
石破首相 自民議員に商品券「法的には問題なし」野党は追及 NHK 2025年3月14日 19時49分
石破総理大臣が、先週、会食した自民党の当選1回の衆議院議員の事務所に、1人10万円分の商品券を配っていたことがわかりました。
石破総理大臣は、会食の土産代わりに私費で用意したもので、政治活動に関する寄付にはあたらないなどとして、法的には問題はないと説明しました。
野党側は、石破総理大臣が出席して開かれる参議院予算委員会の集中審議などで追及していく方針です。
石破総理大臣は13日夜、記者団に対し、今月3日に総理大臣公邸で行った自民党の当選1回の衆議院議員15人との会食に先立って、出席議員の事務所に、1人10万円分の商品券を届けたことを明らかにしました。
政府関係者や出席議員によりますと、全員が返却したということです。
石破総理大臣は、商品券は会食の土産代わりで、議員の家族をねぎらう意図などもあったとしつつ「私自身の私費、ポケットマネーで用意した。政治活動に関する寄付ではなく、政治資金規正法上の問題はない。私の選挙区に住んでいる人はいないので公職選挙法にも抵触せず、法的には問題がないと認識している」と述べました。
自身の進退を問われたのに対しては、法律に抵触しないなどと繰り返しました。
与党内では「明らかに違法性はなく、問題はない」などと擁護する声がある一方「政治とカネの問題で批判が続く中、タイミングが悪く、新年度予算案の審議や政権運営への影響は避けられない」との見方も出ています。
一方、野党側は「法令違反の可能性が極めて高い場合は、辞任ということも十分ありえる話だ」「国民が物価高に苦しむ中、道義的にも許されない」などとしていて、14日に石破総理大臣が出席して開かれる参議院予算委員会の集中審議などで追及していく方針です。
石破首相「大勢の方々にご迷惑、ご心配」重ねて陳謝
石破総理大臣は14日朝、総理大臣官邸に入る際に記者団に対し、商品券は、出席議員の日頃の活動を慰労する意味などで私費で渡したと改めて説明した上で「政治活動に関する寄付では全くなく、政治資金規正法の問題にはあたらない。私の選挙区の人はいないので、公職選挙法に抵触するものでもなく、違法性はないと考えている」と述べました。
そのうえで「大勢の方々にご迷惑、ご心配をかけていることは、非常に申し訳ないと思っており、その点は、深くおわび申し上げる」と重ねて陳謝しました。
会食に出席の林官房長官「総理大臣が個人として会食 問題ない」
林官房長官は閣議のあとの記者会見で「石破総理大臣は『自民党総裁としてお土産代わりに家族へのねぎらいなどの観点から私費で用意したもので政治資金規正法上の問題はないし、公職選挙法にも抵触しない』、『大勢の方々に心配をかけお騒がせをしていることは申し訳ない』などと述べたと承知しており、閣僚懇談会のあとにもその旨の発言があった」と述べました。
また、記者団から林官房長官らも出席した今月3日の会食は政治活動にはあたらないのかと問われ「会合について石破総理大臣は『自民党総裁として本当に苦労をかけてすまなかったということで行ったもので政治活動とは関係のないものだ』と述べている。私や官房副長官はお声がけをいただいたので一(いち)自民党議員として参加した」と述べました。
さらに、政治活動の定義を問われ「法は特に定義規定を設けていないが、政治上の主義もしくは施策を推進・支持し、もしくはこれに反対し、または公職の候補者を推薦・支持し、もしくはこれに反対することを目的として行う、直接、間接の一切の行為をいうと承知している」と説明しました。
一方、会食が総理大臣公邸で行われたことに問題がなかったのかと問われ「総理大臣公邸は総理大臣が日常生活を行う住まいで、これまでも総理大臣が個人として会食を設けることは行われており問題はないと考えている」と述べました。
このほか「石破総理大臣は過去にも商品券を配布したとしているが、確認などの対応は検討するか」と質問されたのに対し、「個人としての行為について政府として答えることは控える」と述べました。
