ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

抑えられているだけに反発が強い

2024-05-21 07:54:54 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「良い面はあるけれど」5月14日
 植草学園大教授野澤和弘氏が、『言論の自由とは何か 危ういSNS投稿→「罷免へ」』という表題でコラムを書かれていました。その中で野澤氏は、『国会の弾劾裁判所はSNSの投稿を巡って仙台高裁の岡口基一判事を「罷免」とする判決を下した』ことを取り上げています。
 野澤氏は、岡口氏の『一連の行動には危うさを感じる』としながらも、『岡口判事の弾劾裁判による罷免を「問題裁判官のスキャンダル」というだけで済ませてしまうのは惜しい』『誰もが自由にネットに投稿できる時代である。ブレーキをかけ、規制をしようとしてもおのずと限界がある。どうすれば自由で健全な言論空間を作ることができるかを考えるべきである』と主張なさっているのです。
 考えさせられる提言です。確かに、野澤氏が指摘する通り、規制をしても現役裁判官とか、現役財務官僚などとして匿名で際どい見解を述べることを防ぐことは難しいでしょう。匿名ゆえの無責任感からかえって過激なことを書く者が増えそうですから、むしろ実名・肩書付きで語らせた方が、当事者ならではの、国民に対して貴重な情報提供が期待できるという見方もあり得ます。
 しかし、私は野澤氏ほど楽観的にはなれません。岡口氏がそうであったように、自分の投稿に多くのフォロワーが集まれば、『心理的な高揚感を覚え(略)SNS投稿にのめり込んでしまう』のは、万人に共通する心理です。そしてより多くのフォロワーを得ようと内容が過激化していくのは避けられません。その結果、フォロワーは増えても、裁判官なり財務省官僚なりに対する国民の不信感が高まることにつながっていくと考えるからです。
 そして私は、どうしても、教員についてはどうだろうと考えてしまいます。最近は、教員の働き方改革が注目されるようになり、匿名や仮名での現職教員のSNSでの発信が珍しくなくなりました。そのことで、教員の働き方改革に対する国民の議論が深まっているかと言えば、そうではないと言わざるを得ません。一方で、教員によるSNSが実質的に解禁状態になると、単なるうっぷん晴らしのような暴露・暴言系の投稿が増えることが予想されます。そしてそれは、教員に対する信頼を損なうことに結びついていくように思えてなりません。
 教員は、今も根強く世間に残る教職聖職論の下で、精神的に抑圧された状態にあります。それだけに、SNSを解禁すると、保護者や子供、管理職や教委、同僚教員などに対する人間的な不満が一気に爆発した状態になってしまう可能性が高いのです。
 少なくとも現状のSNSは実りある議論の場としては相応しくないように思えます。教員のSNS解禁は時期尚早だと考えます。

 

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