趣味は読書。

気ままな読書記録と日々思うこと、備忘録

村上春樹さんに会いに 3

2013年05月17日 | 村上春樹
25分のスピーチの後、休憩無しで「公開インタビュー」へ。

会場は、ファンの熱気で暑いくらいで、
インタビューの前にジャケット脱いでおられました。
濃紺のTシャツに白紺のチェックの半そでシャツをお召しでした。

インタビュアーは、湯川豊さん。
デビュー以来の作品と内面の変化をたどっていきました。


「人間は、2階建ての家のようだ。
1階に玄関があり、リビングがあり、人が集まる場所である。
2階はそれぞれ個室に別れている。地下は、人々の記憶の残骸がある。
そして、地下2階・・・底がどこにあるのか分からない、
本当の人の心の奥底にある物語。」

「地下2階へは、下まで行く通路を見つけた人でないと行かれない。」

「地下1階の、記憶の残骸だけでも作品を作る事はできるけれど、
それは、温泉のお湯と、家庭風呂のお湯ほど温かさに違いがある。」

「地下2階へ降りていく作業は簡単ではないけれど、
ボクは、正気を保ったまま地下2階へ行きたいと思っている。」

「そこにある物語の主人公と共に体験していきながら、次はどうなるのだろうと
楽しみながら書いた小説である。」(最新作)

『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』に触れ、
最初は「世界の終り」と「ハードボイルド・ワンダーランド」の二つ作品だったが、
なかなか上手くいかず、結局一つの作品になったと。
「世界の終り」は、悪くはないが引きずりこむ力が足りないと思っているので
いつか書き直したいと思っていると、話されました。

『ねじまき鳥クロニクル』で重層的な世界を作ろうと試み、
書きながら主人公と共に壁抜けを体験したと。
そうして、さらに上のレベルに上がることができたと思うと話されました。

さらに『1Q84』では、初めて全部三人称で小説を書こうと試みたと。
それによって、描ける世界が格段に広がり、
感応する物語、共感を呼ぶ物語へと魂のネットワークを作りたいと、話されていました。


最初に、本来は自身の作品を読み返したり、
解説したりしないと明言されていたとおり、こんな風に胸のうちを明かすことは
好きではない事なのだと感じました。

尊敬する河合隼雄先生の魂に報いるため、公の場に出られたこと、
一つ一つに答える姿は、とても率直で正直な人柄がうかがえました。
イヤだと思うときには、嫌そうでしたし、
自分の感覚と違う部分には、明快に否定されていました。
インタビュアーに向かって、というよりも、
目の前のファンのために、ファンに向かって言葉を発していらっしゃいました。

「ちょっといいですか」と話を付け加えるように、
ファンに向かって、率直に、自分の言葉を伝えようとなさっている姿がありました。

まだまだたくさん話されていましたが、最後に
作家という仕事に対する矜持、手抜きをしないで物語を書いている事を
静かに、熱く語ってくださる姿がとても印象深く残っています。

まとまりなく長々書いてしまいました。
この日のことは、すぐに新聞やネットで記事になっていました。
ああ、そうそうこういうお話だったと読みながら感心してしまいました。
上手に要約されていますよね~

その場にいたものとしてできればその時の空気の熱さを、お届けできれば幸いです。。