読み聞かせ日記@矢野学習教室(千葉県山武市)

矢野学習教室で読んだ本をご紹介。塾の日記も。

『君たちはどう生きるか』(中学生に紹介した本)

2023年03月05日 | 哲学・生き方の本
一昨日の中学生国語道場クラスでは、中1国語の教科書にも載っているこちらの本をご紹介しました。
 主人公は中学2年生のコペル君。
コペル君というのはあだ名で、本当の名前は本田純一君です。

コペル君というあだ名は、お母さんの弟にあたるコペル君のおじさんがつけたものです。コペル君のお父さんは、2年前に亡くなってしまいました。その後、郊外に引っ越したコペル君の家に、大学を出てから間もない法学士のおじさんがちょくちょく訪ねてくるようになったのです。

コペル君は、おじさんとの対話やノートを通して、人生における様々なことを考えていきます。
例えば、「友人関係」、「立派な人とは?」、「自分と世界のつながりについて」、「世界の学問や芸術について」など…
話は、人類の2000年の歴史にまで及びます。

こちらの作品は、少し前に漫画化されたので、内容を知っている生徒さんもいらっしゃって、内容説明の部分はあまり興味がなさそうな雰囲気(?)だったのですが、私がこの作品を書かれた時代背景について話しはじめると、クラスの雰囲気が一変しました。

(以下は、1967年に吉野源三郎氏が書かれた「作品について」を参考に、まとめております。)

1935年10月に山本有三氏が編纂された『日本少国民文庫』の第一回の配本、『心に太陽を持て』という本が出版されました。『日本少国民文庫』はだいたい毎月1巻ずつ出され、1937年の7月に完結しました。『君たちはどう生きるか』はその最後の配本でした。
1935年といえば、日本国内では軍国主義が日ごとにその勢力を強めていた時期です。1937年7月には盧溝橋事件が起こり、中日事変となり、日中戦争がはじまった年でもあります。
ファシズムが諸国民の脅威となり、第二次世界大戦への危機感が全世界を覆っていました。
『日本少国民文庫』の刊行は、このような時勢を考えて計画されたものでした。当時、軍国主義の勃興とともに、すでに言論や出版の自由は著しく制限されていました。
その中で、山本有三氏は「少年少女に訴える余地はまだ残っているし、せめてこの人々だけは、時勢の悪い影響から守りたい。今日の少年少女こそ、次の時代を背負うべき大切な人たちである。この人々にこそ、まだ希望はある。だから、この人々には、自由で豊かな文化のあることを、何とかして伝えておかねばならないし、人類の進歩についての信念を今のうちに養っておかねばならない」と思い立ち、『日本少国民文庫』を刊行されたのでした。

(ここから、私のクラスでの話に戻ります。)
クラスでは、こちらの年号を書きました。
1935
1937
1941
1945

自由な言論が制限される中、『日本少国民文庫』が刊行された1935年。
『君たちはどう生きるか』が刊行され、日中戦争が始まった1937年。
太平洋戦争が始まった1941年。
そして、東京大空襲、沖縄戦、広島、長崎への原爆投下、終戦の1945年。

1943年からは、学徒出陣も始まっています。

『君たちはどう生きるか』を読まれた方なら分かると思うのですが、この中に登場するコペル君やその友人たちは、今の中学生と何ら変わらない子どもたちです。
そして、『きけ わだつみのこえ 日本戦没学生の手記』を読んだ方は、その内容の深さに、「今の二十歳そこそこの人たちは、こんな考え方には到底いたらないだろう」と感じた人も多いと思います。
 
しかし、時代や政府によって、死の淵に追いやられるという理不尽な極限状態を経験させられているからこそ、そのような精神年齢や考え方に達して「しまった」とも言えるのではないでしょうか。

『君たちはどう生きるか』に登場するコペル君や友人たちは架空の人物ですが、コペル君に共感していた当時の多くの子どもたちが、その後、戦争で命を落としたり辛い経験をしたりしたであろうことを考えると、胸が苦しくなります。

世界情勢が不安定な今、日々の生活を守っていくためには、一人一人が自分の頭で、本当に大切なことについて考えることが不可欠だと思います。

『君たちはどう生きるか』では、「おじさんのノート」というおじさんからコペル君へのメッセージが随所に挟まれています。そして、コペル君は自分の考えを深めていくのです。
物語の最後は、コペル君がおじさんのようにノートをつけ始めるシーンで終わります。そこには、おじさんへのメッセージ、コペル君自身の気持ちが書かれているのですが、今の時代にこそ必読だと思います。

真剣に話を聞いてくれた生徒さんたち。
私の話が、彼らにとって考えるきっかけになっていれば嬉しいです。

こちらの本は、塾に置いてありますので、是非読んでいただきたいと思います。
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