建築・環境計画研究室 (山田あすか)

東京電機大学未来科学部建築学科

建築・環境計画研究室

この研究室は,2006年4月に立命館大学にて開設され,2009年10月に東京電機大学に移りました.研究テーマは,建築計画,環境行動です. 特に,こどもや高齢者,障碍をもつ人々への環境によるサポートや,都市空間における人々の行動特性などについて,研究をしています.

*当ページの文章や画像の無断引用・転載を禁じます*

Quest of RED  パーティで立ち向かう。

2019-07-13 06:39:37 | 【雑感・寄稿文他】建築・都市・環境探訪

 はじめに,以下は幅広い計画系の一部に位置する,また大学に籍を置く研究・教育を業とする筆者の個人的見解であることをお断りいたします。

 建築学会の会員誌「建築雑誌」の編集グループから,「研究と設計の関係について,建築計画の研究者の立場から寄稿してください」というご依頼をいただきました。2018年の9月号に掲載された記事です。もともとは研究者と設計者は別れておらず,研究と設計を両方やっていくことが基本だった。そこから,役割・活動範囲が分化していき,研究者でもある設計者,設計者でもある研究者の割合は少なくなった。もう一度,研究と設計を統合的に捉える必要があるのではないか。そういった問題意識のもとでの寄稿依頼でした。今の,計画分野ならではの状況と課題認識についても盛り込んでください,というリクエストもありました。

 そのお題に対して寄稿をしましたが,分量の制限があり(編集とレイアウトのご都合があり,3段階くらいで減っていきまして),カットした部分がかなりあります。せっかくなので,加筆してフルバージョンを残しておこうと思います。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

研究者と建築家。そう呼べばそれらが異なるように聞こえても,両者は根本的には「建築の職能者」グラデーションのなかに定位する位置と広さの違いに過ぎないと考える。設計の対象は大小の建築物全体に加えて,インテリア,テンポラリ空間,使いこなし,コンセプト,制度や仕組み,ガイドライン,イベント,まち・・と多様である。それらの実践を大きく捉えると,開発・製作・技術や専門的知見の橋渡しなども含まれ,これらに一切関わらない「研究者」は逆に珍しい。設計者や事業者選定(の支援)などもまた,専門的知見や技能と社会の橋渡しにあたる。一方,建築計画分野を顧みれば,拡大の時代に分化した専門分野が複合化・多機能化によって再統合されていく時代にあって,また人口と居住域の縮小が起こり社会支援の統合化も進むなかで,各職能者個々の定位エリアは拡大を免れず,多面的展開が必要になる。例えば従来の施設類型ごとの研究,その類型だけの研究という取り組み方はとても困難になっている。

 その加速する変化の中での研究と設計の関係を考えると,同時に,自己研鑽を含む教育や次世代育成を無視できない。新たな人材や視点が導入され続けなければ,その分野は衰退し消滅する。建築の職能者個人や組織は,研究・設計・教育を3枚羽根とする風力発電機のように,ニーズや社会的課題という風を受けて価値を創造する。3つのバランスは多様であってしかるべきだが,極端に偏りがあれば創造の効率が悪く,強い風でしか動けない。

写真:3枚羽根の風車。(フリー素材)

 一方で,大学の研究者の多くに社会貢献として実践の比重を高める圧があることを危惧してもいる。研究成果を活かした研究者自らによる実践活動は,大学や研究,研究者の成果や価値を視覚化しやすい。もちろん,実践活動を通して研究にリアリティのある進展が見込め,その価値は高い。だが皆が二兎,三兎を追えば,あるいは追わなければならないと強制すれば,結局は研究も設計も追求しきれないこともあるだろう。知識や技術が高度化・複雑化するなかで,幅広い研究や実践,教育を一人ですべて突き詰めることは不可能だ。その意味で,連携して3枚の羽根を成す体制が必要である。

 現実的には,自分の強みとなる研究・設計の分野を芯に,他とつながるための手(興味関心,共通言語としての最低限の知識や技術,敬意)を持つ「連携できる職能者」は強い。つなぐこと=ハブ機能そのものも重要な職能である。

 また敢えて言えば,自分は大学では一度は研究にしっかり取り組める体制をつくりたいと考えている。設計課題や長期インターンシップは必須になっているカリキュラムが一般的である。一方,研究による本質の探究や,そもそもを考える力と技術の獲得は,その実現のためのデザインの選択肢の拡がりや,他の研究分野への興味や基礎知識という手を増やすことにつながる。

