幼児にスマホ “週5日以上利用”2割近く 民間調査【注意点は】 NHK 2025年6月27日 6時05分
保護者が育児などの目的で幼児にスマートフォンを週5日以上利用させている割合が、2割近くに上るという調査結果を民間の研究所がまとめました。専門家は「スマホを適切に使うため、家庭でのルールづくりを進めてほしい」としています。
保護者はスマホとどう向き合えばいいのか、専門家のアドバイスを記事の後半に掲載しています。
この調査は、民間の研究所がことし3月にインターネットを通じて行い、0歳から9歳の子どもをもつ母親6500人以上から回答を得ました。
それによりますと、週5日以上、保護者がスマホを利用させている割合は、1歳から6歳の幼児が17.8%、7歳から9歳が31.8%に上りました。
メリットについては、「子どもが学んだり楽しんだりできる」といった回答があった一方、デメリットとして「目や健康に悪い」といった回答もあったということです。
一方で、スマホの利用について、時間の長さや内容の確認など何らかのルールを決めているという家庭は、9割以上に上りました。
調査したベネッセ教育総合研究所の高岡純子主席研究員は「乳幼児のスマホ利用の背景には、共働きで忙しい母親が増えていることや知育アプリなど育児に有効なツールが増えたことなどがある。利用の長時間化を防ぐため、家庭でルールを設けたりフィルタリングを活用したりするなどの工夫が必要だ」と指摘しています。
スマホで育児する母親は
都内に住む33歳の母親です。
2歳の息子と0歳の娘を育てていますが、日中は夫が不在のため「ワンオペ」で育児することが多く、毎日1時間ほど2歳の息子にスマホで動画を見せているといいます。
この日も0歳の娘を寝室で寝かそうとしましたが、2歳の息子もぐずり始めたため、スマホを渡して動画をみてもらっている合間に娘をあやしに行きました。
母親は「下の子の面倒を見る間は息子に構ってあげられません。後ろめたさはありつつも、スマホに頼ってしまうところが多いです」と打ち明けました。
また、母親はスマホを使った育児の難しさも感じています。
夕食の際、動画に見入っている息子に何度注意をしてもスマホを手放さなくなったといいます。
そこで、最近はスマホの一日の利用時間を制限するとともに、なるべく親子で一緒に遊ぶ時間を確保するよう努めているということです。
母親は「息子ぐらいの年齢の子どもは自制は効きません。できるかぎり私が遊び相手をして、子どもがスマホ依存にならないように気をつけたいと思っています」と話していました。
【Q&A】保護者はスマホとどう向き合えば?
動画(16秒)
育児をする保護者は、スマホとどう向き合えばいいのか。
乳幼児のメディア利用に詳しいベネッセ教育総合研究所の高岡純子主席研究員にアドバイスをもらいました。
Q. スマホ育児の広がりの背景は?
A. 背景の一つには、共働き世帯の増加で忙しい保護者が増えていることがあげられます。
保護者自身が子どもの相手ができないとき、たとえば、家事の合間や外出の際に、スマホを見せてあやすケースも多いと思います。
もう一点は、乳幼児向けの遊びや学びのアプリの種類が増えたことがあげられます。
最近は子どもが5歳ぐらいになると就学前の学びの準備として積極的にアプリを使わせる保護者も増えています。
(記者が取材すると、歌や動画で楽しみながら英語を学んでもらうためにスマホを活用しているという事例もありました)
また、乳幼児の親にデジタルネイティブ世代が増えていることも関係しています。
親世代が、日頃からスマホやタブレットから情報を入手する世代のため、子どもにスマホを使わせることへの抵抗感が薄れているのではないかと考えられます。
Q. 乳幼児への影響は?
A. いまのところスマホの利用がどのように子どもの発達に影響するのか、はっきりとした因果関係はわかっていません。
ただ、今回の調査でスマホなどを子どもに見せていると答えた保護者からは、メリットとして、学んだり楽しんだりできる、歌や踊りを楽しめる、学習に役立つ、知識が豊かになる、などといった回答がありました。
