中爺通信

酒と音楽をこよなく愛します。

シュターミッツ

2009-02-13 08:54:54 | クァルテット
 「シュターミッツ兄弟は哀れなヘボ作家で、ギャンブラーで、大酒のみで女たらしです。私にとって、意味のある人間ではありません。かろうじて、そう悪くはないコートを着ているのが、唯一のとりえです。」(モーツァルトが父レオポルドに宛てた手紙より)

 今度の山形Qで「クラリネット四重奏」をとりあげる、カール・シュターミッツについては、その名前しか知らなかったので調べてみることにしたのですが、いきなりモーツァルトのこのひどい言葉。そこまで言うかな…。

 シュターミッツは、ご存知の人も多いと思いますがチェコ出身の音楽一家で、お父さんとその息子二人が「作曲家シュターミッツ」として知られています。この「カール」は長男の方です。1745~1801といいますから、ハイドンより12才年下でモーツァルトより11才年上になりますね。

 ヴァイオリンとヴィオラが上手だったらしいです。特にヴィオラは「驚くべき非凡なテクニック、天国的な甘い音色」であったと1792年にGerberさんも書いています(すみません、僕は存じ上げない人です)。要するに、天才的なプレーヤーとしてヨーロッパ中を旅して回ったようです。その時代の天才はだいたいみんなそうでしょうけど。

 そしてパリに長く住んで、華々しい生活を送ったようです。パリっていうところは昔からそうなんですね。絶頂期を過ごすのにぴったりな都市です。作曲の注文も死ぬほど来ました。またブルジョワが自宅で楽しむのにぴったりの雰囲気を持つ室内楽作品が得意でしたから、バカ売れしたらしいですね。本当に多作家だったようです。

 そんな時期のパリで、モーツァルトはシュターミッツに会いました。しかしそれは、カールではなく、弟のアントンだったようです。しかもほんの少し、チラッと会っただけらしいですから、あそこまでボロクソに言うほどの根拠は無かったんじゃないでしょうか?モーツァルトだって、それほど素行が良かったわけじゃないでしょうし。音楽家が同業者に厳しいのはいつも同じです。シュターミッツについての手紙も、その程度のことだと考えるべきでしょうね。(大酒のみっていう言葉は、やっぱり悪口なのかな…)

 しかしそんなシュターミッツも、その絶好調は長続きしません。実際に少し破滅的な所も、その性格にあったせいもあるかもしれません。やはりただの「残らなかった流行作家」とは違うものを持っていたせいであるかも知れません。それはまたの機会に。
 
コメント
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