むかし、ある村にきっちょむさんという面白い人がおったんだと。
ある日きっちょむさんが長者どんのところへ行くと、
長者どんは縁側で木のネズミをなでたりさすったりしておった。
長者「やあ、きっちょむか。どうじゃ、みてみろ。たいしたものじゃろう。」
と、さっそくねずみのほりものの自慢をはじめた。
きっちょむ「へえー」
と、きっちょむさんはネズミをみていたが、なんのことはない、汚れたただの木のねずみだ。
きっちょむ「こんなものをもったいぶって、宝物みてえに自慢するとは。ふふふ」
きっちょむさんはお腹の中で笑いながらこう言った。
きっちょむ「長者様、おらの家にもたいしたねずみの彫り物がごぜえますだ。」
長者「な、なんじゃと?勝手なことを言うでないよ。」
長者どんはびっくりしておこりだした。
きっちょむ「いいえ、長者様、うそじゃごぜえません。」
長者「そんならきっちょむ、あした持ってきて、みせるがいい。」
きっちょむ「へい、村の衆にはないしょで、こっそりお見せしますだよ。」
きっちょむさんは長者どんにそう約束してかえったと。
だども、きっちょむさんの家にそんな宝物などあるわけがない。
きっちょむ「さて、なあー。」かんがえていたが・・・・。
きっちょむさんはへやにとじこもると、夢中でねずみを彫りはじめた。
一晩中かかって,やっとぶかっこうなねずみを彫りあげた。
あくる日、きっちょむさんはできあがったねずみをもって、長者どんのところへ行った。
きっちょむ「長者様、約束の宝物をもってまいりました。」
ちょうじゃ「おおそうか、みせてごらん。」
きっちょむさんはそうっと風呂敷をといて、ねずみを出した。すると、
ちょうじゃ「あっはっはっは。」
みたとたんに、長者どんはわらい転げた。
ちょうじゃ「きっちょむ、こんなねずみ、どこからみたって、ただのがらくたさ」
けれどきっちょむさんもまけてはおらん。
きっちょむ「いいえ、これはたからもののねずみでごぜえます。うそだと思われるなら、
ねこに両方のねずみを見せましょう。ねこの飛びついた方が、ほんものらしいねずみ。
だから勝ちでごぜえます」
ちょうじゃ「いいとも、きっちょむ。お前の方が勝ったら、わたしのねずみをやろう。」
さ~どっちが勝つか二匹のねずみがならべられた。
長者どんがねこをつれてきて、えんがわにはなした。
ねこは動かない。ぎろっと目を光らせ、じろっとねずみをにらんだ。
にゃおう!!ねこはひとこえなくと、
ぱっときっちょむさんのねずみにとびかかった。
きっちょむ「かったあー」
きっちょむさんはねこにとららないうちに、自分のねずみをとりあげると、
長者どんのねずみももらって、走り出した。
きっちょむ「えっへっへ」
とくいになってわらいながら、むちゅうですっとんで家にかえったと。
わらったはずだよ。実はきっちょむさんのねずみは木じゃなかった。
ねこの好きなかつお節で作ったねずみだったのさ。
ねこがとびついたのも当たり前。
きっちょむさんは持ってかえったじぶんおねずみを、こまかくけずって、
いえのねこにたべさせたんだと。
おしまい!
お楽しみいただけたでしょうか?シニア向けお話会で演じる紙芝居です。
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