中爺通信

酒と音楽をこよなく愛します。

生活習慣と恩寵

2013-11-26 23:22:40 | クァルテット
 だいぶ前ですが「キレやすい子供」というのが話題になった時に、カルシウム不足がその原因の一つであるという話を聞いて、驚いたものです。カルシウムに骨を強くする働きがあることは知っていましたが、まさか精神にまで影響するとは。そもそも、心の動きが物質に左右されるということに違和感をおぼえます。「ココロ」と「モノ」は対極にあるはずなのに。

 そう考えると「穏やかな人」とか「思慮深い人」というのも、もしかしたら固有の性格ではなくて、何か食べ物に含まれる、精神を落ち着かせるような働きの成分の影響かも知れない。

 ・・・たとえば、老成している人は、そうでない人に比べて「柴漬け」を食べる回数が多いという統計が出たら、それはつまり柴漬けに含まれている「なんとか酸」の効能なのかも知れない。そういうことがいろいろわかってくると、「あの人は良い人だ」というのも、その人の固有の美徳ではなくて、単純に食生活の問題、ひいては生活習慣病の一種と大差なくなってしまう。まあ、ここまでくると飛躍でしょうけど。


 ところで、これももうかなり前の話ですが、ベートーヴェンの遺髪がオークションにかけられて、それを手に入れた人がその分析を依頼したというニュースがありましたね。毛髪と毛根の分析で、ベートーヴェンが「鉛中毒」だったこと、それが元で例の難聴が起きていたことがわかったという話を聞きました。

 鉛中毒にはその他にも、腹痛や頭痛、かんしゃく、奇妙で気まぐれなふるまいなどの症状があるとか。それで「なるほどベートーヴェンにあてはまる!」ということでその信憑性が増した、と聞いています。

 しかし、そうすると何だか釈然としないものが現れます。・・・気性の激しさは天才ゆえのものではなかったのか?するとあの起伏の激しい音楽性も、鉛中毒の一つの症状だったのか?逆にテンションの低い私は改善のために鉛でも飲んでみるか?・・・などなど。


 また別の話ですが、梅毒がすすんで菌が脳に到達すると、一時的に異常にクリエイティヴになる現象がある、という話を本で読んだことがあります。もちろんその後に重篤な症状が出て創作どころではなくなるわけですが、実際に芸術家のそのような時期に生み出された傑作は少なくないとか。ヴォルフの歌曲などがその例だとも書いてありました。

 ・・・本当だとすれば、これも何だかイヤな話です。神の恩寵がもたらした奇跡と思いきや、病気の、しかも性病の症状の一つだとは。


 やはり、こんな話は忘れましょう。どちらにしても、凡人が何しても傑作は生まれないわけですから、やはり神に愛された天才のみが成し遂げうる奇跡であることに変わりはない。

 今、山形Qで取り組んでいるベートーヴェンの「第13番」も、奇跡としか言いようのない名曲です。人類の素晴らしい財産に、素直に感謝しつつ、その恵みに触れることにしたいと思います。
コメント (2)
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