また、林官房長官は午後の記者会見で総理大臣公邸での会食の実施にあたり会場の設営や準備に総理大臣官邸などの職員が関係したかを問われ、「総理大臣公邸は総理大臣が日常生活を行う住まいとして総理大臣官邸事務所が管理している。職員が入退邸の管理や、電気、空調、家具を含む設備や備品など必要な管理業務を行っているが、今回の会合が行われた際に通常業務の範囲を超えた対応は行っていない」と述べました。
会食に出席の当選1回衆院議員「中身を確認し直ちに返した」SNSに
石破総理大臣との会食に出席した当選1回の衆議院議員は、旧ツイッターの「X」に投稿し、状況を説明しています。
このうち、大空幸星議員は「懇親会の翌朝に中身を確認し、直ちに石破事務所に伺いお返しした。地元を含め日頃応援していただいている方から多数のお問い合わせがあり、事実関係を説明した」としています。
向山淳議員は「私の事務所にも、私が不在の間に届けられていたようだが、後日中身を確認し、適切でないと考え返却した」としています。
根本拓議員は「事務所に届けられた物の中身が商品券のようだという話を聞き、石破総理大臣と一期生との懇親会の翌日に、開封しないままお返しした」としています。
このほか、会食に出席した議員の1人はNHKの取材に対し「明らかに商品券が包まれていると分かったので、数日後に返却した。こうしたものを配ることはどうかと思う」と話しています。また、別の議員は「中身を確認したら商品券だったので、すぐに秘書を通じて返した。迷惑でしかない」と話しています。
注目
専門家「儀礼の範囲を超えて違法な可能性もある」
【専門家 “儀礼の範囲超え違法の可能性ある”】
政治とカネの問題に詳しい駒澤大学法学部の富崎隆教授は、石破総理大臣が商品券を配ったことについて、「政治資金規正法では政治家の政治活動に対して、個人が現金やその他の金銭などによる寄付をすることは禁止されている。政治活動でない活動としてはたとえば土産物のような社会通念上一般的な、社交的なつきあいとしてのやり取りであれば多くのところで認められている。10万円分の商品券がそれに該当するかどうかがひとつの焦点となる」としています。
そのうえで、「さまざまな法的解釈があるが、1年生議員と首相の面会を社交的なつきあいでのやり取りだとするのは社会通念上の儀礼の範囲かというと疑問があり、範囲を超えて違法な可能性もあると思う」と指摘しています。
【「政治活動」の定義にグレーゾーン 認識し透明化を】
さらに、政治資金規正法の規定では「政治活動」の定義についてはっきりしない部分があるとしたうえで「こうしたグレーゾーンがあるということを石破総理大臣自身も認識していただかないといけないと思う。公私のしゅん別をして政治に関わるカネについて全面的に透明化することが、有権者の信頼に応える最も重要な方向性だ。与野党でも議論が進められているが、今回のケースが全体の制度設計をもう一度きちんと考える契機になってくれるといいと思う」と話していました。
【“政治とカネ”は期待された重要な論点 具体的対策を】
そのうえで「政治とカネの問題はまさしく石破政権に期待されていた重要な論点の1つだったはずで、民主主義に対する信頼を傷つける可能性もあるので、具体的な対策を早急に打ち出すことが必要だと思う」と話していました。
専門家「高額の商品券が社会通念上 お土産といえるのか疑問」
政治資金の問題に詳しい日本大学の岩井奉信名誉教授は「政治活動に明確な定義はないが、10万円という高額の商品券が社会通念上、お土産といえるのか疑問で、政治活動ではないという主張は一般に納得を得られるものとは言えないのではないか。金額などを踏まえても政治資金規正法上の処理をすべきだと思う。今回の行為が許されるならば政治献金の抜け穴になる懸念がある」と話していました。
14日 参議院予算委員会の答弁では
石破総理大臣は14日の参議院予算委員会で、みずからの政治的、道義的な責任を問われ、「政治は結果責任なので多くの人が不快な思いをし、怒りを持っていることには当然、責任を負うべきだ。『本当にありがとう』『すまないね』という気持ちを伝えたいと自分が思っていても世の中の人がそう思わないのであれば真摯に受け止め猛省する」と述べました。
