「ゆるちょ・インサウスティ!」の「海の上の入道雲」

楽しいおしゃべりと、真実の追求をテーマに、楽しく歩いていきます。

ラブ・クリスマス!(4)「ボクとワタシのイブまでの一週間戦争!」

2012年12月23日 | アホな自分
クリスマスイブ7日前の土曜日の午後5時頃。

ガオと、大人の女3人の会話は、全然終わっていなかった。


「こんな時、鈴木だったら、どう出ると思います?」

と、ガオはアイリに聞いた。

「そうね。彼だったら、逃げ場を確保しながら、すべての事態をコントロールしようと考えるでしょうね・・・」

と、アイリは言う。

「もちろん、彼は理性的で・・・それが出来る男だもの・・・それは、今までの鈴木を見てくれば、わかることだわ・・・」

と、アイリは言う。

「そうね」「タケルくんなら、当然だわ・・・」

と、マキもアミも納得している。

「鈴木だったら・・・すべての事態をコントロールするのか・・・」

と、真面目な顔して悩むガオ。

「とにかく、ガオくんは、まず、気持ちを落ち着けて・・・冷静に、次の一手を考えることよ・・・例えば、そのミサさんが、ガオくんを本気で求めてきたら、どうする?」

と、アイリ。

「もし、次に二人きりで会って、酒でも一緒に飲んだら・・・俺、多分、行くとこまで行っちゃうような気がします・・・」

と、ガオ。

「普段のガオくんには、似つかわしくないわね・・・もし、それで相手が妊娠しちゃったりしたら、離婚訴訟よ。ガオくんは多額の賠償金を払わなければいけない・・・」

と、アイリは冷静に話す。

「そうか・・・確かに、そうですね・・・」

と、ガオは少し気分が静まる。

「女は、特に大人の女は、冷静に見えて・・・案外本能で行動するから・・・その場の雰囲気に、簡単に流されたりするものなの・・・」

と、アミ。

「だから、男女で一緒にいる時は、男性は決して女性の行動に惑わされてはいけないの・・・女性がオーケーを出したからと言って理性を欠いたら・・・」

と、アミ。

「欠いたら?」

と、ガオ。

「・・・堕ちるところまで、堕ちるわね。だって、女性は本能で生きているから、一緒にお酒なんか飲んだら最後・・・普通に男性の身体を求めたくなるもの・・・」

と、アミ。

ガオは、その説明に言葉がなかった。

アイリは、そのガオの様子を察して、さらに質問をする。

「ねえ、ガオくんは、そのミサって女性が、自分に恋に落ちたように見えたんでしょ?それに関する言葉とか、あったの?」

と、アイリは聞いた。

「僕は大学まで柔道やっていて・・・今サーフィンをやっているので、割りとマッチョなんです。ミサさんは、マッチョ好きなようなことを言ってました」

と、ガオは慎重に説明する。

「へー、ガオくん、マッチョなんだ!」

と、突然、反応するのは、アミ。

「あらあら、ここにも、若い男のマッチョ好きがいたわ」

と、マキが呆れて言葉にする。

「まあ、それはいいとして・・・だとしたら、アミは、そのミサって女性の気持ちが、わかるんじゃない?」

と、アイリはアミに振る。

「そうねー・・・」

と、アミは少し考える。

「だったら、こうしない?そのミサってオンナを、ガオくんが、バーかなんかに、おびき出して・・・わたしがしれっとそこにいて・・・そのミサってオンナの様子を探る・・・」