また、デメリットとしては、目や健康に悪い、有料サイトや危ないサイトへアクセスする可能性がある、運動不足になる、生活リズムが乱れるなどといった回答がありました。
やはり、スマホを使いすぎて外遊びや親子でのコミュニケーションが減ってしまうのは好ましくありません。
スマホを見ること自体が悪いわけではなく、生活の中でバランスをとって上手に使うことが大切です。
Q. 注意点は?
A. 最初は、親が忙しい時におとなしくしてほしいからとスマホを見せ始めることがあると思いますが、子どもはそうやってスマホのコンテンツにだんだん夢中になっていきます。
いつの間にか親のコントロールがきかなくなり困っているという保護者からの声もたくさん届いています。
乳幼児のスマホの利用時間はそれほど長くないので深刻な依存になるケースは多くはないと思いますが、好きなものをいくらでも制限なく見られる状況が続くと、利用の長時間化につながるおそれがあるため注意が必要です。
また、スマホを長時間見てしまう背景には、コンテンツの影響もあります。
2歳ぐらいから自ら視聴するコンテンツを選ぶようになると言われ、一度見始めると途中でやめることができなくなってしまうこともあります。
そういった際には保護者がスマホをやめるよううまく促すことも必要です。
Q. 家庭でできる対策は?
A. まずは家庭でルールを決めることが大切だと思います。
たとえば夕食が終わったあとに30分だけスマホを見せる時間を設けるなど幼少期のうちから、スマホを生活習慣の中にうまく取り入れていくことを検討してもらえるといいかと思います。
ルールを守ることを習慣化することで自分の行動を制御できるようになることは子どもにとって大切なことでもあります。
ルールを決める際には、使う時間の長さや内容、それに姿勢などについてそれぞれの家庭で無理のない範囲で設定してもらうのがよいと思います。
また、子どもが幼いうちはできるだけ保護者も一緒にスマホを見てもらい、わからない単語が出てきたら解説を入れるなど、なるべく親子で一緒に使う機会をつくるようにしてもらいたいです。
小さいうちから上手にスマホを使って知識を広げていけるようなメディア観を育てていけるとよいと思います。
一方で、親自身もスマホを見る時間があると思いますが、その影響で子どもとのコミュニケーションに支障がでていないか、改めて振り返ってみてください。
子どもと話している最中でもついスマホの画面を見てしまうといったことが何度も起きると親子関係に影響してしまうので、親自身もスマホの使い方をこの機会に見直し子どもと日頃から向き合う時間をしっかり確保してもらえるといいなと思います。
保護者が育児などの目的で幼児にスマートフォンを週5日以上利用させている割合が、2割近くに上るという調査結果を民間の研究所がまとめました。専門家は「スマホを適切に使うため、家庭でのルールづくりを進めてほしい」としています。
保護者はスマホとどう向き合えばいいのか、専門家のアドバイスを記事の後半に掲載しています。
この調査は、民間の研究所がことし3月にインターネットを通じて行い、0歳から9歳の子どもをもつ母親6500人以上から回答を得ました。
それによりますと、週5日以上、保護者がスマホを利用させている割合は、1歳から6歳の幼児が17.8%、7歳から9歳が31.8%に上りました。
メリットについては、「子どもが学んだり楽しんだりできる」といった回答があった一方、デメリットとして「目や健康に悪い」といった回答もあったということです。
一方で、スマホの利用について、時間の長さや内容の確認など何らかのルールを決めているという家庭は、9割以上に上りました。
調査したベネッセ教育総合研究所の高岡純子主席研究員は「乳幼児のスマホ利用の背景には、共働きで忙しい母親が増えていることや知育アプリなど育児に有効なツールが増えたことなどがある。利用の長時間化を防ぐため、家庭でルールを設けたりフィルタリングを活用したりするなどの工夫が必要だ」と指摘しています。
スマホで育児する母親は
都内に住む33歳の母親です。
2歳の息子と0歳の娘を育てていますが、日中は夫が不在のため「ワンオペ」で育児することが多く、毎日1時間ほど2歳の息子にスマホで動画を見せているといいます。
この日も0歳の娘を寝室で寝かそうとしましたが、2歳の息子もぐずり始めたため、スマホを渡して動画をみてもらっている合間に娘をあやしに行きました。
母親は「下の子の面倒を見る間は息子に構ってあげられません。後ろめたさはありつつも、スマホに頼ってしまうところが多いです」と打ち明けました。
また、母親はスマホを使った育児の難しさも感じています。
夕食の際、動画に見入っている息子に何度注意をしてもスマホを手放さなくなったといいます。
そこで、最近はスマホの一日の利用時間を制限するとともに、なるべく親子で一緒に遊ぶ時間を確保するよう努めているということです。
母親は「息子ぐらいの年齢の子どもは自制は効きません。できるかぎり私が遊び相手をして、子どもがスマホ依存にならないように気をつけたいと思っています」と話していました。
【Q&A】保護者はスマホとどう向き合えば?