また、「総理大臣という仕事をやって世間の皆さま方と遠くなってしまっているという反省をすごく持っている。いかにしてそういう感覚を失わないようにするかを改めて痛感した。猛省しなければならないし、感覚を失っていることを深く反省する」と述べました。
官房機密費が使われていないか問われたのに対しては「私費で行った。議員を40年近くやっているとそれなりに自由に使えるお金はある。官房機密費とかそういうものではない。亡くなった親の遺産もある」と述べました。
このほか、これまでにほかの会合などで商品券を配ったことがあるかと問われると、「金額はそれぞれ記憶していないが上回る額はなかったと覚えている。回数が何回か明確に答える資料は持ち合わせていないが、おそらく両手で数えて足りるか足りないかぐらいではないか」と述べました。
また、今月3日の総理大臣公邸での会食について、出席したのは当選1回の衆議院議員15人に加え石破総理大臣と林官房長官、それに橘官房副長官と青木官房副長官のあわせて19人だったと説明しました。
食事代もみずからが私費で支払ったとしたうえで、「正確な数字は申し上げられないが、お一人様1万5000円で、なるべく費用がかからないところで選定したと記憶している」と述べました。
また、自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題での処分を踏まえ、みずからの責任の取り方をどう考えているか問われ、「収支報告書への不記載の問題とは次元が違う話だと思っているが世の中の人が『これはおかしい』『常識とは違う』と思っていることは深く反省し以後、このようなことがないよう誠心誠意、努めていく」と述べました。
石破首相 自民議員に商品券 与党・野党は【反応まとめ】
注目
政治部記者の解説 今後の政権運営への影響は
Q.野党に加え、与党からも厳しい声が出ていますね。
A.そうですね。政府・与党は強い危機感を持っています。与党内からは「違法ではないかもしれないが、道義的責任はある」という指摘が相次いでいます。加えて新年度予算案は、高額療養費の見直しに伴って参議院で再び修正される見通しで、審議日程がただでさえ窮屈になっているだけに、「最悪のタイミングだ」と嘆く声も聞かれます。一方、野党側は、企業・団体献金の扱いなどを議論しているさなかでもあり、物価高に苦しむ国民の感情を逆なでするものだとして、厳しく追及する方針です。衆議院で予算案に賛成した日本維新の会は、賛否を含め改めて対応を協議するとしていまして、年度内成立は予断を許さない状況となっています。
Q.今後の政権運営への影響をどうみますか。
A.影響は避けられないと思います。石破総理は、総裁選挙でカネのかからない政治を訴えてきた経緯がありますし、去年の衆議院選挙では、収支報告書に不記載があった候補者の公認を見送るなど、厳しい対応をとってきました。それだけに自民党内からは、これまでの言動と整合性がとれないとして、進退に言及する議員も出ています。夏に参議院選挙を控え、党内の結束を保ち、信頼を回復できるのか、石破総理にとっては厳しい局面を迎えていると言えます。
市民団体 東京地検特捜部に告発状を提出「司法の判断を」
市民団体が政治資金規正法に違反する疑いがあるとして、東京地検特捜部に告発状を提出しました。
石破総理大臣が3月3日に総理大臣公邸で行った自民党の当選1回の衆議院議員15人との会食に先立って、出席議員の事務所に1人10万円分の商品券を配っていたことについて、市民団体は14日、個人が政治活動に関して政治家個人に寄付することを禁じた政治資金規正法に違反する疑いがあるとして石破総理大臣や受け取った議員の告発状を東京地検特捜部に提出しました。
市民団体は会見で「政治資金について国会で議論されているなかで総理が商品券を配ったのが不思議でならない。司法の判断を仰ぎたい」と話しています。
石破総理大臣はこれまでの説明で、政治活動に関する寄付にはあたらないなどとして、法的に問題はないという認識を示しています。
政治資金規正法の焦点は
政治資金規正法は、個人が政治活動に関して政治家個人に金銭や有価証券を寄付することを禁じています。
有価証券には株券や小切手、それに商品券などが含まれます。
