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爽やかな余韻のまま『父がしたこと』

2024年07月09日 | 読書

藩主を幼少のころから支え、側近である父とその後を追う子の物語。江戸時代の麻酔による外科手術の詳細には固唾をのむ。直近まで漢方による内科治療しかなかったころのことである。受ける藩主も相当な覚悟だったと思うが、まかり間違えば断罪にもなる医者。その手術と術後を見守る父と子も同様の覚悟で臨む。そして少し前に生まれた赤ん坊にも外科的治療が必要な症状が。当時の医療技術、手術道具、薬草を主とした医薬品など、作者はよく調べ上げたものだ。すべてがうまく進み、ハッピーエンドの予想。しかし身辺に影がちらつきはじめる。家を取り仕切っていた母の死、父の早い隠居という日常の変化はまだ序奏。続く、医者の不慮の死亡、父の海難事故。それに予想外の展開が隠されていた。武家父子の過酷な運命に往時の医療を重ねた行く末。『実意深切』という言葉も初めて知った。藩主の物言い含め、登場人物の爽やかな余韻のまま本を閉じた。

                                       



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