悪天候に見舞われたピレネー頂上ゴールのツール第9ステージでオランダのドゥムランが区間初優勝!
レース 2016.07.11
第103回ツール・ド・フランス(UCIワールドツアー)は、7月10日にスペインのビエラ・バル・ダランからアンドラ公国のアルカリス山までの184.5kmで頂上ゴールの第9ステージを競い、最後のアルカリス山(カテゴリー超級)は土砂降りの雷雨と雹に見舞われる厳しいレースになったが、オランダのトム・ドゥムラン(ジャイアント・アルペシン)が独走で逃げ切って区間初優勝を果たした。
ドゥムランは昨年ブエルタ・ア・エスパーニャで区間2勝し、今年はジロ・デ・イタリアでも区間優勝しており、これで3大ツアーすべてで区間優勝したことになった。
マイヨ・ジョーヌは英国のクリストファー・フルーム(スカイ)が守った。
この日は第1ステージで落車し、負傷したままレースを続けていたスペインのアルベルト・コンタドール(ティンコフ)が81km地点でリタイアした。彼は今朝、熱があったにもかかわらず出走していた。
ピレネー最終日はコンタドールだけでなく、マーク・レンショウ(ディメンションデータ)、マテュー・ラダニュース(FDJ)、セドリック・ピノー(FDJ)もレース途中で棄権。193選手が完走している。
ピレネー山岳ステージで締めくくったツール1週目が終わり、コンタドールがリタイアという波乱はあったものの、総合争いはマイヨ・ジョーヌのフルームに対し、総合10位でもタイム差が1分台という僅差の戦況になっている。
雹がまじる土砂降りに見舞われたアルカリス山頂ゴール
ピレネー3日目の第9ステージは197選手が出走。中盤までは気温24度Cで晴れていたが、ゴールのアルカリス山は気温10度Cにまで下がり、雷雨の土砂降りになって終盤は雹も降り出す厳しい天候に変わった。
スタートしてすぐにカテゴリー1のボナイグア峠登坂が始まり、7km地点で45人の選手が集団から逃げ出した。そこにはアルカンシエルのペーテル・サガン(ティンコフ)、トーマス・ドヘント(ロット・ソウダル)、ラファウ・マイカ(ティンコフ)、ティボー・ピノ(FDJ)、トム・ドゥムラン(ジャイアント・アルペシン)、ディエゴ・ローザ(アスタナ)が加わっていた。
さらにアルベルト・コンタドール(ティンコフ)、アレハンドロ・バルベルデ(モビスター)、セルヒオ・エナオ(スカイ)がカウンターで飛び出し、先頭グループを追った。
集団では前日のステージで転倒したピエール・ロラン(キャノンデール・ドラパック)が遅れ始めていた。バルベルデは先頭グループに追いついたが、コンタドールは集団に戻った。
19km地点のボナイグア峠(カテゴリー1)山頂はピノが先頭で通過。山岳賞総合で暫定1位に返り咲いた。ここで集団は1分20秒遅れだった。上りで遅れていたサガンが下りで追いつき、先頭は20人になった。
53km地点で先頭グループのアドバンテージは45秒にまで減ったが、バルベルデが集団に戻ると、タイム差は広がっていった。
ゴールまで100km地点で、20人の先頭グループが集団に6分差を付けた頃、コンタドールは81km地点でレースを棄権し、チームカーに乗り込んでしまった。
ゴールまで残り97kmのカント峠(カテゴリー1)はドヘントが先頭で通過し、ピノ、マイカ、ローザが続いた。そして残り50km地点で先頭グループと集団のタイム差は10分にまで開いていた。
中間スプリントポイントはアルカンシエルのサガンが先頭で通過したが、ポイント賞総合成績で首位のマーク・カヴェンディッシュ(ディメンションデータ)との差はまだ7ポイントあり、この日はマイヨ・ベールを奪い取れなかった。
ゴールまで残り41.5kmのコメッリャ峠(カテゴリー2)もドヘントが先頭で通過したが、総合種首位のピノには到底追いつきはしなかった。ドヘントはそのまま数10秒差をつけて先頭を独走したが、つづくカテゴリー1のベイハリス峠の頂上まで4km地点で吸収されてしまった。
ベイハリス峠山頂はピノが先頭で通過し、さらにポイントを稼いだ。8分遅れのマイヨ・ジョーヌの集団は、この時すでに35人ほどに減っていた。
ドゥムランがアタック!
