中爺通信

酒と音楽をこよなく愛します。

勤労感謝と象

2012-11-23 14:05:03 | 雑記
 息子の国語の試験範囲に、宮沢賢治の「オツベルと象」が入っています。・・・懐かしい。中学国語では定番のひとつです。覚えてますか?

 オツベルは、大きな工場で百姓たちと機械を使って莫大な利益を上げている資本家です。そこへ突然、森から白い象がやってきます。オツベルは象を騙してこき使い、さらに儲けます。その使い方がだんだんひどくなっていき、象は弱っていきます。象が死を覚悟して神に祈っていると、ふと現れた童子が森の仲間の象たちに、助けを求めに行ってくれます。象がオツベルのせいで死にかけていることを知った仲間たちは、大群で押し寄せて、銃で応戦するオツベルを踏み殺して、その白い象を助けるのです。

 悪い奴をやっつけて、めでたしめでたし・・・と、なっても良さそうなものですが、今一つすっきりした読後感がない話です。


 仲間の象たちは、森の中で毎日楽しく暮らしています。「楽しく」木陰で碁を打ったりしてしているのです。白い象は多分、遊んでばかりの暮らしがいやになって、「働く」ということをしてみたくて、森から出てきたのでしょう。実際、白い象はこき使われても「ああ、稼ぐのは愉快だねえ、さっぱりするねえ。」と言っています。

 しかし休みも食事も減らされて、仕事がどんどんハードになると、疲れて弱っていきます。「ああ、疲れたな、うれしいな、サンタマリア。」さらに何日か経つと、「苦しいです。サンタマリア。」

 最後に仲間に助け出された白象は、「ありがとう」と言いつつも、寂しく笑います。

 いろんな読み方があるでしょうが、これは「会社でお給料をもらって働くこと」の本質がよく表れている話だと思います。仕事がしたくないわけではない。仕事は楽しいし、社長や上司だって、やっつけてやりたいほど悪い人ではない。ただ、「この待遇でこれ以上こき使われると弱ってしまいます」というのが本音のところなのではないかと。

 もちろん中学生には、授業でこんなこと言いませんけどね。


 さて、今日は「勤労感謝の日」です。日頃、会社で頑張っている人たちをねぎらいましょう。

 ・・・私はこれから定期の「オランダ人」の本番です。頑張って勤労いたします。
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