中爺通信

酒と音楽をこよなく愛します。

文化の危機

2014-07-15 23:30:50 | 雑記
 暑さが体にこたえる今日この頃。「こんな時には鰻で冷酒など」・・・とも思いますが、もう少し安くなったらと何年も我慢しているうちに「絶滅危惧種」に指定されたらしいですね。日本の大切な食文化もまた、消滅の危機に瀕しているということです。

 ひと昔前には、パーティーのBGMに四重奏で呼ばれて、控え室で出された弁当が鰻重だったことがありました。それも、重厚なお重に入った、結構ちゃんとしたモノ。「なんと豪勢なお座敷・・・いつもよりちょっと良い音出しちゃおうかな」などと思ったり。・・・もう何年もそういうことはありませんが、この先はさらに無いでしょうね。


 ところで「食文化」とは何でしょう?一言でいうなら、それは「想い出」だと思います。

 鰻は寿司と並んで、おめでたい時にふるまわれる、ありがたい食べ物です。家族や親戚の集まりなら、大人達はみんな機嫌がいい。「こんな時だから、ちょっと贅沢しちゃおうか」みたいなウキウキした空気があるので、すごく楽しくおいしく感じるのです。「あの時は、おじいちゃんもおばあちゃんも、嬉しそうに鰻重を食べてた・・・みんなまだ元気だったなあ」みたいな。それが記憶に刷り込まれているから、実際の味以上に、好きになる。

 昔話でもケチな男が、鰻屋の前に来て、蒲焼きの匂いでご飯を食べるとか、そういう話がたくさんありました。誰もが「美味しい」「食べたい」と思うはずのものとして、絵本にも出てきます。「天才バカボン」のお巡りさんが、「ウナギ犬」をなんとか捕まえて食べたがるのを、見ている私たちは違和感を感じない。「ウナギなら食べたがるのも無理はない」と子供ながらに思うのです。


 しかし、そういう「想い出」がないと理解もない。昔見た鳥の図鑑に、「すでに絶滅した鳥」のページがありました。ダチョウより大きくて、人が背中に乗れそうな鳥が「肉が美味しく、人間による乱獲により絶滅した」と書かれている。「・・・なんて野蛮な人たちなんだろう!許せない!」読んでこう思ったわけですが、ずいぶん勝手な言いぐさです。その人たちも、神に感謝して、部族勢ぞろいの祝いの席でめでたく、嬉しく食べたのかも知れない。それを一方的に責めるのは間違いです。

 
 さて。我が家でも、まだ買える今のうちに、ケチケチせずにしっかりと次世代に鰻の味を教えておくかな。

 よし、奮発して、今日はみんなでうなぎ屋さんに行こうか!

「え~、うなぎきらーい」
「骨が刺さるからやだ」

いつもは好みが分かれる兄妹ですが、鰻だけは一致して嫌いなのです。(・・・中島家の鰻文化ここに途絶える。)
コメント
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