「ゆるちょ・インサウスティ!」の「海の上の入道雲」

楽しいおしゃべりと、真実の追求をテーマに、楽しく歩いていきます。

ラブ・クリスマス!(5)「ボクとワタシのイブまでの一週間戦争!」

2012年12月24日 | アホな自分
クリスマスイブ6日前の日曜日の朝、というより、土曜日の深夜、午前3時頃。都内のバーで、静かにお酒を飲む二人の女性の姿があった。

リョウコ(26)と、チームのエース格、重富リサ(30)だった。

「今日もハードだったわね」

と、リサが言う。

「ええ・・・でも、作戦は成功したし・・・情報の漏洩もないようだったし・・・とりあえずは、よかったんじゃないですか?」

と、リョウコも公安の人間の顔に戻っている。

「例の3番ルートが怪しいとわたしは、踏んでるんだけど」

と、言いながら、リサが、ホットバタード・ラムを暖かそうに飲む。

「3番って・・・官邸に近いルートですよ。あそこがやられていたら・・・」

と、リョウコはニコラシカを、思わず、飲み干してしまう。

「いや、全部じゃないわ。官邸回避ルートのBポイント・・・あのあたりが臭いと踏んでるの。もちろん、ダミー情報を振りまいて、チェックは、かけてる」

と、リサは言う。

「データの逆流が見られれば・・・そこを押さえる・・・そういうことですね」

と、リョウコはヒョウのような鋭い目つきで、リサを見る。

「そう。明日の午前中には明らかになっているはずだわ。担当は、チーム涼が、やってくれるわ」

と、涼やかに答えるリサ。

「涼さんのところなら、確実に仕留めてくれるでしょう」

と、リョウコも少し和んだ雰囲気になる。

「で、昨日はどうでした。ガオ先輩・・・リサ先輩の好みの男性だとは、思いましたけど、癒されてくれました?」

と、リョウコは、早速結果を聞く。

「ふふ。そうね。彼、私のことを、気に入ったみたい・・・私も彼を気に入ったわ。だから、電話番号渡しておいた」

と、リサはさらさらと本当のことを話す。

「リサさん・・・」

と、リョウコは、リサの本心をわかりかねる感じだ。

「ふ・・・私たちは、大人の女性と大人の男性よ。抑制された大人の理性を持ち合わせてるわ。大丈夫。電話くらい楽しんだってバチは当たらないわ」

と、リサ。

「まあ、わたしもリサさんなら、間違いはないだろうと思いますけど・・・」

と、訝しがりながら、リョウコ。

「女は、自由な生き物よ・・・その気になれば、何でも欲しいものは、手に入れられる・・・それを確認するために生きるのが女という生き物なの」

と、リサ。

「リョウコは、少し真面目に、生き過ぎてるんではなくて?もうすぐクリスマスなんだし・・・リョウコの美貌なら、彼氏のひとりやふたり、簡単に作れるはずよ!」

と、リサ。

「横着してたら、欲しい物も手に入らないわよ」

と、リサ。

と、リョウコは、その言葉に少し凹む。

「あら、ごめんなさい。少し言葉が強すぎたわ・・・私、酔ってるのね・・・今日はハードだったから・・・リョウコ、これでお暇させて。この穴埋めは、いつかするわ」

と、リサは立ち上がると、リョウコの分も払って、都会の闇に消える。


リョウコは、そのまま、少し考えこむ。

ほんの数分、リョウコは、まばたきもせずに、考えている。

「何かが違う。何かがおかしい・・・これくらいの酒量で酔うリサさんじゃなかった・・・」

と、リョウコは立ち上がろうとするが・・・。

「ううん・・・今はわたしが、動かない方がいい」

と、リョウコは立ち上がるのを止める。

「特に今はクリスマス・シーズンだし・・・大人の男と女の物語に、野暮は禁物ね・・・」

と、リョウコは、座り直すと、

「マスター、ニコラシカ、おかわり!」

と、オーダーするのだった。


クリスマスイブ6日前の日曜日の朝、午前7時頃。ガオはいつものように目を覚まして、ジョギングウェアに着替えると、鎌倉の街を走りだした。

「アミさん、そのー、ミサさんへの電話・・・当分、しない方がいいですかねー?」

と、昨日のアミとの会話を思い出すガオだった。

「うーん、ところで、ガオくんが、ミサさんが、ガオくんを気に入ったことに気づいたということは、そのミサさんも、それ見抜いているよね」

と、アミが聞く。

「そこまでは、僕は確信を持って言えませんが・・・でも、わかってると思います。お互いそこはわかりあえてると・・・」

と、ガオ。

「だったら、明日にでも電話しなさい。しない方が不審がられるわ。日曜日の朝10時に、でも・・・女性はそのくらいの時間が一番機嫌がいいから」

と、アミは大人の女性として、アドバイスしている。

「そういうもんですか・・・参考になります。なんか、アミさんって、なんでも知ってる感じがしますね」

と、ガオ。

「それは当たり前よ。雑誌記者は何でも知ってないと、使い物にならないもの。それに、女は割りと細かいものなの。ま、人間によるけどね」

