切れ目なく自動的に次の週へ結びついていくこと」
なんというか、平穏ということでしょうかね。僕は日々、文章をつむぐ、まあ、天吾くんと似たところもあるわけですけど、
毎日、論考シリーズや、お昼間カフェ、毎日のストーリーシリーズなどを書いていると、
「日々規則正しく滑らかに」
というのを実感しますね。
「あれ、さっきまで、書いていたと思ったのに・・・」
と、昨日書いた文章を思い出して・・・そして、先週書いた文章も思い出して・・・
「つながっているなあ・・・」
という感慨をよくもちますからね。やはり、似たようなことをしていると似たようなことを思うんでしょうね。
そして、天吾くんは、小説家として、生まれることを経験するわけです。
「自分の中に源泉のようなもにが生まれていることに気づいた」
ということで、
「そこから流れてくる水を手で掬い、文章の形にしていくだけだ」
と、小説家システムが、自分の中に出来上がったことに気づくわけです。
これね、村上さんの実体験を元にしていることが、ありありとわかります。
なぜなら、僕も、文章を書き、ストーリーを書いている経験から、同じ体験をしたからです。
ブログを綴っているうちに、いつの間にか、ずんどこ書ける源泉のようなものを見つけてしまった、というより、
身につけてしまったんです。書くシステムを。
だから、こんなに多作なんですね。さらに記事をひとつあげるのも、早いです。
だから、朝のちょっとした時間で、3つの記事を作っておける。2つの記事とひとつのストーリー。
それを毎日ですよ!(笑)。まあ、よくやりますねー(笑)。
まあ、自分が、そういう経験をしたから、この小説もそういう見方ができるようになったんですね。
そして、そういう「システム」を自分の中につくりあげた天吾くんは、意欲、というものが生じていることに思い当たったんですね。
子供の頃から、手にした覚えがないもの。何でも器用にこなすくせに、天吾くんに欠けていたもの。
「石にしがみついても」
という姿勢・・・これね、結局、自分の能力の意味を知ったから、自分の可能性を知ってはじめて出てくるものだと思うんです。
僕もまったく同じなんですね。
「ひとを押しのけてでも」
という意欲にかけていた。
「君が欲しいのなら、それあげるよ。僕はいい」
そんな自分でしたからね、アンポンタンの頃の僕は。
でも、今は違う。大人になった自分の能力の意味を知り、誰よりもうまく自分の能力を伸ばしたい、と考えているわけです。
だから、石にしがみついても・・・ひとを押しのけてでも・・・という言葉が出てくると思うんですね。
だから、天吾くんも、自分の能力を知ると同時に、自分の今の限界だったり、問題点が見えるようになったんでしょうね。
そして、深い無力感も感じる。
「空気さなぎ」
をリライトしたことで、自分の中にある文章を書くということに、特化し、小説を書き上げなければならないと、
はじめて、意欲が湧いたわけです。
そして、
「意欲がわく」
ということは、
「俺になら、できる」
と、自分で、自分に結論づけているということでもあるのです。
僕はアンポンタンの頃、ひとを押しのけるのが嫌いでした。
「そんなダサいことできるか」
と、考えていました。でも、これ、逃げなんですよね。
自分で、そういうポジションをとって、責任を、持つことから、逃げていたんです。
だから、自分に体の良い
「言い訳」
を作って、逃げこんでいたんですよ。
そんな人間に、神様がほほえむことは、絶対にない。
「何かを達成すべく、人を押しのけてでも、石にしがみついてでも、なにかのポジションを得て、徹底的にやりぬく」
これこそ、本当の意味をもつんです。
そういう人間にこそ、神様は、ほほえむ。
その地点に今立ったのが天吾くんだ、ということです。
5月になり、そういう天吾くんに、小松から電話が入ります。
もちろん、ふかえりの「空気さなぎ」が新人賞を受賞したことについてです。
そして、小松は、天吾くんに、ふかえりが、記者会見に対応できるよう、いろいろ教えてほしい、と頼むわけです。
