著者 佐々木譲
生年 1950年
出身地 北海道
出版年 2009年
出版社 (株)新潮社
☆☆感想☆☆
著者は日経新聞にコラムを連載していた。大型犬を飼うほどの費用でとあっさり言って、馬を飼ったり乗ったりしている北海道東部の酪農地帯での日常を紹介していた。それで佐々木譲の名前に惹かれて初めて手にしたのが本書である。
舞台は帯広市を中心にした十勝地方。やくざの徳丸組の親分の家で金庫が破られ多額の現金が持ち去られ、親分の妻も殺された。親分は大半の子分を引き連れ、上部団体の会長襲名披露宴に出席するために留守にしていた時だった。生き残った子分の証言や監視カメラの映像から2人組の仕業と判明。また一方、川のそばで変死体が発見された。時あたかも爆弾低気圧が道東地方を襲い、猛烈な吹雪の中。道路は次々と通行止め。そして236号沿いのペンションに進むことができず吹雪を逃れて人々が集まってくる。
警察小説なので、吹雪の中も雪の中でも働く警官の姿が大変でご苦労様と言いたくなるほどだ。舞台になっている志茂別という地名は実在せず、帯広市や中礼内村の南に位置している。志茂別以外で出てくる地名は、帯広や十勝清水、狩勝峠、日勝峠、236号や38号など実在しているので、地図を見ながら読むのも一興。冬の十勝の情景、というか吹雪のすさまじさにも一驚。除雪機が各家庭に必需品なのももっともだ。除雪を通して相互扶助の精神が生きている。モーパッサンの「脂肪の塊」と状況が似たシーンもあったが、周囲の人々の対応が真逆に描かれている。これぞ北海道だと読んでいて気持ちは明るくなる。