と、アミは嬉しそうに話す。

「なんか・・・やっぱり、大人の女性って、頼りになりますね・・・じゃあ、明日の10時に俺、ミサさんに電話します。それと・・・」

と、ガオは言い淀む。

「なあに?何でもいいから言ってごらん?わたし、あなたを、取って食うわけじゃないんだから」

と、アミは機嫌よく、言う。

「あのー、ミサさんをおびき出す前に、僕とアミさん、一度顔を合わせる必要があるんじゃないかなって思って・・・明日昼に一緒にランチでもしてもらえませんか?」

と、ガオは言う。

「それもそうねー・・・じゃあ、明日午後いっぱい、お姉さんと、デートでもしようか。あうんの呼吸をつくらないといけないし、ね」

と、ノリノリのアミだったりする。

「あ、ありがとうございます・・・じゃあ、明日11時に、横浜の京浜東北線の石川町駅の南口改札で、待ち合わせましょう」

「元町に、ちょっと良い感じの創作フレンチのレストランがあるんで・・・ランチをごちそうさせてください」

と、ガオは言う。

「元町かー、いいわねー。じゃあ、午後は横浜の山手で、デートね・・・わたし好きなエリアなんだ・・・あのあたり」

と、アミは、言う。

「「港の見える丘公園」も、行こうかー」

などと、アミは半分夢ここち。

「とにかく、あのあたりは・・・鈴木にいろいろ教えてもらって・・・そのー、アイリさんと鈴木が始めてキスしたのも、その「港の見える丘公園」だとか・・・」

と、言わずもがな、な情報を教えるガオだった。

「え?アイリとタケルくん、ファーストキスの場所、「港の見える丘公園」なの?」

と、激しく反応するアミ。

「まあ、いいわ。明日11時ね。じゃ!」

と、突然切れる電話。


「あれ、いらない情報だったな・・・」

と、苦笑するガオ。

「いずれにしろ、10時前には、アパートを出なきゃ・・・ということは、リサさんの家には、朝の9時に電話しよう・・・」

と、臨機応変に対応するガオだった。

「しかし・・・なんかリョウコちゃんにあの場所で会ってから、毎日めまぐるしいくらい新しい出会いがあるな、俺・・・」

と、ガオ。

「今年のクリスマス・シーズンは、ひょっとして、当たり年かも・・・」

と、少しニヤつきながら走るガオだった。


クリスマスイブ6日前の日曜日の朝、8時頃。アイリは、ダイニングテーブルで、ひとりでホワイトソースのパスタの朝食を食べていた。

レタスにトマトとオニオンスライス、サラダビーンズに、レモン・ドレッシングをかけた野菜サラダをシャクシャクと食べながら。

暖かいミルクが口にやさしい。


マキとアミは、昨日、泊まるには泊まったが、朝の6時過ぎに、二人共起きて、シャワーを浴びて頭を洗ってから、

「日曜日を精一杯楽しむ為に」

それぞれ帰っていった。


「二人共元気だな」

と、アイリは思ったが、

「そっか、クリスマスイブ前の最後の日曜日だもんね。今日は」

と、納得した。

そんなアイリにも今日は予定が入っていた。


それは、タケルがまだ、日本にいた11月の中旬に遡る・・・。

土曜日の夜、タケルとアイリは、アイリのマンションで楽しく夕食をとっていた。

白ワインを飲みながら、ご機嫌のタケルは、何かを思い出したように、アイリを見る。

「なあに、タケル・・・言いたいことがあったら、何でも言って?私に出来ることなら、何でもやるから」

と、アイリはやさしく言った。

「いやあ、実は、僕のいとこに、17歳の女の子がいるんだ。優ちゃんって言うんだけどね・・・」

と、タケルは話しだす。

「子供の頃から僕にすごく懐いてくれてて・・・それはいいんだけど、未だに、本気で僕と結婚したいらしいんだ・・・」

と、頭を掻くタケル。

「17歳っていうと、高校生?」

と、アイリが聞く。

「ああ、清華女子の2年生」

と、割りと有名な女子高の名前をあげるタケル。

「まあ、僕もたまに、彼女とデートしてあげたから・・・それも悪いんだけど・・・彼女が中学生くらいの頃から、絵画館前のイチョウ並木で手を組んで歩いたりしてたから」

と、頭を掻きながら、タケルは話す。

「それはちょっと・・・女性の気持ちになったら、あこがれちゃうのは、仕方ないところだわー」

と、アイリは少し呆れ気味。

「ああ、俺も悪かったと思うよ・・・どうも俺は女性に対してサービス精神が旺盛すぎるところがある・・・勘違いさせるよな。それは・・・」

と、しきりに頭を掻くタケル。

「だが、話はそこで終わらない。むしろ、そこからなんだ・・・」

と、真面目な姿勢になるタケル。

「そんな風にして、僕が優ちゃんとデートしていた時、僕らの前に立ちはだかった男子がいたんだ」


同じ頃、イズミも華厳寮203号室で、起きだしていた。

彼は布団の上に座り込み、タバコに火をつけると、ゆっくりと考え込んでいた。

彼の手元には、昨日貰った、田中美緒(22)の電話番号がある。