と、アミ。

「そうすれば、そのミサってオンナの本性もわかるし・・・目つきや喋り方でだいたいわかるわ・・・同じ若い男のマッチョ好きとしては、ね」

と、アミ。

「どう、このアイデア、ガオくん!」

と、畳み掛けるアミ。

「え?いやあ、経験豊富そうなアミさんが、それをやってくれるというなら・・・僕としてはブレーキもかかるし・・・願ったり叶ったりかな、と思います」

と、ガオ。

「それって・・・アミがガオくんに、ただ会いたいだけなんじゃないの?」

と、辛辣に言うマキ。

「まあ、いいじゃない・・・アミがいれば、ガオくんのブレーキにもなるし、ミサってオンナのしたいことも、ある程度わかるし・・・」

と、アイリ。

「それに、多分、ここに、タケルがいたら、この案を提案してくるだろうし・・・そういう匂いのするアイデアよ。そう思わない、アミ」

と、アイリ。

「そうね・・・私の好奇心旺盛な性格を知っているタケルくんなら・・・絶対に、そう提案してくるはずだわ」

と、嬉しそうにする、アミ。

「わたしも、そう思うな・・・ま、タケルくんの提案しそうなことなら・・・やるべきね、ここは」

と、マキ。

「鈴木って、お3人に、それほど、信頼されているんですね。大人の男性として」

と、軽く嫉妬するガオ。

「それは、そうよ。彼、すごいもーん」「その通り」「うれしいわ、そう言われると」

と、アミ、マキ、アイリは、それぞれ、反応する。

「いずれにしても、ガオくん、電話番号を教えてくれるかしら・・・3人とも個人情報は、しっかり秘匿する人間だから、そこは、安心して」

と、アイリ。

「じゃあ、その作戦、いつ決行しようか、ガオくん・・・」

と、アミとガオは、具体的な打ち合わせに入っていた。


クリスマスイブ7日前の土曜日の午後6時頃、イズミは、ゼミ御用達のちゃんこ居酒屋「力皇」で、ゼミの先輩、後輩、現役生、そして、先生達と飲んでいた。

イズミは、良い感じで酔ってはいたが、腑に落ちない気持ちも多かった。

「イズミさん、美緒にフラれて、それが気になっているんですか?」

と、隣に座っている数学科4年生の河西トオル(23)が笑顔で、イズミに、ズバリ!と聞いてくる。

「ああ。あんなに、あっさりとフラれたのも、珍しかったんだ、俺」

と、イズミも、そこは屈託なく話している。

「まあ、約束があったんなら、仕方ないけど・・・」

と、イズミが言うと、

「ああ、あれ、あいつのいつもの手なんですよ・・・男性が誘ってくるような気配を感じると、すぐ逃げを打つんです。あいつ・・・」

と、河西は、よく事情を知っているようだ。

「ほう・・・俺が彼女に手を出す・・・それを感じて、初めから逃げを打ったってこと?」

と、イズミは、少し瞠目しながら、河西に聞いている。

「あいつ、人気があるんですよ。特に年上の人間に・・・だから、そういう気配を感じると、さっとかわす・・・それが上手いんです。動物的勘みたいな感じです」

と、河西は、よく美緒を知っている。

「なるほどね・・・彼女は大人になるのを怖がっているのかな?」

と、イズミはさりげなく聞いてみる。

「美緒は・・・あいつ、テニスサークルに入っていた大学1年生の時に、マスター1年の先輩とつきあって・・・大人の女には、とっくになっていますよ」

と、河西。

「へー・・・じゃあ、その彼氏の為に、今日・・・?」

と、イズミが聞くと、

「その彼氏とは、大学3年の終りで、別れています。だから、今はフリーのはずなんですけど・・・僕も夏に告白してフラれた口なんです。実は・・・」

と、頭を掻く河西。

「はっ・・・それじゃ、俺と同じ立場なわけだ・・・人気あるんだな、彼女」

と、イズミは、なんとなく機嫌がよくなり、河西に日本酒を注いでやる。

「あ、すいません。先輩に注がせるなんて・・・美緒の奴・・・多分、同学年の男子に、かなり告白されているはずですよ・・・あいつ美人だし、性格いいから」

と、河西は、さらに情報をくれる。

「ふうん・・・フリーなのに、告白されても、頑な・・・どうしてなのかな?普通人間、特に女性は気持ちいいことを知ったら、そこに戻ることに熱心になるはずだけど」