一方、政治資金規正法の条文が禁じるのは「政治活動に関する寄付」についてで、これに該当しないものは対象外となります。
今回の商品券がどのような趣旨で提供され「政治活動に関する寄付」にあたらないのかどうかが焦点となります。
【ノーカット動画 11分49秒】13日夜 取材に応じる
石破総理大臣は13日夜、総理大臣公邸で記者団の取材に応じました。
「今月3日に自民党所属の当選1回の衆議院議員15人と会食したがそれに先立ち出席議員の事務所に商品券をお届けした。会食のお土産代わりに家族へのねぎらいなどの観点から、私自身の私費、ポケットマネーで用意をした」
「法律に抵触をするものではなく、そういう趣旨なので政治活動に関する寄付ではなく、政治資金規正法上の問題はない。また私の選挙区に住んでいる人はいないので、公職選挙法にも抵触しない。以上のようなことで法的には問題がないと認識している」
「大勢の皆様にいろいろとご心配をおかけをし、また、いろいろな思いを持たせているということについては大変申し訳ない」
「自民党総裁として苦労をかけてすまなかったということでこれは政治活動ではない」
(みずからの判断で商品券を渡したのかを問われ)
「他の誰からの指示に基づくものではない」
(自身の進退を問われ)
「これは公職選挙法にも政治資金規正法にも何ら抵触するものではない。『総裁としてご苦労をかけてすまなかった』ということであって、そのことをもってして法律に違反するものではない。法的には何ら抵触するものではないが、このことによってお騒がせしていることは申し訳ないということだ」
(「国民が物価高に苦しむ中、理解を得るのは難しいのではないか」と質問され)
「政府として物価高を上回る賃金上昇という形で応えられるよう努力している。議員になるまで何年も苦労してきたことへの慰労の意味もあったが、国民の思いに反することがあったとすれば、申し訳ない」
(「ほかの会合などでも同じように商品券を配ったことがあるか」と聞かれ)
「本当に苦労していただいている皆様方、ご家族の方々に対しても、一人一人、会食するわけにもいかないので、『ありがとう』という趣旨で、お渡ししたことはある」
石破総理大臣が、先週、会食した自民党の当選1回の衆議院議員の事務所に、1人10万円分の商品券を配っていたことがわかりました。
石破総理大臣は、会食の土産代わりに私費で用意したもので、政治活動に関する寄付にはあたらないなどとして、法的には問題はないと説明しました。
野党側は、石破総理大臣が出席して開かれる参議院予算委員会の集中審議などで追及していく方針です。
石破総理大臣は13日夜、記者団に対し、今月3日に総理大臣公邸で行った自民党の当選1回の衆議院議員15人との会食に先立って、出席議員の事務所に、1人10万円分の商品券を届けたことを明らかにしました。
政府関係者や出席議員によりますと、全員が返却したということです。
石破総理大臣は、商品券は会食の土産代わりで、議員の家族をねぎらう意図などもあったとしつつ「私自身の私費、ポケットマネーで用意した。政治活動に関する寄付ではなく、政治資金規正法上の問題はない。私の選挙区に住んでいる人はいないので公職選挙法にも抵触せず、法的には問題がないと認識している」と述べました。
自身の進退を問われたのに対しては、法律に抵触しないなどと繰り返しました。
与党内では「明らかに違法性はなく、問題はない」などと擁護する声がある一方「政治とカネの問題で批判が続く中、タイミングが悪く、新年度予算案の審議や政権運営への影響は避けられない」との見方も出ています。
一方、野党側は「法令違反の可能性が極めて高い場合は、辞任ということも十分ありえる話だ」「国民が物価高に苦しむ中、道義的にも許されない」などとしていて、14日に石破総理大臣が出席して開かれる参議院予算委員会の集中審議などで追及していく方針です。
石破首相「大勢の方々にご迷惑、ご心配」重ねて陳謝
石破総理大臣は14日朝、総理大臣官邸に入る際に記者団に対し、商品券は、出席議員の日頃の活動を慰労する意味などで私費で渡したと改めて説明した上で「政治活動に関する寄付では全くなく、政治資金規正法の問題にはあたらない。私の選挙区の人はいないので、公職選挙法に抵触するものでもなく、違法性はないと考えている」と述べました。
