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 ヤマトタケルの夢 

―三代目市川猿之助丈の創る世界との邂逅―
★歌舞伎・スーパー歌舞伎・その他の舞台★

マクベス雑感3

2006-02-07 23:23:11 | りゅーとぴあ能楽堂シェイクスピアシリーズ
レミゼを観て以来、その楽曲に取り憑かれていましたが
今、脳内は魔女の歌声に占領されています。
♪お前三度にわし三度~とか
♪毒蛇に傷を負わせても~傷ふさがればもとどおり~とか!(^^)!

『バンクォー殺しの場』(笑)も大好き。
舞台を観にいけなくても、あの、暗く狭い能舞台の上で
今日も、“小さくて大きい劇空間が誕生し消滅していく”(笑)
と、想像すると、すでに懐かしさをともなう音色が、
幻聴のように響いてくる気がする。
(って、アブナイ?>自分)

さて、このマクベス、いろんな翻訳者の版があるようですが、
とりあえず、読んだのが福田恆存訳と松岡和子訳。
語感がずいぶん異なります。福田訳は
そのまんまスーパー歌舞伎の舞台を想い起こさせるような感じ。

いくつか例をあげてみますね。

【松岡訳】
ダンカン「何者だ?あの血まみれの男は。満身創痍だな、
     反乱軍との戦いの最新の報告が聞けそうだ。」
マルコム「この仕官です。勇猛果敢に戦って、
     捕虜になりかけた私を救ってくれた。よく戻ったな!
     王に戦況をお聞かせしろ。戦場を離れた時どうだった。」
将校  「勝敗は不明、泳ぎ着かれた人間が二人、互いにしがみつき
     溺れかけてでもいるようです。残忍なマクドンウォルドは
     ―逆賊の名にふさわしく
     増殖した悪行がウジ虫のようにその身に群がっておりますが(後略)」

【福田訳】
ダンカン「あの血みどろの男は何者だ?あの様子なら、反乱軍の動静も
     よく知っていよう。新しい情報が聞けるかも知れぬ。」
マルコム「あの兵です、先ごろもあっぱれ獅子奮迅の働き、おかげで捕虜に
     なるところを危うく救われました。…おお良かったな元気で!
     戦場の模様、ありのまま、王にお伝えしてくれ。」
隊長  「勝敗はいづれとも申し上げかねます。水中泳ぎ疲れて、
     力の尽き果てた同士が、たがいに相手にからみつき、手足の自由を
     失のうて、もがき苦しむさまにも似て…
     あの残忍無法のマクドンウォルド、あれこそ根っからの謀反人
     重ね重ねの邪智、悪行、それを証(あか)して余りありますが
    (後略)」

松岡訳では幸四郎さん、福田訳では猿之助さんの声が聞こえてくるようでは
ありませんか?(笑)え?幻聴パート2?
“失のうて”に“うしのうて”とルビが振ってあるのを目撃し、
ニマっとしてしまいました。

【松岡訳】ロス「マクベス、閣下の勝利の知らせに、陛下は大層ご満悦ごです。」
【福田訳】ロス「御戦勝のお知らせ、王には至極ご満悦でしたぞ、マクベス殿」

など比較してみても、私は結構福田訳も耳馴染みがいいです。

今回の演出の方向性や、リズム感などでは松岡訳ピッタリですが。
(というか、この訳で戯曲を読んだからこそ、
演出家の中に、今、私たちが見るもののインスピレーションが
浮かんだのかもしれないけれど。)

坪内逍遥の他に森鴎外訳なんていうのもあるんですね~。
小田島雄志訳での上演も多い。読み比べてみたい。
言語で読む話はどうなったんだ?ってところですが、
フツーの英語でさえなかなか読めないのに、
古文?の英語はねぇ・・・対訳とか注釈ないと無理。
今でも、ヨーロッパの言葉はそうだけど、
英語も二人称のyou がthouとの言い方もあり、
それが thou(汝は)・thy(汝の)・thee(汝を)・thine(汝のもの)
と、変化していた!なんて、お勉強してないから分かりませぬ

