
海側とは反対方向に少し歩くと、今を盛りのハス田が広がる。
直径1mもあろうかという大きなハスの葉が「日傘の代役を務めましょうか」と声をかけるがごとく一様に天に向かってしっかりと立っている。
あたかも、降り注ぐ太陽を少しでも多く受け止めよう、その恩恵で地中の根っこを大きく育てようと精一杯踏ん張っているように見える。
思わぬ一陣の風が吹く。柔らかな音を立てて葉っぱがざわめく。
何の意味もなく 『風立ちぬ、いざ生きめやも』 堀辰雄「風立ちぬ」のホンの一説が頭を掠める。
気がつくと、ハスの葉っぱは風になびき、そこここに葉裏を見せる。
表の黒味がかった青色に比べると、それはそれは色白で淡い黄緑。まさに金波銀波が揺れている。
そよ風もホンの一瞬、またまたジリジリ照りつける残暑に悩む。
お盆に向けたハスの花の出荷が終わったら、急に秋風が吹き始める例年。
今年は別格なのか、いつまでも猛暑日、真夏日が続く。溶けそうに暑い。
文字通り、風立ちぬ。一日も早く秋の気配を感じたいものだ
( 写真 : 金波銀波が揺れるハス田を渡る風 )