
企業・団体献金を巡る首相の発言の変遷 Ⓒ読売新聞
石破首相の独断に自民党内で反発広がる…企業献金見直し巡り党内議論なく立憲民主へ接近 読売新聞 2025/08/08 05:00
企業・団体献金の見直しなどを巡り、自民党内で石破首相の独断に反発が広がっている。立憲民主党の提案に乗る形で党内議論を経ないまま方針転換を図ることに不満が相次いでおり、8日の両院議員総会は紛糾も予想される。(阿部雄太、樋口貴仁)
首相は7日、企業・団体献金の規制強化に向けた立民との協議について、首相官邸で記者団に「今後、 真摯しんし に議論していく」と前向きな考えを示した。自民の森山幹事長に献金の受け皿となる政党支部の実態調査をするよう指示したことも明らかにした。
一方、鈴木総務会長は7日の記者会見で、「企業献金は悪だと我が党は考えていない。透明性と公開が大事だ。我々の方針に揺らぎはない」と述べ、首相との温度差を隠さなかった。
参院選での惨敗を受けて党内で「石破降ろし」の動きが続く中、首相は野党第1党の立民に接近を図っている。自民議員が特に警戒感を強めているのが、企業・団体献金の見直しだ。
今年の通常国会では、立民や日本維新の会などが禁止を主張したのに対し、自民は献金を存続させた上で透明性を高める法案を提出した。7000以上の政党支部や多くの地方議員を抱える自民にとっては、政党支部への献金の可否は党の消長に直結するためだ。
公明党と国民民主党が、〈1〉寄付を受領できる政党支部を都道府県連に限る〈2〉同一団体への寄付を年間最大2000万円に制限する――といった規制強化案をまとめた際、首相は「自民として受け入れるのに非常に厳しいところがある」と慎重姿勢を示していた。
ところが、4日の衆院予算委員会で立民の野田代表から公国案を軸に協議を呼びかけられると、「党首同士で真摯な議論をすることに大きな意味はある」と答弁。発言内容は事前に自民幹部とすりあわせていなかった。
自民、立民両党の間で、首相と野田氏の党首会談を8日に行う方向で調整していたことも、自民内の反発に拍車をかけている。自民幹部は7日、「党首会談はなくなった。今やれば党が持たない」と語った。
一連の首相の動きに関し、自民関係者は「政治資金問題に取り組む姿勢をアピールし、退陣圧力をかわしたいのだろう」と解説する。首相に退陣を迫っている側には、旧安倍派など「政治とカネ」の問題で処分された議員も多く、厳しい姿勢を示せば世論の支持を得ることができる、というわけだ。
ただ、党内で政治改革の議論に携わってきた議員からは「首相の言動は、これまでの努力を無にするものだ」と批判の声が上がる。
首相は4日の衆院予算委で、消費税減税も協議対象に含めることにも同意しているが、自民税制調査会の幹部は「あり得ない」と不快感を示している。