マクベス東京公演3

2006-02-06 23:53:19 | りゅーとぴあ能楽堂シェイクスピアシリーズ
急遽、来場不可となった友人の代理観劇で、本日も梅若能楽堂へ。
順調に仕事が終わっても、開演ギリギリの飛び込みになることは
予測がついていたので、すでに、ランチタイムに夜食も調達。

東中野駅から、おにぎり片手に競歩スタイルで猛進!(笑)
とっても集中して観てしまうので、なんだかお腹の空くお芝居なのです。

正面が一番良い席かな~?と、正面ばかり買っていたのですが
本日、脇正面から観て、正面からは見え難かった部分、
橋掛かりでの芝居や、照明が創る陰影の相違、
魔女たちのフォーメーションなど、興味深く観る事が出来ました。
唄の響きやSEの返りも、ちょっと異なるんですね。
追加観劇を検討中の方は、是非、今お手持ちの席とは
異なるカテゴリーでご覧になることをお勧めします。

・・・ということで、本日も日付変更近い帰宅。
観劇記はまた後日~。

寒い。。。。!?


マクベス雑感2

2006-02-05 21:23:58 | りゅーとぴあ能楽堂シェイクスピアシリーズ
以前、ローマのガイドさんが、フォロロマーノの脇を走行中
カエサル(シーザー)の銅像が見えてきたところで
(え~行ったことある方は思い出して下さい。
右手にフォロロマーノ、正面にコロッセオを見る道)
「【帝王切開】とは、彼がこの方法で誕生したので名づけられています。」
と説明してくれました。

英語名でCaesarean sectionと辞書などには出ていますが、
この時は確か、
「なので帝王切開は、英語ではシーザリアン・オペレーション
/Caesarean operationと云います。」との説明があり、
「へぇ~へぇ~」と(まだ、トリビアなかったけど)と
妙に納得したものでした。後にこれは

>ラテン語 sectio caesarea をドイツ語に訳す際に、
>caesarea(切開する)を
>誤ってローマの将軍カエサルと訳したことからとも、
>カエサルが帝王切開により誕生したからともいう

との諸説も知りましたが、今回マクベスを見て、
帝王切開で生まれた人間には、何か特別な力が備わっているのかしらん
と、マクダフがマクベスに勝てる理由を調べようと
検索してみた結果、このラテン語からドイツ語に訳す際のミス、
という節も、

>「帝王切開」に関する間違った間違い訂正

だそうで(ややこし~)詳しくはこちらを。

ま、帝王切開の語源は置いといて、
月満ち足りず母の腹を破って(←だったかしら。今度は松岡版が迷子~)
生まれたマクダフの勝てる理由は?
と、ちゃかちゃかっとですが、検索かけてみたけれど
迷信とか言い伝えでも、帝王切開術で生まれた子に特別な力や能力がある、
という方向での記述は見当たらず…
単に、この物語り内での事だけだったのかしら。
王位に関わる主題なので、「“帝王”切開」と
何か意味を掛けているのかと思ったのですが。

何かこのあたりご存知の方は教えて下さい\(^o^)

マクベス東京公演2

2006-02-05 20:40:54 | りゅーとぴあ能楽堂シェイクスピアシリーズ
2月5日、本日は昼公演。
陽射しがあると云っても、やはり寒い一日。

昨日の東京公演初日より固まっている舞台でした。

特に、マクベス夫人の笑也さん、私が観た4回の中では
台詞も立つようになってきていて、本日が一番良い出来映え。
ブレスがおかしいのでは?と思えた処もある程度改善されていた。

昨日残念だったのは、照明操作のミスで
最後、ぱっと消え漆黒の闇が生み出されるはずが
逆に照明が点き明るくなってしまった。
それからすぐ消されたのですが…
この「ぱっと(消える)」の間が、凄く気に入っていたので
(もう、この一瞬で世界観が変わるくらいの良い演出。)
この作品に入れ込んでしまっている私は、
う~ん今日のお客様に、あの瞬間を体験して貰えず残念!
とまで、思ってしまう始末。←大きなお世話…
でも、ホント、紫さんの所作と照明のタイミングが
バッチリ合ったときは、快感!!

