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過去ではなく今を生きた『ある男』

2020年01月18日 | 読書

興味をそそられた本のタイトル。この男とは、事故で亡くなった夫が別人であったという女性からの依頼で弁護士が探す人物のこと。本当の名前は。なぜ名前を変える必要があったのか。女性と結婚するまで、どのような過去をたどって生きてきたのか。名乗っていた名前の人物は今どうしているのか、今の名前は。警察も本格的に動こうとしない雲をつかむような難解な話。だが、ある裁判の記録を目にしたことから絡まった糸をほぐすように真相に近づいていく。それはサスペンスの様相を呈しながらも、関わる多くの人間の境遇や生き方、家族関係などの深部にも入り込んでゆく。そこには弁護士自身も例外ではなく織り込まれる。関東大震災や在日朝鮮人、死刑制度などの重いテーマや社会的問題も考えさせながら真実が明らかに。その労力と同様に読み終えるのに時間がかかった。だが女性と子供に安らぎの時間が戻って安堵。気になるのは弁護士のこれから。それは読者の想像に任せようとしたのか、考え込んだ終え方である。

                 

 

 



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