A 「さて中央競馬も今年は残すところあと2日のみ。最後は何といっても有馬記念で、ディープインパクトのラストもまたやはり「飛ぶのか」という期待が高まっているが、その前に今年の中央競馬を振り返ってみよう。」
B 「まずはディープインパクトから行くか。始動は阪神大賞典から。ここでは問題なく勝って続いて春の天皇賞。」
A 「しかしながらこのレース、ディープは上がり33.5秒だったよ。長距離の天皇賞で33秒半ばの上がりってこれまで見たことがない。しかも坂の下りでスパートをかけたからなぁ。」
B 「リンカーンもよく追ってはきたんだが、明らかに性能が違いすぎた。ディープがいなければリンカーンも勝ってたレースだったのにな。」
A 「そして、ディープ伝説を一層際立たせたのが次の宝塚記念。何せ終日雨が降るコンディションだったし、果たして「飛べるのかな」と思ったファンも少なくなかったはず。しかし。」
B 「はっきりいって、天皇賞以上に強かった。3~4角でディープが上昇していったとき、場内から大きなどよめきが聞こえたもんな。結果は当然「圧勝」。これでもう国内でやるレースはない、あとは凱旋門賞制覇あるのみ、と思ったが・・・」
A 「その凱旋門賞だが、欧州の競馬マスコミは、「ディープをなぜ前哨戦で走らせないのか?」という疑問の声も上がった。しかし陣営は、そのような声に耳を貸さず、ぶっつけで凱旋門賞出走を決意。そして。」
B 「道中はうまく乗っていたような気がしたんだが、いつものディープではなかったね。フットワークが直線に入っても重い。するとレイルリンクに先に交わされ、さらにプライドにまで交わされた。しかしながら思うに、ディープの力からいって、直線で勝負をかけるよりは、フォルストレートで追い出し、直線に入ってビューンというような競馬をさせたほうがよかったのではないかとも思ってしまう。」
A 「ま、それが「できなかった」のは後述するが、「あの件」が絡んでたのかもしれない。」
B 「ジャパンカップは最後方からの競馬だったが、このレースも雨降りのコンディションながらも最後は「飛んで」一蹴したね。これで六冠を達成。あとはシンボリルドルフに続く「七冠馬」を達成するのみ。」
A 「ま、ハーツクライもいなくなったことだし、可能性としては高いね。しかし競馬だたら何が起こるかわからないが。さてハーツクライだが、こちらもよく頑張ったといえそう。」
B 「ハーツクライはとにかく今年の最大の目標はキングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドSと決めており、3月のドバイシーマクラシックはその前哨戦に位置づけられたが、完勝だった。」
A 「このレースは、欧州年度代表馬のウイジャボードや、今年の香港ヴァーズを勝ったコリアーヒル、さらにG1 5勝の名牝・アレクサンダーゴールドランなどが出走していてメンバー的にはなかなかの面子が揃ったけど、スタートからハナに立つと、道中ラクをさせ、追い出してからは他を大きく突き放したね。これらの面々でこの競馬ができるんだったら、キングジョージもかなりチャンスがあると思ったが。」
B 「キングジョージには昨年の凱旋門賞馬・ハリケーンラン、ドバイW杯覇者のエレクトロキューショニストも参戦し、「3強対決」とも見られ、一時は先頭に立ったんだが。」
A 「ま、ハリケーンの地力に最後はしてやられた、というところか。しかしレースの中身自体は大変興奮した。この時点では来年のキングジョージにまた挑戦すると橋口調教師は言ってたし、ジャパンカップでも打倒、ディープを期待されたわけだが。」
B 「喘鳴症じゃ仕方ないよな。但しハーツについては種牡馬での期待が大きい。何せ国際G1制覇はディープでさえ果たせなかったんだから。ひょっとするとハーツのほうがディープよりもいい仔を出すかもしれない。」
A 「さて3歳戦線だが、牡馬ではメイショウサムソン、牝馬ではカワカミプリンセスという強い馬が現れた。」
B 「サムソンはまさに根性の馬で、皐月賞の前哨戦のスプリングSではドリームパスポートを抜き返し、皐月賞ではドリームの猛襲を退けた。そして日本ダービーでは逃げるアドマイヤメインを直線半ばで捕らえて完勝。秋緒戦の神戸新聞杯も内容自体は悪くなかったし、三冠馬は濃厚と見られたが。」
A 「しかしながら菊花賞では、アドマイヤメインがガンガンハイペースで飛ばしたばかりか、サムソンは宿敵・ドリームにぴったりとマークされ、さらに後方一気のソングオブウインドに追い込まれてしまった。まさにサムソン包囲網にかかってしまい、この馬の持ち味がまるで発揮できなかった。」
B 「カワカミプリンセスはデビューが遅くて桜花賞には間に合わず、オークストライアルのスイートピーSを勝って漸く本番への出走にこぎつけたわけだが、その本番では、道中じっと我慢して直線半ばで抜け出して、ミスオンワード以来49年ぶりの無敗のオークス馬の誕生となった。」
A 「秋華賞でも3~4角でおっつける形の競馬でかなり内容的には厳しいものとなったにもかかわらず勝って全勝をキープしたし、エリザベス女王杯は外回りコースになるから、まずこの馬で問題ないと見られたが。」
B 「1着では到達したが、やはり本田騎手もムリをしたと言ってたね。まさかの形で全勝記録が途絶えてしまった。」
A 「ダイワメジャーが秋の天皇賞、マイルCSと連覇したが、この連覇はニッポーテイオー以来19年ぶりの快挙だったそうだ。」