ということで、本日はそのあたりもオッケーでした。
ただ、この点に関してはりゅーとぴあの方が元が明るいので
消えたときの暗さは際立つ。

喜之助さんのマルコムは、観る度に調子が上がっていて良いです。

右近さんは、本当に実力のある役者さんだな~と
なんか、あらためてこんな言い方をするのも失礼なくらいなのですが、
この道具立てもない、削ぎに削ぎ落とされた逃げ場のない能舞台で
一幕、二幕と芝居を、緩むことなく引っ張っていく力量に感嘆します。
(福田訳本がスイスイ読めたのは、新潟初日右近さんの芝居を観たお陰♪)

バンクォー役の谷田さんも、目の色ひとつで心理を表現する
素敵な役者さんです。口跡もいいし、立ち姿も綺麗。
押し出しもあり、マクベスが畏れる気持ちが良く分かります(笑)
味方である限りこれ以上頼もしいものはないけれど、
敵に回したら、壊滅的に恐いと。
他の人物たちには、その高い地位や身分に対する邪な気持ちから
敵意を抱くワケだけど、バンクォーに対しては存在そのものに恐れを
感じるのだと思う。そのことがよく伝わってくる造形です。
シェークスピア作品を中心に(専門に?)
舞台に立たれてらっしゃるようで、台詞が耳に心地よく乗ってきます。

魔女さんたちも、安定した手堅い演技。
いや~ホントに恐れ入ります。
幕間にご近所の席の方からも「見入ってしまうわ…」という
賞賛の声が漏れてきました。
皆さん、もの凄く若そうなので、演劇のキャリアから云ったら
周囲を大ベテランに囲まれての舞台でしょうけれど、
少しも臆することなく、きっちりとした芝居で
マクベスの運命を操っていることも、
あの、大きく迫力のあるバンクォーを絞め殺す場面も
絶対的に彼以上の力を持ち、彼女たちの方が命の支配者である事を
その小さな身体から湧き出る、ある意味溌剌とした造形で魅せてくれる。

他のストレートプレイで
あるいは欧米の演出で、こうした魔女や妖精を
どのように見せているのか、とても興味が出てきました。

今回の魔女の意匠は、日本だからこそのオリジナリティもあるし
普遍的な、自然界・魔界への畏怖も表現されているので
是非、海外に持っていって欲しい~!!と思ってます。
っていうか、先週、文化庁と国際交流基金にコンタクトしましたよ(爆)
ま、贔屓目もあるかもですが、これまで私が海外で観た日本発のもので
心底素晴らしいっ!!と思ったのは、猿之助さんの訪欧公演と山海塾。

そして、このマクベスの演出は、
オリジンである欧州の国々でこそ、
より、その独創性が理解されるのではないか?と…

文化庁も国際交流基金もそれぞれのスキームで
日本の演劇を海外に出す際の助成を行っており
でも、それは「推薦」ではダメなんですね。
主催団体なりプロデューサーなりが「応募」して
初めて選考され、助成の対象になるそうです。

他薦はなしとの公式見解ですが、この作品を観て、スバラシイ~!!
と思った方は関係各位に是非ご推奨のほど(笑)

「マクベス」東京公演初日

2006-02-05 00:48:05 | りゅーとぴあ能楽堂シェイクスピアシリーズ
なんで新潟より寒いの~!というくらい寒い本日、
東京公演の初日が開けました。

梅若能楽院会館、夜道を歩いたせいもあるけれど、結構分かり難い場所でした。
私がどんくさいだけか?と思っていたけれど、会場で会った友人や
顔見知りの方々とお話しても、同様のコメント。
東中野周辺に土地勘のない方は(→それは自分)、
余裕を持ってお出かけください。
見たところ、能楽院の近くまで来るとお店がないので、
退社後直行で夕食現地調達予定!とか
おやつ求む!の方は、駅周辺や途中のコンビニ等でお求め下さい~。

会館は、一階のロビーも、二階の能楽堂も寒いです。
コートを着たまま観劇していた人も居ました。
もしこの寒気が続くとしたら、
観劇予定の方は厚手のショールなど防寒のお支度を~。