さらに、小松は、その後のもろもろを処理するために、そして、もろもろの利益を分配するためにペーパーカンパニーをつくり、
天吾くんにも、そこに参加してくれと、頼むわけです。
でも、それについて、天吾くんは、次のような言葉を述べるんです。
「ねえ、小松さん、僕をそこから、はずしてくれませんか。報酬はいりません。「空気さなぎ」を書き直すのは楽しかった。そこからいろんなことが学べました」
「ふかえりが新人賞をとれてなによりだった。彼女が記者会見でうまくやれるように、できるだけ手筈を整えます。そこまでのことはなんとかやります」
「でも、そんなややこしい会社には関わりたくないんです。それじゃ完全な組織的な詐欺ですよ」
まあ、正論です。
天吾くんは、小説家としての「書くシステム」を体内に作り上げましたし、常識的に考えれば、早くこの仕事から足を洗い、自分の小説で金を稼ぐ生活を
早く始めるべきだ。でも、その「書くシステム」を創り上げたのは、「空気さなぎ」のリライトだったわけですから、ここは、仁義の問題になるわけですよ。
そして、もちろん、こんな反論を受け入れる小松でもないわけです。
「天吾くん、もう、後戻りはできないんだ」
と、言う言葉からはじめて、
「我々は、もう、一連託生だ」
ということを言うわけです。そして、最後に、こういう男なら一度は言われてみたい言葉を小松からもらうわけです。
「なあ、天吾くん、このいっとき、難しいことは考えるな。ただ流れのままに身を任せよう。こんなのって、一生の間にそう何度もあることじゃないぜ」
「華麗なるピカレスクロマンの世界だ。ひとつ腹をくくって、こってりとした悪の匂いを楽しもう。急流下りを楽しもう。そして滝の上から落ちるときは一緒に派手に落ちよう」
まあ、気弱な男は、ちょっとうれしい言葉ですね。まあ、気弱男性向けの施策って、やつですね、これも(笑)。
そして、天吾くんは、「ふかえり」と待ち合わせをして、記者会見への傾向と対策を練る・・・というか、予行演習をやるわけです。
そのとき、ふかえりは、胸のかたちがくっきりと出る薄い夏物のセーターを着ているんですね。
そして、いろいろな予行演習のあと、天吾くんは、気になっていたことを「ふかえり」に聞くわけです。
「僕が手をいれた「空気さなぎ」は、読んだ?」
「どうだった?」
と。
それに対して、「ふかえり」は、
「あなたはとてもうまくかく」
「わたしがかいたみたいだ」
と、答えるわけです。この言葉に、天吾くんは、
「それを聞いてうれしいよ」
と、喜びを伝えるわけです。これは、やはり、モノを書く人間としての根源的な喜びだと思います。
それを村上さんも知っているから、この章の題名が、
「気にいってもらえてとてもうれしい」
になっているわけです。この「ふかえり」とのやりとりが、この天吾くんの喜びが、この章の中心なんですね。
そして、「ふかえり」の胸の形が、美しいことが何度も描かれるわけです。天吾くんは、
「ひとつ個人的なお願いがあるんだ」
として、
「記者会見には、ぜひ、今日と同じ服装で来てくれ」
と頼むわけです。
まあ、
「記者たちは、ふかえりの胸にやられるだろう」
と、天吾くんは予想している、というわけで、ここらあたりは、イメージ的に、奥手男性を盛り上げているんでしょうね。
確かに、美しいボディラインというのは、異性に対する、最強の武器ですからね。
あれは、本能的にやられちゃいますから、何もできないわけですよ。ほんとに。
だから、美しいボディラインは、最強のおしゃれと・・・まあ、目力が、最強だっけ(笑)。まあ、そこらへんは、いいでしょう(笑)。
そして、ふかえりは、天吾くんの目を覗き込むんですけど、天吾くんは、赤くなるんですね。
天吾くんは、ふかえりを、女性として認識した、ということなんです。
そして、ふかえりを新宿駅まで送る天吾くんは、ふかえりと手をつないで、いるんですね。
以前は、感情は動かなかったはずなのに、今回は、
