晴耕雨読、山

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今度は感じとりたい『墨のゆらめき』

2023年12月25日 | 読書

「筆耕士」という職業がある。依頼を受けて賞状や慶弔案内の宛名などを毛筆で書く人のことだ。この本はホテルマンと筆耕士との交流を面白おかしく、何とも味わい深く綴る。探し歩いて男の営む書道教室を始めて訪れたホテルマンは破天荒な人物ぶりに驚きの連続。副業の代筆屋の手伝いもするはめになり、二度と訪ねるものかと帰るがそうはならない。書道家である男に引き込まれていく。話の展開はもちろんだが、読み手も興味がそそられるのは書の世界。『送王永』(おうえいをおくる)という漢詩を「欧陽詢」風に書くということは、どういうことか。調べてみると、端正な書風で楷書の手本の代表という。旅立つ友への送別の詩が、書家の全身と全神経による筆つかいで生き生きと蘇る。紙のうえに墨が流れ、その香りとともに<千年以上も前の人々の息吹、目にした風景、感じた気持ち>が伝わってくる。今まで見逃していた”ゆらめく墨の香り”。今度、そうした書を目にする機会あれば少しでも受けとめる努力をしたい。

                   



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