 結論として,個人の職能領域の広さもさりなん,相互補完できるサブスキルをそれぞれが持つ戦士(設計に強い人),魔法使い(研究に強い人),ヒーラー(教育に強い人)のそろったパーティが強い。いかなる勇者も,1人では強敵に勝てない。全員が“すべてできる”“バランス型の”賢者を目指す必要もない。それぞれの得意が突き詰められていくなかで,新たな展開や突破口が生まれる。

 学会はさしずめ,こうした様々な得意をもつ職能者たちの出会いと別れ(新たな連携)の場である。

図:Quest of RED (This is some kind of game to advance with balanced Parties of Research, Education and Design)

 

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
賢者の石は,一般的には赤いものだと思われているようですね。合わせてみました!
 
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居間の位置のタイプと、独立住宅のプラン(間取り)タイプ

2018-09-26 21:18:11 | 【雑感・寄稿文他】建築・都市・環境探訪
これ、混同してるみたいな方がたくさんいたのでまとめました。



ホール は、玄関ホール ダンスホール のような、英語からの直訳だと「広間」なのですが、ここでは人々が行き交う場所、いっそ交通空間のように捉えると、わかりやすいです。
完全に通過だけの動線ではないけれど、ある程度の滞留を伴いつつ、基本的にはひとところに長時間滞在してはいない、人々が行き交う場所。
ホール。
イメージ共有できました?

で、そのホールの役割を持っている居間、空間のあいだの行き交いを結節する居間、が ホール型居間。

これに対して、行き止まり(端部)にあるのが袋式居間。袋小路とかの袋、クルドサックの時に説明した袋。

ホール型居間 をもっている、居間を心理的な、アプローチ的な、中心に据えている「間取り(プラン)」の住宅が、プランタイプにおける「居間中心型住宅」。

プランタイプにおける「ホール型住宅」は、ホール(≒交通空間、行き交う場所)をアプローチ的な中心に据えている住宅。

プランによる分類と、居間の置き方による分類は、違いますので注意してください。


(2018.9.27追記)

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マレーシア・コタキナバルまとめ(学会でした)

2018-09-17 14:51:26 | 【雑感・寄稿文他】建築・都市・環境探訪

 

【羽田空港にて】

 

公立刈田綜合病院(芦原太郎建築研究所)

エントランスホールと一体になった外来受付・待合は,空港の出発ロビー・チェックインカウンターホールをイメージしているそうです。

 

 

【クアラルンプール国際空港にて】

 

 

 

 

 

「鴨川アベック等間隔の法則」については, 森田孝夫,京都・鴨川河川敷に坐る人々の空間占有に関する研究 On Territorial Behavior of the People Enjoying the Evening on the Bank of the Kamo River,日本建築学会 学術講演梗概集. E, 建築計画, 農村計画 1987, 745-746, 1987-08-25 をぜひ読んでください。森田先生最高。

 

 

 

 


このトイレの性別と対応させた色分け,「わかりやすい」ので良い工夫ですねと思っていたんですけど(実際,10年前はそう教えていた),今のご時世に合っているか,今の価値観と対応しているかという観点から,あんまり良くないなと今は思っています。男女共同参画社会をめざし(まだ実現できてない),セクシャリズムへの反省が浸透してきた時代。小学生のランドセルも男女好きな色を選べるようになっている時代。好きな色の鞄,今日の気分の色の服を自由に選べる時代,LGBTへの理解も進みつつあるこの時代に,男は青・黒。女は赤。という固定概念を公共の建築物やサインが植え付けてくるこの国のサイン計画は,ちょっと立ち止まって考えてみたりしないのかしら,と。

 

 

 

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学校改修の事例について少し。(@道の駅保田小学校)

2017-11-04 12:31:00 | 【雑感・寄稿文他】建築・都市・環境探訪

ラフなレポートです。

 

廃校舎になった学校,学校の余裕教室(児童・生徒数が設計時点よりも少なく,結果として余っている教室)を活用しようという動き,以前からありますがここ10年くらいで聞く頻度が上がったように思います。

当研究室でもいま,「学校改修型の特別養護老人ホームでは,(もともとそれ用に設計されているわけではないので多少の無理もあって)介護者の負担感は大きいのだろうか?」という検証型研究のテーマが一つ,動いています。

