『そぞろ歩き韓国』から『四季折々』に 

東京近郊を散歩した折々の写真とたまに俳句。

読書感想134  祝宴

2014-06-22 11:54:21 | 小説(海外)

 

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[著者] ディック・フランシス

 

[略歴] 1920年に英国のウェールズで生まれ、障害競馬の騎手として活躍し、1957年に引退し、作家としてデビュー。MWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞、CWA(英国推理作家協会)賞を何度も受賞。本書は息子のフェリックスとの共著。

 

[出版年] 2007

 

[邦訳出版年] 2007

 

[邦訳出版社] ()早川書房

 

[訳者]  北野寿美枝

 

 

 

【感想】

 

 競馬の本拠地として名高いニューマーケットの競馬場で、食中毒事件が発生する。イギリスの5大クラシックレースの一つ、“二〇〇〇ギニー”レースの前夜祭のディナーを食べた人々が食中毒で病院に運びこまれる事態に陥ったのだ。自分自身も食中毒で一晩中苦しんだマックスは、その前夜祭ディナーを担当したシェフだった。食中毒の原因が思い当たらないまま、“二〇〇〇ギニー”レース当日の競馬場のボックス席でのランチ・パーティーの料理も担当する。そのランチ・パーティーはアメリカの多国籍企業デラフィールド・インダストリーズの主催だ。ランチ・パーティーは成功したが、レースが始まった直後にパーティー会場で爆弾が爆発し、マックスはかろうじて命を取り留める。食中毒の原因を調べているうちに、マックスは食中毒が原因でランチ・パーティーに参加しなかった人達の存在に気づく。食中毒事件と爆破事件の関係を調べ始めたマックスは、何者かに命を狙われ始める。

 

 ミステリー部分も面白いが、英国の文化の描写も楽しい。一流のシェフが調理するディナーやランチ・パーティーの様子から、英国の競馬場の社交場としての役割や格式の高さが伝わってくる。英国はもとより日本の競馬場にも行ったことがないけれど、日本だと馬券が飛び交う大衆的なギャンブル場という印象がある。また、調理道具や配膳、食器、人手を貸し、後片付けまでするケータリングの会社の充実ぶりに目を見張る。銀行ではなく、熱心に投資先を探している個人投資家の存在も古くからの金融大国を伺わせる逸話だ。

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