B 「この馬は最後の決め脚はないが、道中好位置を回ると絶対に崩れないね。そして着差はそんなに広がらないんだが、結果的にこの馬には勝てない、という話になってしまう。ダンスインザムードがとうとうこの馬には一度も先着できなかったが、ほとんど差のない競馬ばかりだった。」
A 「他を振り返ってみてどうだろう?」
B 「そうだね。阪神ジュべナイルフィリーズを勝ったウオッカ。この馬は相当に強い馬になりそうな気がしたね。アストンマーチャンの早めのスパートを長いストライドで一蹴したし、2歳牝馬にしては上々すぎる走り。朝日杯に出ていても勝ってたかもしれない。」
A 「安田記念、スプリンターズSは外国勢にやられてしまった。特にスプリンターズSは2年続けて外国勢の勝利。JRAが「根幹」としているといってもいい短距離戦線だが、逆に外国勢にさらわれる結果となっては、今後も気になるところ。」
B 「スプリンターのレースはとにかく逃げる馬が育たないことには勝つのは難しいだろうね。ところが今、日本の馬にはそういったタイプがいない。差す競馬でばかり決まってしまっていたんでは、今年のテイクオーバーターゲットみたいな馬が出てくるとちょっと厳しいだろうね。」
A 「1861年創設で、豪州ではこのレースの開催日には国の動きを止めてしまうとも言われる南半球最大のレース、メルボルンカップに2頭の日本馬が参戦したが、なんとワンツーを決めた。」
B 「デルタブルースは日本では少々スランプに陥っていて、春の天皇賞でも惨敗を喫したが、環境的にも豪州はあっていたのかもしれない。コウフィールドカップでも差のない3着だったし、メルボルンCではスタートからポンといって最後までレースを牽引してたからね。それにしてもよく勝ったよ。」
A 「ポップロックもものすごい脚を繰り出してきたし。何せ、このレースは外国勢は全く歯が立たないレースとして名が通っていた。それなのに日本勢ワンツーだからなぁ。快挙といっていいな。」
B 「さてディープインパクトの禁止薬物使用の件について触れたいと思う。結果的にディープは失格、池江調教師には最高額となる罰金刑が課され、結果的に2ヶ月にも及ぶフランス滞在とは何んだったんだろう、ということにもなったわけだが。」
A 「ま、理由もはっきりいって釈然としないし、そもそも、イプラトロピウムの体内残留期間については事前に現地の医師から支持を受けていたというんだろ。某週刊誌が、「あれは故意にやった」という記事を書いていたが、そう取られてもおかしくあるまい。」
B 「とにかく、凱旋門賞の2週間前あたりからディープのコンディションは最悪の状態となり、このままでは日本へとんぼ返りするだけになるかもしれない、というような形になるかもしれない恐れがあったということも考えられたし、苦肉の策として、イプラトロピウムを投与し続ける他なかったのかもしれないな。」
A 「それと禁止薬物使用にかかる解釈の違いというものについても考えられさせた。しかし、イプラトロピウムも、体内残留期間外であれば別にフランス国内においても使用してもいいという理屈も成り立つ。確かドバイワールドカップにおいて2着に入ったブラスハットが体内残留期間以前に使用をやめたにもかかわらず陽性反応が出た件もあったが、ブラスハットの場合は環境の変化によるところが大きいとされている。2ヶ月間も滞在していればその地になじめているはずであり、どう考えてもいまだ「匂ってくる」。」
B 「とにかく、馬には何の責任もない。悪いのはスタッフ。明らかに日本競馬界に汚点を残したという点において、今後も他山の石とせねばならない出来事だった。」
A 「あとは降着の件について触れてみようか。エリザベス女王杯で、カワカミプリンセスがJRAのG1レースとしては91年の秋の天皇賞のメジロマックイーン以来、15年ぶりに1着入線馬が降着となった。」
B 「ま、ヤマニンシュクルが完全に立ち上がる状況になってしまったし、降着は仕方ない。しかしながら、それ以前にも「取らねばならない」レースはあったよな。」
A 「ついこのレースの前に行われた秋の天皇賞では、勝ったダイワメジャーがスタート直後にサクラメガワンダーの内田博幸騎手を完全に煽らせていたシーンがNHKで何度もリプレイ放映されたし、4年前のNHKマイルカップのテレグノシスについてはタイキリオンを落馬寸前にまで追い込んだ。」
B 「でも、そうしたことがあっても降着にはされなかった。ところが実は直前に行われた川崎のJBCでも、マイル・クラシックともに1着馬が審議対象となった。クラシックでは、被害を受けたとされるマズルブラストの酒井忍騎手が、「岩田!狭い!」と道中警告したという話まで出た。」
A 「となるといよいよ?追い詰められていた、ということか?一方でJRAの裁定については、特定の騎手に対してかなり取るか取らないかで差があるという話も聞くが。」
B 「ま、そのようなことはないとは思うんだが、とにもかくにも、ダメなプレーをやった場合については絶対に許しちゃいかんよ。ところでエリザベス女王杯の裁定については概ねファンは評価していた。つまり、「ああ仕方ない」といったものだった。以前なら、「暴動が怖い」などと考えるふしもあったんだろうが、ダメなものはダメ、と毅然とした態度で接していれば何ら問題ない。したがって、判定については客の顔をうかがうみたいなことは絶対にするな、ってことは改めて強調しておきたいね。」