古い建物なので、りゅーとぴあとはまた違った趣があり
特に、能舞台は、長年人の手で丁寧に磨かれてきたことや
その舞台に立った演者の想いが、密かに留まっているような
何か、親密さを与える雰囲気。
内子座とか(たぶん金丸座とか)の感じ?
かなり客席数も少なく、全体的にこじんまりとしている。
そのためか、照度をさらに落とした演出で、
また、舞台正面の上手下手に置かれた下方からの照明が
面灯りのような効果をもたらし、魔女さんたちは更に怖く
登場人物たちの深淵も、より、浮き彫りにされるような意匠。

本日は、笑三郎さん、段治郎さん、春猿さん、弘太郎くんの
お姿を見かけました。どんな感想を持たれたのでしょうね。

マクベス雑感

2006-02-04 01:48:45 | りゅーとぴあ能楽堂シェイクスピアシリーズ
シェイクスピアをきちっと読んだことがなかったので、
観劇前に、いっちょ(笑)「マクベス」読んだろ~っと
遠征前日に本屋に駆け込み、「シェイクスピアのマクベスありますか?」
と店員さん尋ね、こちらに~と案内されたのが、新潮社文庫の前、
ということで、手に取ったのは、福田恆存さん翻訳版

ま~無知と不勉強が服来て歩いているとはこのことで、
私はてっきり、マクベスって「小説」だと思っていたのですね。
「小説」があって、それを上演用に「戯曲」に書き換えたモノもあるのだと。
で、そうではなくて、ハナからこれは「戯曲」でしたっ。
それぞれ役名の後に台詞が書かれ、ト書きも記載されている。
そして、この形式は私にとって、すごく読み辛かった。
別にこれから自分が演じるわけでも、台詞入れるわけでもないし(~_~;)
台本でなくていいんだけど~と。
で、文体もホント「台詞調」でますます読めないのでした。

で、ちょこっとだけ読んで挫折。
新潟までの新幹線では、爆睡。

しかし、初日の舞台を観た後、再度目を通してみると
これが、スイスイ読めてしまうのでした!
役者さんの、台詞のリズムが効いたお陰!?

今まで、シェイクスピア劇を意識的に観たこともなかったし、
シェイクスピア劇のなんたるか、ということも全然知らないのですが、
とにかく、台詞が心地よい!と言われていること、
台詞劇であることが黙読する中でも理解出来る感じ。
しかも、これって、ほぼ歌舞伎の台詞術に沿って言っても
全然オッケーじゃない!と思えるほどの馴染みの良さ。

あと、助けとなったのは
実際、自分がそれらの土地を訪ねた経験があることで、
たとえば、「インヴァネス」という地名から想起される
景色や空気感を実感として味わえるのはアドバンテージになる。
(たとえば、日本のことなら「津軽海峡」と聞いて
ある種のイメージを想起できるのと同様)

あ~役者さんが、これらを咀嚼し、肉体化し、
自分のモノとなった時には、ホント、陶酔するだろうな~というのが
役者でもなんでもない私にも分かるような…
シェイクスピアって面白い!
今後、舞台作品いろいろ観てみたい~っ!!と
急にまた、一人で盛り上がったりもして(爆)

しかし、最初の興奮が落ち着いてふっと我に返った?とき、
でも、私(たち)は、シェイクスピアの台詞そのものを
楽しんでいるのではなく、「翻訳の味わい」を
楽しんでいるのに過ぎないのではないか?という疑問というより
確信が沸いてきて…
十二夜(←もしやMY初シェイクスピア劇?)のときも、
さまざまなブログやサイトで、プロの劇評家でさえ
「シェイクスピアの味わい云々」と書いていたが
ネイティブ並みの英語力と、当時の構文や使われていた語彙の
真の意味(や裏の意味、比喩、暗喩などなど)
を理解出来る程度の読解力や教養がないと、
シェイクスピアの(文体)そのものを楽しむことは不可能では~?
と思ったり…
(戯曲という意味でなく、単純に「言葉」という点で。
逆に、戯曲そのものは、普遍的に受け入れられる要素があるでしょう。)