そのうえで「大勢の方々にご迷惑、ご心配をかけていることは、非常に申し訳ないと思っており、その点は、深くおわび申し上げる」と重ねて陳謝しました。
会食に出席の林官房長官「総理大臣が個人として会食 問題ない」
林官房長官は閣議のあとの記者会見で「石破総理大臣は『自民党総裁としてお土産代わりに家族へのねぎらいなどの観点から私費で用意したもので政治資金規正法上の問題はないし、公職選挙法にも抵触しない』、『大勢の方々に心配をかけお騒がせをしていることは申し訳ない』などと述べたと承知しており、閣僚懇談会のあとにもその旨の発言があった」と述べました。
また、記者団から林官房長官らも出席した今月3日の会食は政治活動にはあたらないのかと問われ「会合について石破総理大臣は『自民党総裁として本当に苦労をかけてすまなかったということで行ったもので政治活動とは関係のないものだ』と述べている。私や官房副長官はお声がけをいただいたので一(いち)自民党議員として参加した」と述べました。
さらに、政治活動の定義を問われ「法は特に定義規定を設けていないが、政治上の主義もしくは施策を推進・支持し、もしくはこれに反対し、または公職の候補者を推薦・支持し、もしくはこれに反対することを目的として行う、直接、間接の一切の行為をいうと承知している」と説明しました。
一方、会食が総理大臣公邸で行われたことに問題がなかったのかと問われ「総理大臣公邸は総理大臣が日常生活を行う住まいで、これまでも総理大臣が個人として会食を設けることは行われており問題はないと考えている」と述べました。
このほか「石破総理大臣は過去にも商品券を配布したとしているが、確認などの対応は検討するか」と質問されたのに対し、「個人としての行為について政府として答えることは控える」と述べました。
また、林官房長官は午後の記者会見で総理大臣公邸での会食の実施にあたり会場の設営や準備に総理大臣官邸などの職員が関係したかを問われ、「総理大臣公邸は総理大臣が日常生活を行う住まいとして総理大臣官邸事務所が管理している。職員が入退邸の管理や、電気、空調、家具を含む設備や備品など必要な管理業務を行っているが、今回の会合が行われた際に通常業務の範囲を超えた対応は行っていない」と述べました。
会食に出席の当選1回衆院議員「中身を確認し直ちに返した」SNSに
石破総理大臣との会食に出席した当選1回の衆議院議員は、旧ツイッターの「X」に投稿し、状況を説明しています。
このうち、大空幸星議員は「懇親会の翌朝に中身を確認し、直ちに石破事務所に伺いお返しした。地元を含め日頃応援していただいている方から多数のお問い合わせがあり、事実関係を説明した」としています。
向山淳議員は「私の事務所にも、私が不在の間に届けられていたようだが、後日中身を確認し、適切でないと考え返却した」としています。
根本拓議員は「事務所に届けられた物の中身が商品券のようだという話を聞き、石破総理大臣と一期生との懇親会の翌日に、開封しないままお返しした」としています。
このほか、会食に出席した議員の1人はNHKの取材に対し「明らかに商品券が包まれていると分かったので、数日後に返却した。こうしたものを配ることはどうかと思う」と話しています。また、別の議員は「中身を確認したら商品券だったので、すぐに秘書を通じて返した。迷惑でしかない」と話しています。
注目
専門家「儀礼の範囲を超えて違法な可能性もある」
【専門家 “儀礼の範囲超え違法の可能性ある”】
政治とカネの問題に詳しい駒澤大学法学部の富崎隆教授は、石破総理大臣が商品券を配ったことについて、「政治資金規正法では政治家の政治活動に対して、個人が現金やその他の金銭などによる寄付をすることは禁止されている。政治活動でない活動としてはたとえば土産物のような社会通念上一般的な、社交的なつきあいとしてのやり取りであれば多くのところで認められている。10万円分の商品券がそれに該当するかどうかがひとつの焦点となる」としています。