10kmつづく最後のアルカリス山の登坂が始まる2km手前で、先頭グループからドゥムランがアタック。アルカリス山のふもとで追走グループに30秒差を付けていた。その頃、アルカリス山のゴール地点では、雨が降り始めていた。
天候は次第に悪化し、雹がまじる土砂降りの中をドゥムランは山頂目指して坂を上り続けた。残り5kmで、彼は追走するマイカとルイ・コスタ(ランプレ・メリダ)に44秒差を付けていた。
その頃、チームスカイが引き続けていたマイヨ・ジョーヌ集団では、前日のようにセルヒオ・エナオ(スカイ)のアタックが先頭開始の合図になった。
エナオにつづいてマイヨ・ジョーヌのフルームがアタックすると、その後方にはナイロ・キンタナ(モビスター)がピタリと付いていた。さらにリッチー・ポート(BMC)、ダニエル・マーティン(エティックス・クイックステップ)、ロマン・バルデ(AG2R・ラモンディアル)が合流した。
しかし、この攻撃で集団の後方ではファビオ・アルー(アスタナ)、ティージェイ・バンガルデレン(BMC)、ロマン・クロイツィーゲル(ティンコフ)が遅れてしまった。アルーにはビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ)が合流し、牽引車となって山を乗り始めた。
マイヨ・ジョーヌ争いが続けられる一方で、アルカリス山の頂上ではドゥムランが追走する2人とのタイム差をキープしたままゴールに到着。ガッツポーズでフィニッシュラインを通過した。彼はこの日、敢闘賞の赤ゼッケンも獲得している。
マイヨ・アポワを着たマイカは区間3位でゴールしたが、ピノが区間6位に入って20ポイントを獲得したため3ポイント差で逆転され、山岳賞総合首位の座を守ることはできなかった。
メイングループは結局誰も抜け出せないまま、マイヨ・ブランのアダム・イエーツ(オリカ・バイクエクスチェンジ)、マイヨ・ジョーヌのフルーム、キンタナ、ポート、マーティン、そしてキンタナをアシストするヘスス・エラダ(モビスター)が一緒にゴール。総合上位に大きな変動はなかった。
■ツールで区間初優勝したドゥムランのコメント「夢がかなった。信じられないような一日だった。クイーンステージで勝ててすごくうれしいよ。特別だ。僕はただのスペシャリストではない、と見せることができた。
数日前に、クイーンステージで勝ちに行くかと聞かれていたら、気は確かか、と答えていただろう。ツールが始まった時、僕は調子がいいと感じていなかった。でも、この数日は良くなっていると感じていて、今朝はすごく調子が良かったからアタックすることにしたんだ。
先頭のグループでは、おそらく最強の1人だった。僕はTTスペシャリストだから、捕まえるのは難しいと思う。けれど最後の坂でパワーは落ちていった。自分のスピードが落ちているを感じて、捕まるのではないかと恐れていた。でも、誰も追って来なかったのさ」
■マイヨ・ジョーヌを守ったフルームのコメント「厳しいステージで、天候がより過酷なものにした。雨が降り出す前はとても暑かったのに、雹が降り出した。気温は10度Cにまで下がっていた。それがレースを厳しくしたが、我々にとっては素晴らしい日だった。マイヨ・ジョーヌを守れてうれしいよ。
ツール前に、今回は僕のキャリアで最大の闘いになるだろうと何度か言っていたが、それは正しかった。今年はみんなを置き去りにするのが容易ではない。レベルは去年よりも高くなっている。
キンタナが残り1kmに到着する前にアタックするのを僕は待っていた。彼は大きな動きのために力を温存しているのではないかと思っていた。けれど彼はアタックしなかったので、限界に達していたと思いたい。僕の後方に付いたままだったよ」