今、なぜか福田版がPC周りにないのですが、
(最近ずっとこの福田版と松岡版を手許に置いておいてるけど)
福田氏は東大の英文科(だったと記憶)を出てるエリート。
かつ演劇・翻訳・劇作・批評がご専門(のよう)
かなりの論客でもあったらしい。
翻訳者の言葉に対する感性、感性という抽象的な言い方が
適切でないとすれば、言葉や構文に対する彼のキャパシティの
範囲でしか、また、私たちも、シェイクスピアを「味わう」ことは出来ない。
シェイクスピアの作品が歌舞伎の台詞術に乗るのではなく、
歌舞伎の台詞術が“演劇の台詞術”のベースという
翻訳者の観劇体験や舞台芸術に対する素養の中に潜在的にあり
この戯曲を日本語に乗せていったのかも知れない。
(特に明治期なんて、そうだったのではないかな~?
坪内逍遥訳も読んでみようかしらん。)

それは、会場で松岡版(松岡和子訳:ちくま文庫)を購入してから、
より強く思った。
彼女の訳本では、ルヴォー演出、松本幸四郎マクベスが初演だそう。
福田訳が漢詩とすると、松岡訳は現代詩という感じ。
りゅーとぴあマクベスも、この松岡版です。
今日からの公演でも会場で販売していると思います。
注釈が適宜入っており、読み易いですよ。
原文の韻を踏む面白さなどの解説もあり。

例↓(日本語ではその妙を、楽しめない部分。)

※The thane of Fife had a wife
※ファイブの領主には妻があった

原文ではファイブとワイフが韻を踏んでいるけれど
日本語の台詞にはここまでは映せない。
(これはマクベス夫人の台詞の中のひとつ)

原書読んでみたいな~とも思うけれど、辞書引くの面倒なので(笑)
対訳付きで読もうかな。

りゅーとぴあ能楽堂「マクベス」観劇記2

2006-02-04 00:07:02 | りゅーとぴあ能楽堂シェイクスピアシリーズ
紫さんのヘカテは、いちばん能舞台に親しい抑制された所作を見せる。

そして、魔女たちは、からくり人形のような、マイムのような様態。
血の気のない童女姿は、日本人である私たちには、
何かプリミティブな畏れのイメージを呼び覚ます。
囁き、お喋り、箴言、悪戯、悪意、予言、唄…
言霊は姿を変えて、でも、その呪力の根源は変わらず、
マクベスに絡みつく(あるいはマクベスが生み出している)

この、魔女の役者さんに課せられた荷はなかなか重くて
現実的な事を云えば、唄も台詞も重奏的な音階があり、
耳と口には、常に個人的な仕業は赦されていない!
お能のすり足とも違う(でも能舞台である特性と融合しているような)
独特の足運びで動き、また、辛く(←たぶん!)長い静止の時間。
(二幕以降、傘を持ち腕を上げたままの静止や、
橋掛かりにくったりともたれるような形で留まることなど
肉体そのものが酷使されている事に感嘆するけれど、
その人間の肉体が“酷使されている”と、ぱっと見には気づかせない、
異形そのもののような造形が、また、素晴らしくて!)

一幕の橙の着物から、二幕、死出の旅を示唆するような
白い着物(あるいは白い喪服?)への拵え替えも良かった。
これは、演出家の希望なのか、デザイナーの発想なのか
興味深いところです。

白装束の童女に囲まれ「死出の旅」の意匠を感じるのは、
二幕冒頭ではマクベス夫妻に対してだけれど、
エンディングでは、むしろ、魔女たちに魅入られエスコートされる
新しい王とその臣下たちが、結局は、マクベスの辿った道を
なぞるのだろう…という予感から、彼らに対して。
新たな未来、豊かな実りへの行進というよりは、
限りなく死へ向かっていく葬列のように見える。

逆に、お芝居の始まりから終焉までの過程が
「地獄の道行」だったマクベス夫妻は、
最後には、ついに、光に導かれ救済されていくかのよう。
大詰、夫人が迎えにくるまでの、マクベス(右近さん!)の表情が
嵐の後の凪のように穏やかで、
もう、二度と苦悩の大海へ漕ぎ出すことなく、
永遠に安らいだ時間が約束されていることを確信させる。