「彼女のように美しい少女に手を握られていると、天吾の胸は自然にときめいた」
となっちゃうわけです。ふかえりの女性性に目覚めてしまった天吾くんということですね。
天吾くんは、その帰り、紀伊国屋の近くのバーでジントニックを飲むんですね。そして、ふかえりのことを思い出すわけです。
握っていた手のこと・・・そして、おもしろいのは、こういう表現かな。
「それから彼女の胸の形を思い浮かべた。きれいな形の胸だった。あまりにも端正で美しいのでそこからは性的な意味すらほとんど失われてしまっている」
だそうで。でも、それは、奥手男性に、
「少女の胸のことを考えても、いいんですよ。だって、性的な意味は、失われているんだから」
と、パスポートを渡しているに過ぎないんですね。なぜなら、天吾くんは、これを考えた後、すぐに、例の年上のガールフレンドとセックスがしたくなるわけですから。
まあ、ふかえりの女性性に目覚めてしまって、実際、手を握っていたわけですから、そうなるのは、男性として当たり前です。
もちろん、大切にしたい少女だから、性的に見たくないという感情に配慮した表現なんですけどね。
さて、そんな天吾くんですけど、年上のガールフレンドに電話をかけるわけにはいかないわけです。旦那が出たら困りますからね。
それで仕方なく、小松のことを思ったりするわけです。もちろん、これからの不安をぼぅっと思いながら。
天吾くんは、家に帰って眠りにつくと、自分が巨大なパズルの1ピースになった夢をみるわけです。周りはきっちりとはまっているのに、
彼だけが常に形を変えている。彼のまわりで、いろいろなことが起こり、最後にふかえりが、
「これでおしまい」
と言うと、
「時間がぴたりと止まり、世界はそこで終結した。地球はゆっくりと回転を止め、すべての音と光が消滅した」
とされるわけです。
エヴァ的終結。宗教的世界で、語られる終末がそこに語られるわけです。
そして、物事は進み始めたんです。
「前にいるすべての生き物を片端から轢き殺していく、インド神話の巨大な車のように」
最後のところ、非常に、神話的宗教的世界の終結とはじまり、なんですね。
それは、ふかえりの作家としてのはじまりでもあり、天吾くんの作家としてのはじまりであり、小松のペーパーカンパニーのはじまりであり、
天吾くんのふかえりへの思慕のはじまりでも、あるんです。
そして、天吾くんが、青豆さんと同じことをしていることに気がつくんですね。報酬を拒否しているんです。
青豆さんは、純粋なら何をしてもいいわけではない・・・そのために報酬というシステムが必要だとされたんですね。
それに対して、天吾くんも、純粋に、「空気さなぎ」のリライトがしたかったから、いや、面倒にまきこまれたくないから、報酬を拒否した。
それに対して、小松は、
「もう、後戻りはできない」
と、言い、さらに
「子供の遊びじゃないんだ」
と、言っている。つまり、
「大人として責任をとれ」
と言っているわけです。青豆さんも、あの報酬は、責任なんでしょうね。だから、二人は酷似した環境にいる、ということになるんですね。
それが、二人をつなぐ環境なのか。そのあたりも、これから、楽しみにしていきたいですね。
いずれにしろ、今回は、はじまりが、語られた。
いろいろなはじまりが、そこには、ありましたね。
そして、その中心にあったのが、
「気にいってもらえてとてもうれしい」
という、気持ちのやりあいだったんですね。これが、すべてのはじまりを引き起こしていたとも、言えるわけです。
まあ、少女に自分の仕事を気にいってもらえて、ほめてもらったら、奥手男性は、天にも、登る気持ちだと思いますからね。
いずれにせよ、すべてのことが、はじまっていく、本章となりました。
これが、結論かな。
これから、どんなストーリーが編まれるのか、それを楽しみに、今日は、このあたりにしましょう。
今日も長くなりました。
ここまで、読んで頂いたみなさん、ありがとうございました!
また、次回、お会いしましょう!
