『そぞろ歩き韓国』から『四季折々』に 

東京近郊を散歩した折々の写真とたまに俳句。

読書感想276  サンクトペテルブルグから来た指揮者

2020-01-15 17:51:58 | 小説(海外)

読書感想276  サンクトペテルブルグから来た指揮者

著者      カミラ・グレーベ&ポール・レアンダ・エングストレーム

出身国     スウェーデン

出版年     2013

邦訳出版年   2018

邦訳出版社   (株)早川書房

訳者      府川由美恵

☆☆感想☆☆

 1993年サンクトペテルブルグで企業法務専門の弁護士、フレドリク・カストループはあるロシア人の会社設立の手数料として、海のものとも山のものとも知れないその会社の株式の2%を譲渡される。ただし売却するときに他の誰でもなくそのロシア人に売ることを約束させられる。それから10年、フレドリクはモスクワに移り、弁護士として大成功を収めていた。ロシア人の恋人オルガとその娘のクセニアと一緒に暮らしているが、モスクワを引き上げてロンドンに移ろうと考えている。同じくスウェーデン人のトム・ブリクセンとは家族ぐるみの親しい交際を続けている。トムは投資銀行パイオニア・キャピタルの企業金融部門のチーフ。そのトムに大きなビジネス・チャンスが訪れる。ロシア最大の新興財閥ルーシオイルからアドヴァイザーとして指名されたのだ。ルーシーオイルは西シベリアの石油採掘で驚異的な成長をしているネフニクという会社を買収しようとしている。そして次々に殺人事件が起きていく。チェチェン人の自爆テロも起こる。

登場人物もいろいろ。

ボリス・ロマノフ: ルーシー・オイル社大株主。

ピュートル・ヴォルコフ: 同社保安部長

レオニード・グセフ: ネフトニク社大株主

アーラ・ラドエワ: チェチェン人女性

ラリーサ・ボリソワ: フレドリク家の掃除人

セルゲイ・ヴィクトロヴィッチ・スクロフ: ロシア最高検察庁検察官

ヴィタリー・マルキン: モスクワ市警警視

などなど。

ソヴィエトが崩壊し、資本主義的な法解釈とか、会社運営のノウハウを持った欧米の法律家や投資銀行がロシア市場に参入した。そして政官産癒着と、豊かな資源を背景にロシアの資本主義化が進み、貧富の格差の拡大と新興財閥や成金が生まれた。そんな時代と社会の雰囲気が伝わってくるミステリーである。主人公はスウェーデン人だが、舞台はロシアである。著者の一人のポールはモスクワの投資銀行で長年働いていたという。その経験が本書では随所に生きている。欧米人の目で見た社会主義から資本主義に変わった過渡期のロシアでもある。


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