もしかして、この一点を見せるために、
この物語があったのかな~とも思えるような…

笑也さんも、やはり、こういう象徴的な場面は本領発揮。
初見では、この最後が「(地獄の)道行」?と思ったのですが、
今、私の個人的な解釈や見たものの印象では、
前述の通り「過程」が二人の道行であり、
ラストは、この後に続く物語の
主人公になるであろう人々の「地獄の道行」と感じてます。
それは、決して天国には連れて行ってくれなさそうな
魔女たちが醸し出すものからも。

う~ん、ホント、魔女さんたちコワ可愛いくて、素敵過ぎ。

マクダフ夫人の山賀さんも、蠱惑的な瞳がキラっと輝き
魅力的な女優さんで、子供との問答の場面が秀逸。

ひとつ、どうしても気になるのが、マクダフを演じている役者さんの所作。
はっきり言って、とっても乱雑に見えてしまうナマな身体の使い方で、
能舞台で演じている意味も失われてしまうような…
肩を揺すらせ歩く感じ?ひとり、重心の取り方も違う。
横からの姿は、首というか顎も下がっていて…
特に、橋掛かりでは際立ってしまう。
勧進帳のときも、様式的な所作の訓練を受けた役者さんでも、
すべてを映し出してしまうような橋掛かりを歩くのは
難しいのだな~と思ったけれど。

でも、演出家がそれを許しているなら、
何か別の意図があるのかもしれませんが、
私は、まったく理解出来ないで、こうして違和感を感じています。

りゅーとぴあ能楽堂「マクベス」公演観劇記1

2006-02-03 00:01:58 | りゅーとぴあ能楽堂シェイクスピアシリーズ
【出 演】
マクベス/市川右近
マクベス夫人/市川笑也
魔女達の盟主 ヘカテ/藤間紫(特別出演)

菅生隆之、谷田歩、市川喜之助、中井出健、
星和利、山賀晴代、松浦大樹、田島真弓、
横山愛、横山道子、塚野星美、住田彩、藤田ゆかり

作/ウィリアム・シェイクスピア
翻訳/松岡和子
構成・演出/栗田芳宏
音楽/宮川彬良
衣裳/時広真吾
製作/りゅーとぴあ(新潟市民芸術文化会館)、キョードー東京
製作協力/松竹株式会社、株式会社おもだか


りゅーとぴあ自体が総合娯楽施設(娯楽と言っては語弊があるかな?)
総合芸術施設というのは、ぼんやりとイメージにあったのですが
(広い敷地の中に、ホールや能楽堂が点在している、みたいな…)
まさか「能楽堂」がビルの5階にあるとは思いませんでした^^;

昨年夏、初めて千駄ヶ谷の国立能楽堂を訪れた際に感じた、
エントランスから醸し出される静謐への誘い的な雰囲気を味わうことなく
フツーにビルのエレベーターホールで△(上行き・笑)のボタンを押す…
という、とっても即物的な行為と共に会場に向かったのですが、
着席し(正面の席だったので)鏡板と対峙すると
す~っと澄んだ空気感と緊張感に包まれて行きました。

たぶん、他の観客にも同様の感覚を与えたのではないかと思うのですが、
開演直前には、静寂が客席を支配していました。

今回、個人的にとても興味深かったことのひとつが
「目付柱」(能舞台の構造参照)取り外されていたこと。
もう、劇空間の広がりの感じ方が全然違いました。(私の主観ではありますが)
よく、能舞台には無限の空間・宇宙や広がりがあるという言い方をしますが、
それは、イマジネーションの共有があって初めて言えることで、
物理的にというか、それこそ「即物的」な(私の)眼には、
目付柱はとっても邪魔でした@勧進帳
観る席にも(脇正面、中正面、正面)左右されるでしょうけれど。

逆に今回は、どの席に対しても、
常の能舞台とは異なる次元を提示したのではないかと思う。
この目付柱が取り外し可能なのは、
今回の講演会場の中ではりゅーとぴあだけ、との事。
それを聞いただけでも、新潟まで観に来て良かった~!!と思いました。
そして、「目付柱」のある舞台と、
とっくり見比べようと思ってます。
これは、ラストの右近さんの居所とも密接な関係があるので。
(また、↑この場の右近さんがメチャクチャ素敵なのだ!!)