■第9ステージ結果[7月10日/ビエラ・バル・ダラン(スペイン)~アンドラ・アルカリス(アンドラ)/184.5km]
1 トム・ドゥムラン(ジャイアント・アルペシン/オランダ)5時間16分24秒
2 ルイ・コスタ(ランプレ・メリダ/ポルトガル)+38秒
3 ラファウ・マイカ(ティンコフ/ポーランド)+38秒
4 ダニエル・ナバロ(コフィディス/スペイン)+1分39秒
5 ウイネル・アナコナ(モビスター/コロンビア)+1分57秒
6 ティボー・ピノ(FDJ/フランス)+2分30秒
7 ジョーシ・ベネット(ロトNL・ユンボ/ニュージーランド)+2分48秒
8 ディエゴ・ローザ(アスタナ/イタリア)+2分52秒
9 マティアス・フランク(IAM/スイス)+3分44秒
10 アダム・イエーツ(オリカ・バイクエクスチェンジ/英国)+6分35秒
11 クリストファー・フルーム(スカイ/英国)+6分35秒
12 ナイロ・キンタナ(モビスター/コロンビア)+6分35秒
13 リッチー・ポート(BMC/オーストラリア)+6分37秒
14 ダニエル・マーティン(エティックス・クイックステップ/アイルランド)+6分37秒
17 ロマン・バルデ(AG2R・ラモンディアル/フランス)+6分56秒
18 バウケ・モレマ(トレック・セガフレード/オランダ)+6分56秒
21 ティージェイ・バンガルデレン(BMC/米国)+7分13秒
23 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター/スペイン)+7分17秒
26 ビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ/イタリア)+7分35秒
27 ファビオ・アルー(アスタナ/イタリア)+7分35秒
111 新城幸也(ランプレ・メリダ/日本)+31分48秒
■第9ステージまでの総合成績
1 クリストファー・フルーム(スカイ/英国)44時間36分03秒
2 アダム・イエーツ(オリカ・バイクエクスチェンジ/英国)+16秒
3 ダニエル・マーティン(エティックス・クイックステップ/アイルランド)+19秒
4 ナイロ・キンタナ(モビスター/コロンビア)+23秒
5 ホアキン・ロドリゲス(カチューシャ/スペイン)+37秒
6 ロマン・バルデ(AG2R・ラモンディアル/フランス)+44秒
7 バウケ・モレマ(トレック・セガフレード/オランダ)+44秒
8 セルヒオ・エナオ(スカイ/コロンビア)+44秒
9 ルイ・メインティス(ランプレ・メリダ/南アフリカ)+55秒
10 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター/スペイン)+1分01秒
11 ティージェイ・バンガルデレン(BMC/米国)+1分01秒
13 ファビオ・アルー(アスタナ/イタリア)+1分23秒
14 リッチー・ポート(BMC/オーストラリア)+2分10秒
120 新城幸也(ランプレ・メリダ/日本)+1時間37分40秒
[各賞]
■ポイント賞(マイヨ・ベール):マーク・カヴェンディッシュ(ディメンションデータ/英国)
■山岳賞(マイヨ・アポワ):ティボー・ピノ(FDJ/フランス)
■新人賞(マイヨ・ブラン):アダム・イエーツ(オリカ・バイクエクスチェンジ/英国)
■チーム成績(黄ゼッケン):モビスターチーム(スペイン)
■敢闘賞(赤ゼッケン):トム・ドゥムラン(ジャイアント・アルペシン/オランダ)