と、イズミは考えている。

「さあ・・・そのあたりは、僕はさっぱり・・・」

と、河西。

「ちなみに・・・僕も卒業後は、八津菱電機への就職が決まっています・・・」

と、頭を下げる河西。

「へー・・・どこの事業部なの?」

と、イズミ。

「先輩と同じコンピューター事業部です。なので・・・これからも、よろしくお願いします。先輩」

と、もう一度頭をペコリと下げる河西。

「こちらこそ、よろしく・・・なるほど、それで美緒ちゃんの情報を、俺に熱心にくれたわけか・・・先輩に取り入るのが上手いよ。河西は」

と、機嫌よく話すイズミ。

「いやあ・・・とにかく、話すネタを、と考えていたんで・・・つい」

と、河西。

「しかし・・・なぜ美緒ちゃんは、恋愛の世界に戻ってこないんだろ。俺にはまるで、なにか大事なものを守っているかのように見えたぞ・・・処女を守る少女のように」

と、イズミ。

「それだけは、絶対に、ないですね。僕は美緒の彼氏だった男性を知っていますが、「美緒は名器!」みたいなことを、しれっとしゃべっちゃうような男性でしたよ」

と、河西。

「ふうーん。で、どんな奴だった。その美緒ちゃんの彼氏」

と、イズミ。

「テニスが相当上手くて、主将とかやっていて、底抜けに明るい笑顔のさわやかなひとでしたねー。下ネタを話しても、美人な女性達が微笑むような、そんな空気を持ってた」

と、河西が思い出すように話す。

「ふうーん、そりゃ、相当な腕前だなあ。女性は下ネタを嫌がるもんだけど・・・精神的に許している人間の前でのみ、笑顔になる」

と、イズミ。

「そうか・・・美緒ちゃんは、未だに、その彼氏に心があるんだよ・・・別れたと言っても、多分その彼氏の方が心変わりしたんだ。会社に入って、いい女みつけて、とかね」

と、イズミ。

「その彼氏が戻ってくるのを一日千秋の思いで待ち続けている・・・古い日本のおんなだ、美緒ちゃんは・・・古風な女・・・日本の絶滅危惧種だよ・・・」

と、イズミは、少し嬉しがっている。

「河西くん、先輩として、ひとつ借りを作らせてくれ・・・美緒ちゃんの連絡先を教えてくれないか?もし、あれだったら、ゼミの連絡録を見せてくれるんでもいい」

と、イズミは素早く行動に出る。

「もちろん、借りは何倍にもして返す。八津菱電機で、俺は君を待っているよ。借りを返す為に、ね」

と、イズミがニヤリとすると、河西は自分の手帳に、美緒の電話番号を書いて、そのメモを渡してくれる。

「イズミさんって、仕事出来そうですね」

と、河西が言うと、

「当たり前だ。中王大学の数学科卒だもの」

と、笑うイズミ。

「そうでした。そうでしたね」

と、笑う河西。

場はさらに盛り上がっていた。


クリスマスイブ7日前の土曜日の午後7時頃、東堂家のダイニングテーブルでは、賢一と愛美がスキヤキに舌鼓を打っていた。

「いやあ、この季節はやっぱり、スキヤキだ。お肉が美味しいよ・・・」

と、ビールを飲みながら、もう赤くなっている賢一は、ご機嫌だった。

愛美も、少しのビールで気分よくなっている。

と、そんなところで、携帯電話が鳴る。

「うーん、こんな時間に誰だ!}

と、軽い剣幕で電話に出る賢一。

「もしもし・・・う?ああレナちゃん?番号教えたっけ?エイイチの奴が?あちゃー・・・あいつめ。うん・・・わかったけど・・・うん。うん・・・」

と、明らかに女性からの電話。

「そうだね・・・いやあ、昨日の今日じゃないか・・・ああ。うん。わかったわかった・・・でも、この時間はまずいんじゃない?うん。わかったわかった・・・はい」

と、横を向きながら、電話の応対をする賢一。

「ふー」

と、電話を置くと、賢一は真っ先に愛美の方を見る。

愛美は、下を向きながら、肉を食べてはいるが・・・明らかに不機嫌そう。

「いや、エイイチの奴が、俺の携帯の番号まで、教えちゃったらしくてさ・・・俺は教えてないんだよ。まさか、そんなことしないよ・・・なー・・・」

と、少し汗だくの賢一。

「昨日のキャパクラの営業電話だよ・・・もう行かないから・・・ね、機嫌直して・・・愛美・・・」