勧進帳のときにはある種の制約、舞台面の分断を感じたのと相反して
(↑中正面だった…)
すごく、自由に、ひとつに繋がる大きな広がりを感じ、そして
それに気づいた瞬間、妙にワクワクしてしまいました。

照明の要素は、照度と角度だけですが、
状況と心理にピタっとハマり、ホント、「明るくする」か「暗くする」
かの単純と言えば単純な手法を繰り返しているのだけれど
ある場面でぱっと照度が上がった瞬間に、どきっ!とするほどの
インパクトを見せたり、闇だから恐怖というのではなく
逆に明るい白い光が凄みを与えたり…

SEも、常に低く垂れ込めるような雷鳴が効果的。
火急を知らせるからと云って、大音響にならない太鼓の音も

そして、音楽。
殆ど歌舞伎以外の舞台を観ていなかった私には
宮川彬良さんと聞いても、どういう方か
まったく存じ上げなかったのですが、なんと、
マツケンサンバⅡを書いた方なんですね~!!
そして、多方面でご活躍の模様。

魔女たちの奏でる旋律が、何か郷愁をそそられるような感じで
懐かしく、そして、恐ろしく
(例えば『通りゃんせ』って何か秘められた恐怖を感じません?
それと類似のものを、魔女たちの中に感じる)
でも、耳から離れません。終演後、同行者ともども口ずさんでは
魔女たちの体現する原初的な恐怖が甦り怖かった。
(話し飛びますが、この魔女の役者さんたちの仕事は素晴らしい

衣装も、モダンであり、かつstylizedされて
―それは英国式にも日本の伝統にも―いるようにも見え、
舞台と物語とよく調和していた。
(歌舞伎ファンにはサービスの?定式幕カラー(笑)の一着もあります。)

と、いろいろ述べてみましたが、とにかく、ひとことで言うと
演出が自分の生理に合っていて、とっても心地よく満足!!

―明日に(?)つづく―

追伸:時間割のお知らせ

【一幕】 1時間15分

―休憩15分―

【二幕】 1時間5分 









りゅーとぴあ能楽堂「マクベス」初日開幕

2006-02-01 02:14:04 | りゅーとぴあ能楽堂シェイクスピアシリーズ
★ちょっと加筆訂正2/2★

全日完売という大盛況の中、
りゅーとぴあ能楽堂「マクベス」が開幕いたしました。

簡単に感想を
(ホテルのロビーのPCが10分100円と高いのだ…)

演出と照明はかなり好みです。
SE(サウンドエフェクト)も良かった。
時広真吾さんの衣装も、能舞台にも歌舞伎役者の肉体にも
ストレートプレイの役者さんにも違和感なくマッチしていて素敵です。
右近さんのマクベス、歌舞伎&スーパー歌舞伎の演技・台詞術、
リーディングドラマなどで培かわれた「言葉」の表現力など
多様な引き出しからの造形、かつ、
非常に新鮮な一面も見ることが出来良かったです!!

笑也さんについては、贔屓であるがゆえ
こうして文字で表現すると辛口になってしまうかもしれませんが
本日の段階では、台詞の容量と対峙するに留まっている感じ?
台詞(言葉)の咀嚼と肉体が乖離しているかな~と思う部分もあり、
さらに練り上げられる事を期待。
(悪かった、ということではないです。というか
思っていた以上に良かったのですが!)
拵えは非常に似合っていて、特に横顔や、下からすくい上げるように
見上げる角度からの姿態は美しかった。

喜之助さんも、大役で大健闘。

詳しい感想はまた、帰宅してから、ゆっくりと書きます~。
どんどん進化していくだろうとの確信が持てる舞台。
明日も新潟の舞台を見て、すぐ東京公演も見ますが、
その日々の変化が楽しみです。

