ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

嫌なあだ名で呼ばれ続けて

2013-04-22 07:52:18 | Weblog
「学校ではタブーだが?」 4月16日
 順天堂大学准教授兼陸上部女子監督の鯉川なつえ氏が、『ニックネームで呼ぼう』という標題でコラムを書かれていました。その中で鯉川氏は、『私は、女子の陸上部新入部員が自己紹介する際に「呼んでほしいニックネーム」を聞くようにしている』と書かれています。『「○○さん」と呼ぶのではよそそそしい』し、『名字を呼び捨てにするのは、上から目線に感じられ、相手に威圧感を与える』からで、『ニックネームを使った方が親近感がわくし、たとえ叱るときであってもトゲがなくなる』とも述べていらっしゃいます。
 驚きました。なぜなら、学校では新規採用の教員に対して、教員が子供をニックネームで呼んではいけないと指導するからです。その理由は、子供の人権を尊重するということで、人権尊重教育推進校などでは、真っ先に言われる事項になっています。
 もう少し詳しく言うと、子供には呼ばれたくないあだ名で呼ばれることを拒否する権利があるという考え方が基本になっています。「デブ」とか「ゴリ」といったあだ名で呼ばれ傷つくことを防ぐということです。それならば、鯉川氏のいうように、一人一人が呼んでほしいニックネームを自己申告すればよいと言う人がいるかもしれませんが、それは学校の実態、いじめの実態を知らない人のたわごとにすぎません。
 いじめの「加害者」は、標的とした子供に「私はゴリと呼ばれたい、と先生に申し出なさいよ」と言い、自己申告させるでしょう。そうなれば、教員公認で合法的に「ゴリ」「ゴリ」と呼ぶことができるようになるのです。安心していじめることができるのです。
 私が新卒だったとき、担任した学級にWという女ボスがいました。彼女は自分と親しい女子のグループに、「みんなあだ名で呼び合おうよ」と言いました。みんなが、アッコとかヨッコなどの可愛らしい愛称を口にする中で、Kさんはクーチャンという愛称を自己申告しました。しかし、Wは、「あなたは色が黒いから『オズマ(漫画「巨人の星」で主人公のライバルとして対決する黒人選手の名前)よ』」と決めつけ、それが彼女の呼び名になってしまいました。未熟な教員であった私はそのことに気付かずに黙認していました。Kさんが「オズマなんて嫌だ」と私に訴えたのは、半年以上経ってからでした。私は、「何でもっと早く言わなかったの」と彼女を責めてしまいました。とんでもないダメ教員です。そのとき彼女が涙をこぼすのを見て、初めて私は、彼女の辛い気持ちに思い至ったのでした。本当に申し訳ないことをしたと今でも思っています。
 大学生になれば、いじめはないということなのでしょうか。私は、人間の集団にはいじめはつきものだと思っているのですが。
 なお、鯉川氏のコラムの中で是非小中高の教員にも心に刻んでほしい言葉もありました。『大学の講義では日常的に学生たちに敬語を使って話しかけるようにしている。すると、不思議と学生たちの返答も丁寧になる。「しゃべるなー」というより、「話をやめてください」と言った方が静かになる。人は相手の言葉遣いに対応するということがよく分かる』というものです。教室で怒鳴っている教員はもちろん、普段話しているときにも「大声」の教員は、学級のうるささの原因が自分の声であるという可能性に思いをいたしてほしいものです。

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