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診療報酬の改定で開業医が年間115万円の減収? 生活習慣病の治療、6月から何が変わるのか 東京新聞 2024年5月29日 06時00分
<医療の値段・第3部・明細書を見よう>②
「医療の値段」である診療報酬は2年に1度改定される。本年度は改定の年にあたり、これまでは年度の初めから施行されたが、医療機関などの負担軽減のため、今年から6月スタートとなる。今回、特に開業医らが減収を心配するのが高血圧・糖尿病・脂質異常症の三つの生活習慣病の治療にかかる診療報酬だ。
◆「より質の高い疾病管理を進めるため」
厚生労働省はこの3疾患について、計画的に疾病管理をしたときに算定(請求)できる「特定疾患療養管理料225点」(1点10円、2250円)の対象から外す代わりに、算定の新たな受け皿として「生活習慣病管理料(Ⅱ)333点」を創設した。改定の理由を同省の担当者が説明する。
「生活習慣病の治療は、患者と医療者が共通の理解を持つことが重要。療養計画書を作って患者と共有するなど、より質の高い疾病管理を進めるためです」
診療点数だけ見れば108点増えることになるが、月2回までだった算定回数は月1回まで半減する。
◆算定はトータルでマイナス16点に
また、計画的な医学管理を行っている患者に算定できる「外来管理加算52点」などを同時に請求(併算定)できなくなり、処方箋料も8点引き下げられるため、算定のイメージ図のようにトータルではマイナス16点(160円)となる。
2020年の高血圧の患者は1511万人で、糖尿病は579万人、脂質異常症は401万人。三つの生活習慣病が患者数の上位3位を占める。東京都内の開業医はこう試算する。
「仮に1日50人の患者がいて、その6割の30人に特定疾患療養管理料を月1回算定しているなら、月20日間の診療で、年間約115万円の減収になります」
◆頻繁な算定は「お金を取るため」
厚労省のデータベースによれば、22年4〜6月の3カ月に同管理料を請求された患者は計3373万人。1〜3回(月1回)が88%を占め、上限の6回(月2回)を算定されていた患者も約91万人(3%)いた。月2回なら今後は大幅な減収となるが、都内の別のベテラン開業医は頻回な算定に疑問を投げかける。
「薬の処方が決まり、食事や生活をこうしてくださいと指導して、患者の状態が安定していれば2週間おきに来させる必要はない。なぜ、来させるかといえばお金を取るためですよ」
新設の生活習慣病管理料の算定には療養計画書の作成と患者の署名が必要になる。医師が記入するのは
▽体重や血圧などの目標値
▽患者と相談した達成目標
▽食事や運動などの指導
▽血液検査結果など。
それを「患者に渡して丁寧に説明した上で、同意を得て署名をもらう」ことが必要となる。開業医らの間で、業務増加への不満や署名を取ることへの不安が広がる。
◆患者が納得しなければ…
「たとえば『最近体重が増えているけど、体重が増えると血圧も上がる。どういう食事をしているの』と聞くなど、ちゃんと医学管理をして堂々と算定すればいい。『薬だけ出しておくか』では、ダメなのは当たり前だ」と先の開業医。
「最初は患者も署名に納得しても、2~3年して安定しているときに、また管理料を取りたいと言えば、『何でですか』という患者も出てくる。『引き続きお願いしたい』と言われるかは信頼にかかっている」
生活習慣病管理料 従来からの生活習慣病管理料が生活習慣病管理料(Ⅰ)に名称変更となり、同(Ⅱ)が新設された。(Ⅰ)は検査や注射などを包括し、脂質異常症610点、高血圧660点、糖尿病760点。療養計画書や患者同意が必要なことから算定しづらいとされ、患者の多くは特定疾患療養管理料を算定されてきた。新設の(Ⅱ)は333点で、検査料などは別に算定する。患者の状況に合わせて医師が(Ⅰ)か(Ⅱ)を選ぶ。