りゅーとぴあ能楽堂案内

2006-01-11 20:36:08 | りゅーとぴあ能楽堂シェイクスピアシリーズ
東京公演分は、昨年には手許に届いていたのですが、
本日、「マクベス」新潟公演のチケットが届きました。
ので、松竹座もまだですが、
浅草以来観劇もしていないので記事も少ない折り(笑)
まずは、「マクベス」初日の開く
りゅーとぴあ能楽堂のご案内を。
座席図も見れます。

31日は午前中仕事してから行くので、どうぞ新幹線動いてくださいまし!!
寒冷地の鉄道は、雪には強いだろうと思っていたけれど
今冬の大寒波で秋田新幹線は止まりましたからねぇ~(~_~;)
心配だから、前日から行こうか?と同行者と相談もしていたのですが、
公演もない日のために、余分に休暇申請は出来ません…
3月も(個人的には4月も!!@レ・ミ)ありますからね~。

しかし、JR東日本の「驚値」シリーズは、ホント、驚きです(笑)
31日出発は最低料金よりは高くなりますが
この時期、新幹線往復とホテル一泊付いてナンと、
9500円から出てる東京(関東)ー新潟のプランがあるのですよ。
二名以上からの予約となりますが、私たちは三名で申込みましたけど
トリプルでもそれぞれシングル取っても、同金額!ということで、
更に、びっくり~。(←これは使うホテルにより条件異なるようですが)
たぶん、今までの猿★征で一番リーズナブルじゃないかと♪
(マイレージ使用時除く)

富山、秋田、青森、北海道と、過去
東日本おもだか巡業猿★征も致しましたが
新潟は未開の地(笑)なので楽しみです。
段治郎さんの故郷ですよね?残念ながら、
今回ご当地公演とはなりませんが。
以前の鳴神巡業の大楽が大分の臼杵で
「なんで大分市内じゃないの~?」と思いつつ、空港から大分に出てから
更にローカルの4両編成くらいの電車を乗り継いで
訪れたたことがありますが、そちらは春猿さんのご縁のある土地との事でした。

一部の友人の間では、今回のマクベス@名古屋
「バレンタイン公演」と盛り上がっているようです(笑)

さ、この『チケットを手にした時の喜び』のために
今年も、頑張って労働に励まなくては~。

りゅーとぴあ能楽堂シェイクスピアシリーズ 「マクベス」2

2005-10-22 20:49:03 | りゅーとぴあ能楽堂シェイクスピアシリーズ
asahi.com MY TOWN新潟に、マクベスについての記事が掲載されています。

新潟市サポーターズ倶楽部



【追記】
え~記事タイトルはマクベスですが、以下コメントは、
2006年5月、中日劇場『雪之丞変化2006』についての投稿です(笑)

りゅーとぴあ能楽堂シェイクスピアシリーズ 「マクベス」

2005-10-17 22:35:54 | りゅーとぴあ能楽堂シェイクスピアシリーズ
りゅーとぴあのサイトに、新潟公演の詳細がアップされています。

【日時】2006年1月31日(火)~2月3日(金):19時開演/3日のみ14時開演
【会場】りゅーとぴあ(新潟市民芸術文化会館)能楽堂
【出演】マクベス:市川右近、マクベス夫人:市川笑也
    魔女達の盟主 ヘカテ:藤間紫(特別出演)

    菅生隆之、谷田歩、市川喜之助、中井出健、星和利、山賀晴代、松浦大樹
    田島真弓、横山愛、横山道子、塚野星美、住田彩、藤田ゆかり
    
東京、名古屋、大阪公演の日程なども確定のようですが、
後援会情報等は、基本的に会費を納めている会員さんへのご案内ですので
当ブログでのご紹介は、各能楽堂の公式発表や、
チケットセンター等の公開情報を待ちたいと思います。

★新潟公演>e+(イープラス)チケット発売情報

★東京公演>チケットぴあをご参照下さい。

★マクベス衣装デザイナー:時弘真吾さんのサイト

★マクベス演出:栗田芳弘さんと、横内謙介さんの対談国際交流基金のサイト


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