そのうえで、「さまざまな法的解釈があるが、1年生議員と首相の面会を社交的なつきあいでのやり取りだとするのは社会通念上の儀礼の範囲かというと疑問があり、範囲を超えて違法な可能性もあると思う」と指摘しています。
【「政治活動」の定義にグレーゾーン 認識し透明化を】
さらに、政治資金規正法の規定では「政治活動」の定義についてはっきりしない部分があるとしたうえで「こうしたグレーゾーンがあるということを石破総理大臣自身も認識していただかないといけないと思う。公私のしゅん別をして政治に関わるカネについて全面的に透明化することが、有権者の信頼に応える最も重要な方向性だ。与野党でも議論が進められているが、今回のケースが全体の制度設計をもう一度きちんと考える契機になってくれるといいと思う」と話していました。
【“政治とカネ”は期待された重要な論点 具体的対策を】
そのうえで「政治とカネの問題はまさしく石破政権に期待されていた重要な論点の1つだったはずで、民主主義に対する信頼を傷つける可能性もあるので、具体的な対策を早急に打ち出すことが必要だと思う」と話していました。
専門家「高額の商品券が社会通念上 お土産といえるのか疑問」
政治資金の問題に詳しい日本大学の岩井奉信名誉教授は「政治活動に明確な定義はないが、10万円という高額の商品券が社会通念上、お土産といえるのか疑問で、政治活動ではないという主張は一般に納得を得られるものとは言えないのではないか。金額などを踏まえても政治資金規正法上の処理をすべきだと思う。今回の行為が許されるならば政治献金の抜け穴になる懸念がある」と話していました。
14日 参議院予算委員会の答弁では
石破総理大臣は14日の参議院予算委員会で、みずからの政治的、道義的な責任を問われ、「政治は結果責任なので多くの人が不快な思いをし、怒りを持っていることには当然、責任を負うべきだ。『本当にありがとう』『すまないね』という気持ちを伝えたいと自分が思っていても世の中の人がそう思わないのであれば真摯に受け止め猛省する」と述べました。
また、「総理大臣という仕事をやって世間の皆さま方と遠くなってしまっているという反省をすごく持っている。いかにしてそういう感覚を失わないようにするかを改めて痛感した。猛省しなければならないし、感覚を失っていることを深く反省する」と述べました。
官房機密費が使われていないか問われたのに対しては「私費で行った。議員を40年近くやっているとそれなりに自由に使えるお金はある。官房機密費とかそういうものではない。亡くなった親の遺産もある」と述べました。
このほか、これまでにほかの会合などで商品券を配ったことがあるかと問われると、「金額はそれぞれ記憶していないが上回る額はなかったと覚えている。回数が何回か明確に答える資料は持ち合わせていないが、おそらく両手で数えて足りるか足りないかぐらいではないか」と述べました。
また、今月3日の総理大臣公邸での会食について、出席したのは当選1回の衆議院議員15人に加え石破総理大臣と林官房長官、それに橘官房副長官と青木官房副長官のあわせて19人だったと説明しました。
食事代もみずからが私費で支払ったとしたうえで、「正確な数字は申し上げられないが、お一人様1万5000円で、なるべく費用がかからないところで選定したと記憶している」と述べました。
また、自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題での処分を踏まえ、みずからの責任の取り方をどう考えているか問われ、「収支報告書への不記載の問題とは次元が違う話だと思っているが世の中の人が『これはおかしい』『常識とは違う』と思っていることは深く反省し以後、このようなことがないよう誠心誠意、努めていく」と述べました。
石破首相 自民議員に商品券 与党・野党は【反応まとめ】
注目
政治部記者の解説 今後の政権運営への影響は
Q.野党に加え、与党からも厳しい声が出ていますね。