ちょっと面白い学校改修・用途転用事例があると聞くと,「え?じゃ見学に行きます。いつがいいでしょう」状態で過ごしておりますが,先日また一つ拝見したのでそのレポートを。

同行された先生と,道中で建築計画研究はどこに行くのか‥という議論があったのですが,ますます「利用」に向かっていくのでしょう。というのが小職の返答でした。

それは従来の「使い方研究」となにが違うのかということも重ねて議論になりましたが,「新築建築物の検証と,次の新築のための素材集めとしての使い方研究」から,「その(種の)(既存)建物のなかでの使い方≒カスタマイズ,現状をもとにした改良・リカレント」の比重が高くなっていくのかと。

それに対して,「それってインテリアなの?」というご質問もあって,「そもそも,建築とインテリアを分けることはできないのではないですか,少なくとも包含関係で。建築ってソフトからハード,人間の心理・行動デザインからストラクチャーまで複数の軸による幅広いグラデーションの総体だと思いますけど‥」というちょっと曖昧な返答をしました。

 

「それ(利用者と建築物を経時的につなぎつづけるデザイン)ってインテリアなの?」

うーん‥どう考えますか?

 

はい。

今回お邪魔したのはこちらです。「道の駅 保田小学校」。

 

「買う(地場特産物の販売),食べる(飲食施設),泊まる(宿泊+入浴施設),知る(情報発信拠点)」の機能をもつ都市交流施設へと生まれ変わった小学校校舎,です。

 

コンペで早稲田の古谷誠章先生を代表とするN・A・S・A設計共同体が選定されて実施された事例,首都圏大学研究室連携で,多数の研究室・学生さんが関わったようです。

ようこそ鋸南(きょなん)プロジェクト

 

地域の主要道路(内房と外房をつなぐ幹線道路のひとつ)に面した立地だったので,道の駅としての再生が可能であったという,立地特性を活かしたプロジェクトとお見受けしました。

外房の側のエリアでうかがったのですが,この「道の駅 保田小学校」ができたために,バイパス完成で遠のいてしまった人の流れがこの幹線道路にも戻ってきた,とのこと。

 

小学校舎としての外皮に,一皮「まちの縁側(2階)」兼1階の庇の役割の構造体を重ねています。

ここは1階の商店へのアプローチ空間や,外構との緩衝領域になっています。

角度を変えると学校らしい雰囲気にも見えます。

お店のディスプレイに活用されている跳び箱。

「え,備品の除却申請はしてあるよね」などと思う程度には毒されている。

 

おくればせ。全体はこんな感じです。

 

水飲み場がそのまま(周囲はちょっと盛って平らにしてあります)残っていたりはノスタルジーを誘います。

 

旧校舎2階。宿泊施設として使われています。

元々の教室を2つに割って,4人部屋として提供されています。

宿泊施設+入浴施設(日帰りでも利用可!)はオープンにご利用いただけるとのことで,利用者も多いそうです。

建築系大学の方,ゼミ合宿にどうでしょう。

 

教室棟の2階教室群→宿泊室,の南側に増設された箇所には,「まちの縁側」が設けられています。

宿泊室のすぐ外側なので,どうだろう‥というところもあるかもですが,17時までの利用となっています。時間帯で棲み分け作戦です。

進んでいくと,旧校舎の外皮をそのまま活かしていますので,校章が見えたり,時計が見えたりします。

この角度で見ないものなので新鮮。

外皮側に設けられたパネルは可動式で,蓄熱ボードを兼ねているとのこと。

 

ちょっと面白い警告。掲示物は「保田小学校校長」の名前で出されているので。

ブーゲンビリアですね,綺麗な花ですが

確かに痛い。引っかかれました。警告意味なし

 

旧体育館は,物産館に使われています。

中は地産の美味しいもの素敵なもの,の直売所です(お客様が多かったので写真はNG)。

体育館の骨格だけ残してあと改修なので,全く違和感ありません。

 

 

 学校にはつきもの,の金次郎さんがいたり

学校らしさと,また違う場らしさと,共存を感じられる事例でした。

 

 

神戸の北野☆工房のまちでもそうでしたが,

「学校らしい単位空間(教室)」はそのままでも,商業施設の場合はそこからのあふれ出しや開口の雰囲気づくりで感じがかなり変わります。

こちらは中廊下型なので,片廊下型の保田小学校よりも廊下(内観)には商業施設の感じが出しやすいようです。

 