「さて、どういうストーリーで、彼女に電話をかけるか・・・まずは、心を開いて貰わないといけないから・・・健康的な時間に電話をかけよう・・・」

と、イズミは考えていた。

「できれば、早いうちに・・・やはり昨日の今日がいい。そして、10時になると、なにかしている可能性があるから、その前、9時ちょっと過ぎ・・・このあたりだな」

と、イズミは決断する。

「内容は・・・もし彼女が、俺の推理通り、前の彼氏の復帰を待っているなら、それは無駄だ、ということを言わなければならないな。それでも、彼女は頑なに守るだろう」

と、イズミは推理する。

「そして、その態度も実は間違いだと指摘してあげればいい。正しいことをしていると考えている人間が、その誤ちを指摘された時、はじめて聞き耳を持つものだからな」

と、イズミは考える。

「ま、全体的に、その方向でいけば、いいだろう。あとは、臨機応変・融通無礙で行こう」

と、イズミはシナリオの方向性を決められてニヤリとなる。

「9時5分過ぎ・・・そのあたりがターゲットだな。さ、コンビニで朝飯調達してこよう」

と、ニッコリとしたイズミは、服を着替えて部屋を出ていった。


「それは、今月の始め、アイリがちょうど仕事でフランスに行っていた時だ」

と、タケルは続ける。

「僕は叔父に用事があって、日曜日に、優ちゃんの家に行ったんだ。優ちゃんは喜んでくれて、叔父が優ちゃんをランチに連れて行ってくれって言うもんだからね」

と、タケルは続ける。

「絵画館近くにあるカフェで優ちゃんとランチをしてから・・・彼女はすごい喜んでね・・・」

と、タケルは話す。

「わかるわ・・・高校2年生くらいだったら、そういうおしゃれなランチ、あこがれだもの・・・」

と、アイリはなんとなく恍惚とした表情。

「まあ、叔父さんは、優ちゃんを喜ばせたくて、そういうことを僕に頼んできたんだけど・・・まあ、それはいい・・・イチョウ並木の下を手を組んで歩いていたら・・・」

と、タケルはその時の風景を思い出しているよう。

「京王高校の2年の男子が、僕らの前に立ちはだかった。その男子は、僕に堂々と言った」

「「デートのところ、邪魔して、すいません。僕は京王高校2年の滝田祐と言います。彼女とは中学の頃、同級生でした」」

「と、彼はまず、僕に向かって言った。そして、次に彼は、優ちゃんに向かって言ったんだ」

「「僕は優ちゃんが好きだ。中学の時からずっと好きだった。でも、ずっと告白出来なかった。・・・でも、今告白しないと僕がダメになる。だから、告白する」」

「と、言った後、彼は僕に向かって言った」

「「だから、僕と勝負してください。僕が勝ったら、優ちゃんを俺にください!負けたら、男らしく、この考えを捨てます!」

「ちょっとかっこいいだろ?そう思わないか、アイリ」

と、タケルは嬉しそうに話す。

「うん、かっこいいね。その男の子。将来見込みのある男性だわ」

と、アイリもその言葉には、やられたよう。

「僕は即座に「よしいいだろう。その勝負受けてやる。だが、俺はこの子のいとこだし、結婚出来ないんだ。だから、その勝負は別の勝負にしよう」と言って」

「彼の連絡先を聞いて、その場は、解散としたんだ」

と、タケルは話す。

「そして、優ちゃんの反応を見たんだ・・・彼女は揺れていた・・・多分彼女は僕には隠し通せたと自信を持ってるだろうけど・・・彼女は明らかに揺れてた」

と、タケルは話す。

「だから、僕は後日、この祐くんと連絡を取って、後日会った。好感の持てる真面目な子だったよ。俺はイブに優にプレゼントと花束を渡しながら再度告白するよう提案した」

と、タケルは話す。

「彼の部屋で会ったから、そこで、予行演習まで、やった。告白のね・・・まあ、そこで良い感じになるまで、仕上げておいたから・・・」

と、タケルは話しながら、少しニヤリと笑う。

「イブの一週間前に、祐をアイリの部屋に行かせるから、レッスンつけてやってくれよ。まあ、祐には、「俺は今、こういう相手と恋愛しているんだ」って言ってあるから」

と、タケル。

「アイリくらいの美貌の大人のおんなに、告白の予行演習を見てもらえば・・・ま、祐も、男としてすんごく自信がつくはずだから・・・それお願いな」

と、タケルはしれっと言って笑った。


その日が今日だった。


「まったくタケルったら・・・サービス精神が旺盛なのはいいけれど・・・まあ、でも、イブに、少年の恋が成就するのなら、お姉さんも一肌脱ぎましょう!」

と、笑顔になるアイリだった。

「なんか、今年は、マキアミも恋絡みみたいだし・・・ラブの多いイブになるのかしらね・・・」

と、少し寒い窓の外を見る、アイリだった。


クリスマスイブ6日前の日曜日は、楽しく始まったばかりだった。


つづく

→物語の主要登場人物

→前回へ

→物語の初回へ

最新の画像もっと見る