ではでは。
さて、木曜日の村上論考ですが、章が進み始めてだんだん楽しくなってきましたね。
というか、まあ、今回は、天吾くんストーリーということで、気の弱い男性向けストーリーなんですけど、
まあ、今までは、あんまり、自分向けじゃないなあ、と思いながら読んでいたんですが、
こう、昔の弱い自分を思い出せばいいのかな?と思いながら、読んだら、まあ、けっこう
楽しめたかな、ということで、まあ、そんな感じで、話していきたいと思います。
えー、天吾くんは、「空気さなぎ」のリライトも終え、凪のように平和な日々を手にしたそうです。
「日々は規則正しく滑らかに、こともなく流れていった。それこそがまさに天吾が求めている生活だった」
「ひとつの週が切れ目なく自動的に次の週へ結びついていくこと」
なんというか、平穏ということでしょうかね。僕は日々、文章をつむぐ、まあ、天吾くんと似たところもあるわけですけど、
毎日、論考シリーズや、お昼間カフェ、毎日のストーリーシリーズなどを書いていると、
「日々規則正しく滑らかに」
というのを実感しますね。
「あれ、さっきまで、書いていたと思ったのに・・・」
と、昨日書いた文章を思い出して・・・そして、先週書いた文章も思い出して・・・
「つながっているなあ・・・」
という感慨をよくもちますからね。やはり、似たようなことをしていると似たようなことを思うんでしょうね。
そして、天吾くんは、小説家として、生まれることを経験するわけです。
「自分の中に源泉のようなもにが生まれていることに気づいた」
ということで、
「そこから流れてくる水を手で掬い、文章の形にしていくだけだ」
と、小説家システムが、自分の中に出来上がったことに気づくわけです。
これね、村上さんの実体験を元にしていることが、ありありとわかります。
なぜなら、僕も、文章を書き、ストーリーを書いている経験から、同じ体験をしたからです。
ブログを綴っているうちに、いつの間にか、ずんどこ書ける源泉のようなものを見つけてしまった、というより、
身につけてしまったんです。書くシステムを。
だから、こんなに多作なんですね。さらに記事をひとつあげるのも、早いです。
だから、朝のちょっとした時間で、3つの記事を作っておける。2つの記事とひとつのストーリー。
それを毎日ですよ!(笑)。まあ、よくやりますねー(笑)。
まあ、自分が、そういう経験をしたから、この小説もそういう見方ができるようになったんですね。
そして、そういう「システム」を自分の中につくりあげた天吾くんは、意欲、というものが生じていることに思い当たったんですね。
子供の頃から、手にした覚えがないもの。何でも器用にこなすくせに、天吾くんに欠けていたもの。
「石にしがみついても」
という姿勢・・・これね、結局、自分の能力の意味を知ったから、自分の可能性を知ってはじめて出てくるものだと思うんです。
僕もまったく同じなんですね。
「ひとを押しのけてでも」
という意欲にかけていた。
「君が欲しいのなら、それあげるよ。僕はいい」
そんな自分でしたからね、アンポンタンの頃の僕は。
でも、今は違う。大人になった自分の能力の意味を知り、誰よりもうまく自分の能力を伸ばしたい、と考えているわけです。
だから、石にしがみついても・・・ひとを押しのけてでも・・・という言葉が出てくると思うんですね。
だから、天吾くんも、自分の能力を知ると同時に、自分の今の限界だったり、問題点が見えるようになったんでしょうね。
そして、深い無力感も感じる。
「空気さなぎ」
をリライトしたことで、自分の中にある文章を書くということに、特化し、小説を書き上げなければならないと、
はじめて、意欲が湧いたわけです。
そして、
「意欲がわく」
ということは、
「俺になら、できる」
と、自分で、自分に結論づけているということでもあるのです。
僕はアンポンタンの頃、ひとを押しのけるのが嫌いでした。
「そんなダサいことできるか」
と、考えていました。でも、これ、逃げなんですよね。
自分で、そういうポジションをとって、責任を、持つことから、逃げていたんです。
だから、自分に体の良い
「言い訳」
を作って、逃げこんでいたんですよ。
そんな人間に、神様がほほえむことは、絶対にない。