逆に教室らしい雰囲気を活かした利用をしているブースもあります。

歴史を残す観点でも,改修利用らしい意味を強調するという点でも,「学校らしさ」は残したい。けれど残りすぎると新しい用途となじみにくい部分もある場合も。「らしさ」をどこに落とすかは重要ですね。商業施設ではそのあたり,「ノスタルジーをウリにしたテーマ型商業施設」もあるなかで比較的納まりが良さそうです。

生活施設だとどうでしょう? 特別養護老人ホーム,サービス付き高齢者住宅,などに改修される例もありますがそのあたりだと。「学校や病院のよう(な全制的施設)に見える入居型高齢者施設,は新型特養に至る従来型施設への反省の表現としてしばしば用いられてきました。このへんはポイントになりそうです。

 

外観は商業施設にしては開口部が少ない,出入り口が限られる,という点でフラッと入店,を誘いにくいという面はありそうです。北野は。

保田の場合は,入口動線が車出入りに限られる→動線処理がしやすく安全,敷地内では1階店舗への入口を元テラス型だった形状を活かし,外廊下型として再整備したので出入りしやすい,という状況です。

 

一口に学校といっても,構造も立地もそれぞれなので,新しい用途との組み合わせでは考慮すべき点が違いますね。

そんなことを思った見学でした。ありがとうございました。

 

 

 

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大谷資料館にて(大好き)

2017-01-19 09:14:16 | 【雑感・寄稿文他】建築・都市・環境探訪
大谷資料館に行きました。

大谷石の採掘場跡ですね。
建築勢には、フランク・ロイド・ライトが惚れ込んで帝国ホテルの設計において採用した、あの大谷石。というと建築史の資料映像が浮かぶアレです。

数々のドラマ、映画、音楽PV等々の撮影にも使われるこの場所、「あれ、どこかで見たぞ感」があ?のではないでしょうか。
例えばニチアサ勢には仮面ライダー鎧武のロケ地として。
例えばるろ剣京都大火編、志々雄の拠点における火の櫓のシーンのロケ地として。

入り口にマップがあります。ダンジョンか


降りて行きます


うわこういうの知ってる
「あっこれドラクエで見たやつだ!」


とにかく


どこを見ても


素敵です

ライトアップ、光のオブジェによる演出がなされています。
個人的には若干、やり過ぎ感も覚えつつ(素ですごいのにさらに飾らなくても)、しかしこれは創作意欲掻き立てられるよなあ。と。

しかしやはり

自然光がある時間にはスッと入り込んできて、とかいうのがこう、グッとくる


くるんです

地下水が溜まっていて、地下水路を船で行くこともできるのですが、これは飛び入りの一般はいまは運行してません(ルート開発中だとか)。
船を手に入れてから再訪すると、奥の方で勇者の鎧が入った宝箱とかその脇の石の陰にちいさなメダルとかがあるやつですね。

そして…

あるんですよね!!それっぽすぎるところが!!


そして色が変わる!
これ、色のタイミングで宝箱開けたときに取れるアイテムが違うパターンですよね?
きっとそうだ間違いない。

盛り上がるポイントが違う気もするのですが

どこもかしこも絵になります。


たのしいなーーーー




ちなみにこの近くでのお食事には、和の中さんがオススメです。
餃子、中華です。
量多いので頼むときはご注意のほど。
みんみんのつもりで頼むと食べ切れません(お持ち帰りさせてくださいますけど)。







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来た、見た、建ってた 〜河東学園

2016-12-23 15:58:56 | 【雑感・寄稿文他】建築・都市・環境探訪
それはまだ私が修士の学生の頃。
師匠の研究室の有志+設計事務所の先生たち、が参加して取り組んだ「小学校・中学校・こども園・コミュニティセンターが一体的に整備された、地域コミュニティの核となる学園」。河東学園。
基本構想、基本設計、と進めて…
そのあと、市町村合併や計画変更、実施のあれこれ、自分の所属変更等々、師匠の退官と学長就任…あれこれ…
あり、
気づけば、竣工後に見に来てない!!写真だけだ!

