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吉野満彦さん逝く

2012年02月14日 19時15分46秒 | 人間
吉野満彦さん逝く






芳野満彦さんが2月5日に80歳で亡くなられた。
昨年末、友人から「芳野さんが入院した」との知らせを受けて、お見舞いに行った。年を越すのは難しそうとの、医師の診断も有ったが、新年を迎え初場所の相撲中継も楽しんでおられた。

1987(昭和62)年1月9日~14日に水戸市泉町のタキタ画廊で「芳野(服部)満彦山岳画展」が開催され、芳野さんを知った。
“伝説の登山家”芳野さんが、ヒマラヤやヨーロッパの山々に登った時のスケッチや油絵180点が展示されていた。
特に心を奪われたのは、画帳に鉛筆やサインペンで書かれた絵や文章。
スケッチは水彩やパステルなどで簡単に彩色されている。
切符やレシートなども貼られた旅日記。
それらが、何十冊も展示されていた。

後で知ったが、通常も詩やスケッチを書き留める習慣で『山靴の音』の一部にはそれらも挿入されている。

それ以来、住まいがごく近所と云うこともあって、ちょいちょいお邪魔した。
部屋には何時も、どなたか御出でで、酒盛りや将棋や雑談を交わしていた。
アパートの部屋が山小屋という感じで、時には室内にテントが張られ、寝袋も有った。ビバーク(野営の意味か)と称し、酔っ払って立ち寄って朝まで寝てる人も居たり、ユニークな部屋と人達だった。
当時の人々の奇行を想い出すと懐かしい。

東京新聞出版局 の雑誌『岳人』に1年間連載した画文集がまとめられて『新山靴の音』として出版されたのは1992(平成4)年3月だった。
盛大な出版パーテーも開催された。奥様が亡くなる少し前の出来事だったように記憶している。

雑誌連載の頃に分かったのだが、文章や絵はいとも簡単に仕上げる。
原稿は1日で充分と話していたが、まさにそうだった。

その頃から、絵かきとしての仕事が増え、あちこちで「山岳画展」を開催された。還暦を迎えたころではあったが、山登りも続けられており、ネパールへのトレッキングガイドなどもなさっていた。

10年前頃か?軽い脳梗塞が二度続き、それ以来、酒をぴったりと断った。
酒の気のない芳野さんは、少しばかり物足りなく思えたが、一滴たりと口にすることはなかった。
タバコは医者に止められていたが、たまには吸われたようだ。

“伝説の登山家”と呼ばれるのは、本人は”山家”と称していたが、生きていながら『伝説の』が付くのはご承知の様に・・・・

1948年(昭和23年)、早稲田高等学校2年の17歳のとき八ヶ岳で遭難して両足指をすべて欠くが、(凍傷にかかり、かかとから足先まで12センチしかない)
リハビリを重ね、平地で歩くのは人より遅いが、岩登りにかけては一流となり、
日本人で初めてマッターホルンの北壁を登り、続けてアイガー、グランドジョラスの北壁を登った。当然、ヨーロッパアルプスの三大北壁を登ったのは芳野さんが初めてだった。
グランドジョラスではパートナーを失ったし、八ヶ岳の遭難でも友人が凍死している。そうした、劇的な登山は彼をモデルにした新田次郎の「栄光の岩壁」に詳しい。
昭和30年~40年代は登山が大流行、芳野さんは当時のヒーローだった。
「山靴の音」(昭和34年10月、朋文堂)は、当時は山男のバイブルとして読まれた。

更に、沢山の伝説があるのだろうが、知り合いになって約25年。
己の実績について自慢話的なことは語らなかったから、詳しいことは分からない。
東京・日暮里で生まれ育ったことを誇りに思い、常に日本人としての矜持を持っておられた。
感情を顕わにされる事も有ったが、照れ屋で優しい方であった。

ネパールにご一緒しヒマラヤの山々を見たかったことや、もう少し盃を重ねたかった、との思いが残る。

12日の通夜しか出席できなかったが、その際、三浦雄一郎さんの姿を拝見した。
芳野さんより一歳年少の79歳。
来年の80歳でエベレスト登頂を目指し、日々トレーニングを重ねている姿が報道され、期待されている。
鍛えられた強靭な体つきは、とても年齢には見えない。
芳野さんと三浦さんの交流は50年以上に渡る。
芳野満彦さんの思いを胸に、80歳でのエベレスト登頂を果たしてほしい。

芳野満彦のヒマラヤ画帳_02.flv
http://www.youtube.com/watch?v=A-7joM0ym7E
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