「何かを達成すべく、人を押しのけてでも、石にしがみついてでも、なにかのポジションを得て、徹底的にやりぬく」
これこそ、本当の意味をもつんです。
そういう人間にこそ、神様は、ほほえむ。
その地点に今立ったのが天吾くんだ、ということです。
5月になり、そういう天吾くんに、小松から電話が入ります。
もちろん、ふかえりの「空気さなぎ」が新人賞を受賞したことについてです。
そして、小松は、天吾くんに、ふかえりが、記者会見に対応できるよう、いろいろ教えてほしい、と頼むわけです。
さらに、小松は、その後のもろもろを処理するために、そして、もろもろの利益を分配するためにペーパーカンパニーをつくり、
天吾くんにも、そこに参加してくれと、頼むわけです。
でも、それについて、天吾くんは、次のような言葉を述べるんです。
「ねえ、小松さん、僕をそこから、はずしてくれませんか。報酬はいりません。「空気さなぎ」を書き直すのは楽しかった。そこからいろんなことが学べました」
「ふかえりが新人賞をとれてなによりだった。彼女が記者会見でうまくやれるように、できるだけ手筈を整えます。そこまでのことはなんとかやります」
「でも、そんなややこしい会社には関わりたくないんです。それじゃ完全な組織的な詐欺ですよ」
まあ、正論です。
天吾くんは、小説家としての「書くシステム」を体内に作り上げましたし、常識的に考えれば、早くこの仕事から足を洗い、自分の小説で金を稼ぐ生活を
早く始めるべきだ。でも、その「書くシステム」を創り上げたのは、「空気さなぎ」のリライトだったわけですから、ここは、仁義の問題になるわけですよ。
そして、もちろん、こんな反論を受け入れる小松でもないわけです。
「天吾くん、もう、後戻りはできないんだ」
と、言う言葉からはじめて、
「我々は、もう、一連託生だ」
ということを言うわけです。そして、最後に、こういう男なら一度は言われてみたい言葉を小松からもらうわけです。
「なあ、天吾くん、このいっとき、難しいことは考えるな。ただ流れのままに身を任せよう。こんなのって、一生の間にそう何度もあることじゃないぜ」
「華麗なるピカレスクロマンの世界だ。ひとつ腹をくくって、こってりとした悪の匂いを楽しもう。急流下りを楽しもう。そして滝の上から落ちるときは一緒に派手に落ちよう」
まあ、気弱な男は、ちょっとうれしい言葉ですね。まあ、気弱男性向けの施策って、やつですね、これも(笑)。
そして、天吾くんは、「ふかえり」と待ち合わせをして、記者会見への傾向と対策を練る・・・というか、予行演習をやるわけです。
そのとき、ふかえりは、胸のかたちがくっきりと出る薄い夏物のセーターを着ているんですね。
そして、いろいろな予行演習のあと、天吾くんは、気になっていたことを「ふかえり」に聞くわけです。
「僕が手をいれた「空気さなぎ」は、読んだ?」
「どうだった?」
と。
それに対して、「ふかえり」は、
「あなたはとてもうまくかく」
「わたしがかいたみたいだ」
と、答えるわけです。この言葉に、天吾くんは、
「それを聞いてうれしいよ」
と、喜びを伝えるわけです。これは、やはり、モノを書く人間としての根源的な喜びだと思います。
それを村上さんも知っているから、この章の題名が、
「気にいってもらえてとてもうれしい」
になっているわけです。この「ふかえり」とのやりとりが、この天吾くんの喜びが、この章の中心なんですね。
そして、「ふかえり」の胸の形が、美しいことが何度も描かれるわけです。天吾くんは、
「ひとつ個人的なお願いがあるんだ」
として、
「記者会見には、ぜひ、今日と同じ服装で来てくれ」
と頼むわけです。
まあ、
「記者たちは、ふかえりの胸にやられるだろう」
と、天吾くんは予想している、というわけで、ここらあたりは、イメージ的に、奥手男性を盛り上げているんでしょうね。
確かに、美しいボディラインというのは、異性に対する、最強の武器ですからね。
あれは、本能的にやられちゃいますから、何もできないわけですよ。ほんとに。
だから、美しいボディラインは、最強のおしゃれと・・・まあ、目力が、最強だっけ(笑)。まあ、そこらへんは、いいでしょう(笑)。
そして、ふかえりは、天吾くんの目を覗き込むんですけど、天吾くんは、赤くなるんですね。