A.そうですね。政府・与党は強い危機感を持っています。与党内からは「違法ではないかもしれないが、道義的責任はある」という指摘が相次いでいます。加えて新年度予算案は、高額療養費の見直しに伴って参議院で再び修正される見通しで、審議日程がただでさえ窮屈になっているだけに、「最悪のタイミングだ」と嘆く声も聞かれます。一方、野党側は、企業・団体献金の扱いなどを議論しているさなかでもあり、物価高に苦しむ国民の感情を逆なでするものだとして、厳しく追及する方針です。衆議院で予算案に賛成した日本維新の会は、賛否を含め改めて対応を協議するとしていまして、年度内成立は予断を許さない状況となっています。
Q.今後の政権運営への影響をどうみますか。
A.影響は避けられないと思います。石破総理は、総裁選挙でカネのかからない政治を訴えてきた経緯がありますし、去年の衆議院選挙では、収支報告書に不記載があった候補者の公認を見送るなど、厳しい対応をとってきました。それだけに自民党内からは、これまでの言動と整合性がとれないとして、進退に言及する議員も出ています。夏に参議院選挙を控え、党内の結束を保ち、信頼を回復できるのか、石破総理にとっては厳しい局面を迎えていると言えます。
市民団体 東京地検特捜部に告発状を提出「司法の判断を」
市民団体が政治資金規正法に違反する疑いがあるとして、東京地検特捜部に告発状を提出しました。
石破総理大臣が3月3日に総理大臣公邸で行った自民党の当選1回の衆議院議員15人との会食に先立って、出席議員の事務所に1人10万円分の商品券を配っていたことについて、市民団体は14日、個人が政治活動に関して政治家個人に寄付することを禁じた政治資金規正法に違反する疑いがあるとして石破総理大臣や受け取った議員の告発状を東京地検特捜部に提出しました。
市民団体は会見で「政治資金について国会で議論されているなかで総理が商品券を配ったのが不思議でならない。司法の判断を仰ぎたい」と話しています。
石破総理大臣はこれまでの説明で、政治活動に関する寄付にはあたらないなどとして、法的に問題はないという認識を示しています。
政治資金規正法の焦点は
政治資金規正法は、個人が政治活動に関して政治家個人に金銭や有価証券を寄付することを禁じています。
有価証券には株券や小切手、それに商品券などが含まれます。
一方、政治資金規正法の条文が禁じるのは「政治活動に関する寄付」についてで、これに該当しないものは対象外となります。
今回の商品券がどのような趣旨で提供され「政治活動に関する寄付」にあたらないのかどうかが焦点となります。
【ノーカット動画 11分49秒】13日夜 取材に応じる
石破総理大臣は13日夜、総理大臣公邸で記者団の取材に応じました。
「今月3日に自民党所属の当選1回の衆議院議員15人と会食したがそれに先立ち出席議員の事務所に商品券をお届けした。会食のお土産代わりに家族へのねぎらいなどの観点から、私自身の私費、ポケットマネーで用意をした」
「法律に抵触をするものではなく、そういう趣旨なので政治活動に関する寄付ではなく、政治資金規正法上の問題はない。また私の選挙区に住んでいる人はいないので、公職選挙法にも抵触しない。以上のようなことで法的には問題がないと認識している」
「大勢の皆様にいろいろとご心配をおかけをし、また、いろいろな思いを持たせているということについては大変申し訳ない」
「自民党総裁として苦労をかけてすまなかったということでこれは政治活動ではない」
(みずからの判断で商品券を渡したのかを問われ)
「他の誰からの指示に基づくものではない」
(自身の進退を問われ)
「これは公職選挙法にも政治資金規正法にも何ら抵触するものではない。『総裁としてご苦労をかけてすまなかった』ということであって、そのことをもってして法律に違反するものではない。法的には何ら抵触するものではないが、このことによってお騒がせしていることは申し訳ないということだ」
(「国民が物価高に苦しむ中、理解を得るのは難しいのではないか」と質問され)
「政府として物価高を上回る賃金上昇という形で応えられるよう努力している。議員になるまで何年も苦労してきたことへの慰労の意味もあったが、国民の思いに反することがあったとすれば、申し訳ない」
(「ほかの会合などでも同じように商品券を配ったことがあるか」と聞かれ)
「本当に苦労していただいている皆様方、ご家族の方々に対しても、一人一人、会食するわけにもいかないので、『ありがとう』という趣旨で、お渡ししたことはある」