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那須与一の章で、その美学を納得『平家物語を読む』

2020年01月24日 | 読書

2年にわたって受講してきた中世文学講座『平家物語を読む』は「壇ノ浦、滅びゆく平氏」のサブタイトルでいよいよ最終期に。その2回目「那須与一」、CDによる格調高い朗読を耳に入れながら、目で原文を追う。途中、古典特有の言葉遣いや物語の押さえどころなどの解説が入って状況、情景を理解する。この読み解きで心に留まったのは2か所。与一が思わず目をふさいで祈る場面では、失敗は許されないと覚えある故郷の神々に念じる若干二十歳ばかりの与一。その心中はいかばかりかと、つい感情移入してしまう。もう一つは見事に射抜いた扇が空に舞い、落下して海に漂う場面。紅と金色の扇の行方には夕闇せまる空、輝く夕陽、青い海、白い波。そよぐ春風さえも色を想像させる彩りあふれた描写に感服。さぞや盲目の琵琶法師も苦心して語り聞かせたのではと思ってしまう。そして後で読んだ配布資料の『古典講読 平家物語』により、さらに物語の奥深さを知ることになった。著者・梶原正昭氏は五つの段落による読み方指南とともに各場面の描き方、捉えどころを分かりやすく解説。読み手を引き付ける巧みな導入部、平家側の行動の謎解き、当日の気象条件の考察や与一苦悩の聞かせどころなど。そして両軍大歓声で終わる結末までの読み解きには頷くばかり。加えて文中で『古典への慕情』(石田吉貞氏著)の言葉を紹介。そこにはシェイクスピアに並ぶ日本の古典は『平家物語』であるとし、その中でも「那須与一」の物語を第一にあげている。<燦爛としたさびきわまった美しさのなかに、人間の悲しさ、存在の悲しさを>をみると。まさに深読みもここに極まれり、である。この資料を提供いただいた川上講師に感謝。と同時に後日の朝日新聞『天声人語』に掲載の<(高校国語が実用的な「論理国語」と文学・詩歌の「文学国語」に分かれて選択になる)心が揺さぶられる文学や評論に出会う機会が、減ってしまうことはないだろうか>の杞憂をあらためて感じてしまう。

             

      

 

 



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