天吾くんは、ふかえりを、女性として認識した、ということなんです。
そして、ふかえりを新宿駅まで送る天吾くんは、ふかえりと手をつないで、いるんですね。
以前は、感情は動かなかったはずなのに、今回は、
「彼女のように美しい少女に手を握られていると、天吾の胸は自然にときめいた」
となっちゃうわけです。ふかえりの女性性に目覚めてしまった天吾くんということですね。
天吾くんは、その帰り、紀伊国屋の近くのバーでジントニックを飲むんですね。そして、ふかえりのことを思い出すわけです。
握っていた手のこと・・・そして、おもしろいのは、こういう表現かな。
「それから彼女の胸の形を思い浮かべた。きれいな形の胸だった。あまりにも端正で美しいのでそこからは性的な意味すらほとんど失われてしまっている」
だそうで。でも、それは、奥手男性に、
「少女の胸のことを考えても、いいんですよ。だって、性的な意味は、失われているんだから」
と、パスポートを渡しているに過ぎないんですね。なぜなら、天吾くんは、これを考えた後、すぐに、例の年上のガールフレンドとセックスがしたくなるわけですから。
まあ、ふかえりの女性性に目覚めてしまって、実際、手を握っていたわけですから、そうなるのは、男性として当たり前です。
もちろん、大切にしたい少女だから、性的に見たくないという感情に配慮した表現なんですけどね。
さて、そんな天吾くんですけど、年上のガールフレンドに電話をかけるわけにはいかないわけです。旦那が出たら困りますからね。
それで仕方なく、小松のことを思ったりするわけです。もちろん、これからの不安をぼぅっと思いながら。
天吾くんは、家に帰って眠りにつくと、自分が巨大なパズルの1ピースになった夢をみるわけです。周りはきっちりとはまっているのに、
彼だけが常に形を変えている。彼のまわりで、いろいろなことが起こり、最後にふかえりが、
「これでおしまい」
と言うと、
「時間がぴたりと止まり、世界はそこで終結した。地球はゆっくりと回転を止め、すべての音と光が消滅した」
とされるわけです。
エヴァ的終結。宗教的世界で、語られる終末がそこに語られるわけです。
そして、物事は進み始めたんです。
「前にいるすべての生き物を片端から轢き殺していく、インド神話の巨大な車のように」
最後のところ、非常に、神話的宗教的世界の終結とはじまり、なんですね。
それは、ふかえりの作家としてのはじまりでもあり、天吾くんの作家としてのはじまりであり、小松のペーパーカンパニーのはじまりであり、
天吾くんのふかえりへの思慕のはじまりでも、あるんです。
そして、天吾くんが、青豆さんと同じことをしていることに気がつくんですね。報酬を拒否しているんです。
青豆さんは、純粋なら何をしてもいいわけではない・・・そのために報酬というシステムが必要だとされたんですね。
それに対して、天吾くんも、純粋に、「空気さなぎ」のリライトがしたかったから、いや、面倒にまきこまれたくないから、報酬を拒否した。
それに対して、小松は、
「もう、後戻りはできない」
と、言い、さらに
「子供の遊びじゃないんだ」
と、言っている。つまり、
「大人として責任をとれ」
と言っているわけです。青豆さんも、あの報酬は、責任なんでしょうね。だから、二人は酷似した環境にいる、ということになるんですね。
それが、二人をつなぐ環境なのか。そのあたりも、これから、楽しみにしていきたいですね。
いずれにしろ、今回は、はじまりが、語られた。
いろいろなはじまりが、そこには、ありましたね。
そして、その中心にあったのが、
「気にいってもらえてとてもうれしい」
という、気持ちのやりあいだったんですね。これが、すべてのはじまりを引き起こしていたとも、言えるわけです。
まあ、少女に自分の仕事を気にいってもらえて、ほめてもらったら、奥手男性は、天にも、登る気持ちだと思いますからね。
いずれにせよ、すべてのことが、はじまっていく、本章となりました。
これが、結論かな。
これから、どんなストーリーが編まれるのか、それを楽しみに、今日は、このあたりにしましょう。
今日も長くなりました。
ここまで、読んで頂いたみなさん、ありがとうございました!
また、次回、お会いしましょう!
ではでは。