今日のことあれこれと・・・

記念日や行事・歴史・人物など気の向くままに書いているだけですので、内容についての批難、中傷だけはご容赦ください。

山一證券が自主廃業を決定

2005-11-24 | 歴史
1997(平成9)年11月24日、山一證券が戦後最大の負債総額3兆円を抱え自主廃業を決定 。
野村、日興、大和とともに4大証券の一角を占め、創業100年の歴史をもつ、山一證券が経営破綻。自主的に廃業することを決めて、11月24日、大蔵省に届け出た。引き金になったのは資金繰りの悪化であったが、顧客の損失を転々とさせる俗に言う「飛ばし」が行き詰まり、山一自身が抱え込むことになって、膨大な簿外債務が出来たのが最大の原因であった。当事の山一證券の野沢正平社長は記者会見で、自主廃業と営業の休止を発表した後、テレビの前で「私らが悪いんです、社員は悪くございません。」と号泣し、頭を下げていた姿が今でも目に浮かぶ。企業の社長が、臆面もなくテレビの前で泣く姿は見ていても、面白くないね~。
1997(平成9)年という年は、日本の資本主義の根幹を揺るがした年であるが、その頂点に達したのが11月であった。11月3日には、準大手証券の三洋証券が会社更生法の適用を申請して倒産。11月17日には、日本の都市銀行では初めてとなる北海道拓殖銀行が経営破綻。そして、7日後の11月24日、四大証券の一角である山一の自主廃業を届出のニュースは、日本列島に衝撃が駆け抜けた。翌日には、全国の山一證券各支店に解約などを求める顧客が詰め掛けたほか、破綻したわけでもない大手や地方銀行の一部にも預金の解約を求める長い列が出来た。政府関係者や日銀総裁などが国民に冷静な行動を呼びかけるなど、正に、平成恐慌を思わせる状況であった。
この山一證券は、、1965(昭和40)年にも「山一危機」という新聞報道が発端で解約騒ぎが起こり、倒産の危機を迎えたことがあり、当時大蔵大臣であった田中角栄は、昭和初めの金融恐慌の再来となることを懸念し、日銀の特別融資を行い事態を収拾したことのある会社である。
兎に角、この山一證券の倒産が社会に及ぼした影響は非常に大きい。今まで、安全神話のあった大手金融機関が破綻し、政府が銀行は大手でも助けないとの意思を明確にした事件だからだ。この後、前社長などが逮捕されたが(飛ばしなどで)、日本の企業と総会屋の癒着問題、監査をしている公認会計士と企業との馴れ合いなど諸々の問題が次々と表面化し、これ以降、金融の混乱が日本初の世界恐慌になるのを恐れた政府は、住宅金融専門会社(住専)以来、タブーとなっていた、「公的資金」の投入を決断することとなった。そして、その後、大手銀行などを核とした合併や倒産などの金融大再編へとつながり今日に至っている。しかし、今年に入っても、カネボウ旧経営陣による粉飾決算事件で、会計監査を担当した中央青山監査法人の公認会計士4人が、不正に加担した疑いで9月13日に逮捕された事件が発生している。中央青山監査法人によるカネボウの監査は、中央監査法人と青山監査法人が2000(平成12)年に合併するずっと以前、中央監査法人時代の1973年まで遡れるという。この中央青山監査法人は、担当した山一證券やヤオハンジャパンの粉飾決算が刑事事件となっているほか、破綻した足利銀行の監査を巡り、今年(2005年)1月には金融庁から戒告処分を受けている。検察は「馴れ合いの監査」を暴きだした形である。
今、日本では、銀行に預けてもただのような金利しか貰えず、それに不満を持つ人たちや団体の資金は、株式投資に向かっており、今、やっと、日本の株式市場は、今まで余り市場に関心のなかった人たちや団体などからの注目を集めようとしている。このような株式投資において、もっとも注目されるのが企業の決算情報であるが、その決算情報の適正さを証明している監査法人が、企業と馴れ合いで、いい加減な「監査証明」を出しているということは、企業と一緒になって、投資家を欺き、投資家に莫大な損失を与えるものであり、これは当然に犯罪行為である。そして、株式市場そのものの信頼性を失い、これからの日本経済にも多大な影響を与えることになる。しかし、私も、現役の頃、企業の決算には深く係わっていたこともあり、今の日本の大手監査法人の監査の状況や、企業の決算に対する姿勢などもそこそこ承知しているが、企業と監査法人の「馴れ合い」関係は、決して珍しいことではないと思っている。問題点として、監査をする担当者が同じ企業の監査を長年続けている・・といった問題が指摘されているが、問題の本質は、そのようなものではなく、今の会計監査のあり方に構造的矛盾があるのである。つまり、関与先の決算の妥当性を監査する立場にありながら、監査法人は、関与先から監査報酬を受け取るため、関与先が監査法人から見て顧客の立場でもあるという矛盾である。だから、難しいことを言う監査法人はもう契約しないと契約を解除されても仕方がない弱い立場なのである。このような基本的な問題は、今までのも指摘されながら、いまだに改善されていない。
そして、又、日本の「商法上」にも矛盾がある。商法上の資本金の大きな大会社などでは、会計を会計の専門化である会計監査人が監査し、株主総会で選任された企業の監査役は、取締役(会社社長)の職務の執行状況を法に触れる様なこともなく適正に行っているか、又、決算の状況は株主総会に提出される決算書に正しく表示されているか、その決算書は、監査をする会計監査人(監査法人)が、適正であることを確り監査しているかを監査することになっている。しかし、企業の監査役に、会計監査人の監査が適正であることを監査できるだけの能力を持った人がどれほどいるだろうか?又、この商法上選ばれた監査役ですら、株主総会での選任に於いては、会社が選んだ人を株主総会で承認しているだけであり、その監査役も報酬は会社から支払われているのである。どうして、報酬を支払ってくれている会社に言いたいことをいえるだろうか。このような問題は、昔から、問題があるたびに話題になるが、政府も法改正しようとしないし、企業も改めようとするところは少ない。今、世間では、厚生省他色々と公務員の団体の不正、不当な会計処理が指摘され始めているが、そのような団体の問題の発生も全て、この内部での監査・・・俗に言われる内部統制が機能していないことによるものであろう。これらを解決できないのは、日本人の体質的なものに問題があるのかもしれないな~・・・?
(画像は、記者会見で「私らがわるいのです」と涙声で訴える当時の経営者)
参考
山一證券ーWikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E4%B8%80%E8%AD%89%E5%88%B8
山一證券の破綻と株主被害 山一110番に電話殺到
http://www1.neweb.ne.jp/wa/kabuombu/members/1111.htm
中央青山監査法人公認会計士逮捕&内部統制強化への衝撃
http://nikkeibp.jp/style/biz/management/risk/050920_taiho/