と、恐縮しきりの賢一だった。

「まあ、エイイチさんが教えたんじゃ、しょうがないけれど・・・」

と、少し機嫌を直す愛美だった。

「だろ・・・いやあ、キャバクラに連れて行ったのは俺だから、まあ、俺も悪いが・・・」

と、頭を掻く賢一。

「愛美、気分を害させて悪かった・・・ビール注ぐから・・・機嫌直して・・・俺は愛美の笑顔を見たいんだから」

と、愛美のグラスに、ビールを注ぐ賢一。

「一度害された気分は、そんな簡単に治りませんから」

と、愛美は、ビールを飲みながら、黙々と肉を食べた。

「エイイチの奴・・・」

と、苦虫をつぶした表情の賢一は、それでも、愛美のビールを注ぎ続けたのであった。


クリスマスイブ7日前の土曜日の午後10時過ぎ。ガオは、少しくつろいだ気分でワインを飲んでいた。

ローストビーフも、野菜サラダも美味しく感じられた。

「うん、結果オーライだったけど、アイリさんのところへ電話してよかった・・・」

と、ガオは、素直にそう感じていた。

「アイリさんも、アミさんも、マキさんも、大人の女性だし・・・なにか俺の知らなかった世界が広がった感じだもんな・・・」

と、ガオ。

「しかし、鈴木は・・・あんな女性達を相手にしていたのか・・・それに、3人の鈴木に対する信頼感は、絶対的なモノがあったし・・・」

と、ガオ。

「もしかして、鈴木のやつ、俺の知らないところで、とてつもないことをしていたんじゃないだろうか・・・」

と、ガオ。

「タケルくん・・・なんて、あのアミさんや、マキさんが言ってたし・・・信頼されている以上に絶対的に愛されている・・・」

と、ガオ。

「鈴木は、何をしでかしてきたんだ・・・彼女たちの前で・・・」

と、ガオ。

「ふー・・・まあ、いい。とにかく、リサさんが何を僕に求めているのか・・・それをハッキリさせよう・・・でも、僕を求めているのは確かだ・・・」

と、考えると、また、リサの美しい幻影が、ガオのこころに蘇る。

「抱くわけにはいかない・・・だが、昨日の視線は、「抱いてほしい・・・」と言葉にしていたような気がする・・・」

と、ガオ。

「大人の恋・・・か」

と、ガオ。

「しかし・・・話した感じだけだけど・・・あのアミって人も相当魅力的な感じだったけど・・・ただ、アミさんは、鈴木を好きなように思えたが・・・」

と、ガオ。

「あー、わからなくなってきた・・・鈴木って、何をしていたんだ。彼女たちの前で・・・いかん、今日はもう寝よう!」

と、決断したガオは、残りのワインをがぶ飲みして、ベッドに横になり、すぐに寝息をたてて眠ってしまった。


クリスマスイブ7日前の土曜日の午後11時頃。アイリのダイニングテーブルでは、未だに酒宴が続いていた。

「アミは、ガオくんに会いたくて、あんな提案したんでしょー」

と、マキがいちゃもんをつけている。

「いいじゃない・・・探偵ごっこ、なんておもしろそうだもん」

と、アミ。

「まあ、ガオくんは、タケルの親友だから、出来るだけ丁重に頼むわね」

と、アイリ。

「大丈夫よ。わたしだって、子供じゃないんだから、大人の女性らしい、抑制された理性は持ってます」

と、アミ。

「なによー。大人の女でも流されやすいって言ってたのは、アミでしょ」

と、マキ。

「まあ、いいから・・・こんな時、タケルがいてくれたら・・・どんなに楽だったか・・・」

と、アイリ。

「タケルくんだって、きっと私の案に賛成してくれたはずよ・・・それは二人も認めてくれたじゃない」

と、アミ。

「まあ、それはそうだけど」「まあ、ね」

と、マキとアイリは、それは認めるところ。

「いずれにしろ、今年のクリスマスは、楽しめそう・・・そうじゃない?」

と、アミ。

「そうね・・・なんか、おもしろくなるかもね」

と、アイリ。

「そうだといいけどねー」

と、マキ。

「でも、ガオくんって、ちょっとかわいくなかった?」「だからー」「あのねー」

と、アミが問題発言をして、土曜日の夜は、更けていくのだった。


つづく

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