動画(16秒)
育児をする保護者は、スマホとどう向き合えばいいのか。
乳幼児のメディア利用に詳しいベネッセ教育総合研究所の高岡純子主席研究員にアドバイスをもらいました。
Q. スマホ育児の広がりの背景は?
A. 背景の一つには、共働き世帯の増加で忙しい保護者が増えていることがあげられます。
保護者自身が子どもの相手ができないとき、たとえば、家事の合間や外出の際に、スマホを見せてあやすケースも多いと思います。
もう一点は、乳幼児向けの遊びや学びのアプリの種類が増えたことがあげられます。
最近は子どもが5歳ぐらいになると就学前の学びの準備として積極的にアプリを使わせる保護者も増えています。
(記者が取材すると、歌や動画で楽しみながら英語を学んでもらうためにスマホを活用しているという事例もありました)
また、乳幼児の親にデジタルネイティブ世代が増えていることも関係しています。
親世代が、日頃からスマホやタブレットから情報を入手する世代のため、子どもにスマホを使わせることへの抵抗感が薄れているのではないかと考えられます。
Q. 乳幼児への影響は?
A. いまのところスマホの利用がどのように子どもの発達に影響するのか、はっきりとした因果関係はわかっていません。
ただ、今回の調査でスマホなどを子どもに見せていると答えた保護者からは、メリットとして、学んだり楽しんだりできる、歌や踊りを楽しめる、学習に役立つ、知識が豊かになる、などといった回答がありました。
また、デメリットとしては、目や健康に悪い、有料サイトや危ないサイトへアクセスする可能性がある、運動不足になる、生活リズムが乱れるなどといった回答がありました。
やはり、スマホを使いすぎて外遊びや親子でのコミュニケーションが減ってしまうのは好ましくありません。
スマホを見ること自体が悪いわけではなく、生活の中でバランスをとって上手に使うことが大切です。
Q. 注意点は?
A. 最初は、親が忙しい時におとなしくしてほしいからとスマホを見せ始めることがあると思いますが、子どもはそうやってスマホのコンテンツにだんだん夢中になっていきます。
いつの間にか親のコントロールがきかなくなり困っているという保護者からの声もたくさん届いています。
乳幼児のスマホの利用時間はそれほど長くないので深刻な依存になるケースは多くはないと思いますが、好きなものをいくらでも制限なく見られる状況が続くと、利用の長時間化につながるおそれがあるため注意が必要です。
また、スマホを長時間見てしまう背景には、コンテンツの影響もあります。
2歳ぐらいから自ら視聴するコンテンツを選ぶようになると言われ、一度見始めると途中でやめることができなくなってしまうこともあります。
そういった際には保護者がスマホをやめるよううまく促すことも必要です。
Q. 家庭でできる対策は?
A. まずは家庭でルールを決めることが大切だと思います。
たとえば夕食が終わったあとに30分だけスマホを見せる時間を設けるなど幼少期のうちから、スマホを生活習慣の中にうまく取り入れていくことを検討してもらえるといいかと思います。
ルールを守ることを習慣化することで自分の行動を制御できるようになることは子どもにとって大切なことでもあります。
ルールを決める際には、使う時間の長さや内容、それに姿勢などについてそれぞれの家庭で無理のない範囲で設定してもらうのがよいと思います。
また、子どもが幼いうちはできるだけ保護者も一緒にスマホを見てもらい、わからない単語が出てきたら解説を入れるなど、なるべく親子で一緒に使う機会をつくるようにしてもらいたいです。
小さいうちから上手にスマホを使って知識を広げていけるようなメディア観を育てていけるとよいと思います。
一方で、親自身もスマホを見る時間があると思いますが、その影響で子どもとのコミュニケーションに支障がでていないか、改めて振り返ってみてください。
子どもと話している最中でもついスマホの画面を見てしまうといったことが何度も起きると親子関係に影響してしまうので、親自身もスマホの使い方をこの機会に見直し子どもと日頃から向き合う時間をしっかり確保してもらえるといいなと思います。