というわけで

見に来た!
うわ!ほんとに建ってる!! 感 動 …

…お休みですから外観だけ…。

そうそう、もともとの敷地が水田(ゆるい棚田みたいな)だったのでその傾斜をね。
そうでしたそうでした。
懐かしい。




…私がメインで計画していたのはこども園部分なのですけど。
そこはあれです、まだこれから。
けど小学校部分と学園センターを見られたのでとても嬉しい。

やあ、今日は良い日だ。




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磯のあわびの片想い…ならぬ。さざえ堂。

2016-12-23 15:29:32 | 【雑感・寄稿文他】建築・都市・環境探訪
国重要文化財、会津飯盛山・さざえ堂。


1796年 考案・建立。
六角形三層の木造二重螺旋構造のお堂…



すごい。



こんな感じで、中はずっと坂


中には上り下りの坂をつなぐ箇所もあり、延々、上り下りの二重螺旋を楽しめます。

220年も前にこんな建物が建てられ、それが残っているのだから、すごいなぁ…

お近くにお越しの際はぜひ。必見。






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京の五条の橋の上

2016-12-12 17:50:36 | 【雑感・寄稿文他】建築・都市・環境探訪

 

「♪ 京の五条の橋の上」で始まる「牛若丸」の舞台,五条大橋は京都駅の北東方向,鴨川にかかっておりますが

(googlemap)

今日は京の五条の横断歩道橋の話です。今日・京・橋。

 

福祉転用京都会議の,見学会会場の下見,会場との事前打ち合わせ・準備の日に,福祉転用・コミュニティ研究の関係で団地をいろいろ見て回る時間をつくれました。

その話はまた別として,その移動中に「へえ,そうなんだ」がいろいろあった橋の話。

 

五条通を歩いておりますと,

 

たまたま時間あるよってことで,一部ご同行いただいた都市デザイン研究室の先生が「おお,あれは面白い」とおっしゃる。

「なにが面白いですか?」

 

この歩道橋だそうです。

「え,どこが??」

「橋脚の繊細さ,リベット留めの意匠,橋桁の薄さ・手すりの低さによる見附のシュッとした比率,マンション側への配慮として取り付けられている見切り板・・(延々)・・・」

「あー…そういうものですか…」

都市デザインの分野と,建築計画の分野の目の付け所の違いというか,ちょっと目から鱗でした。

 

さらに進むと交差点に架かっている歩道橋がありまして,

同じ意匠です。きっと五条通の拡幅の際に,一斉に架けられたのでしょうね。

 

「設置基準が変わったんだな,あとから手すりがつけられてる。やっぱりこういうデザインは今はできないですよ」

「え,なんで分かりますか?」


「ここ」

「?」

 

「橋の銘板の上に,手すりが来てるでしょう」

「あー,なるほど。先生,ちょっと建築探偵みたいです」

 

登ってみますと,

確かに見附が薄いので。シュッとしていて見通しが利いています。

美しいなって気持ちがしました。

 

「そして確かに手すり低いですね。」

「でしょう,落ちそうでしょう。僕の半分くらいです。今はもうこの基準は変わってしまっているので,こういう歩道橋はもう作れません」

(先生は背が高くていらっしゃるのでちょっとアンフェアな気がしますが)

「はい,手すり低いですね。既存不適格ってことですね」

「あとはっきり言ってめちゃくちゃ揺れますね」

 

銘板がありました。

「1965年の歩道橋指針」基準でつくられた,1970年3月竣工の歩道橋だそうです。

46年前。それは頑張ってきましたね。

 

あと個人的に面白かったのが,

バイクマーク,それ?

スクーター専用? そうなの?

 

あと,届きそうで届かない

アアアアア なんとかしてあげたいけどどうにもならない

 

この照明は,納め方がちょっと当初設計じゃなさそうだから,後付けされたのかなあ。

などと写真を撮っていたら,通りかかった老夫婦に「何の写真を撮っているのですか?」と訊かれました。

ええ,気になりますよね。そうですよね。

「イヤこの歩道橋,古いデザインなんですけど,今だと基準が変わってしまってこういうのつくれないので。面白いところが色々あるなと思って」

「ああ…そういうものですか? 普段見ているけど気付かなかったな」

「そうですねえ,身近にあると当たり前で気付きにくいことってありますよね」

「そういうお仕事をなさっているんですか?」

…“そういうお仕事”? …まあ,大局としてはそうかな…?

「あ,はい,そうですね。建築関係で」

「いつ本が出るんですか?」

「本?」

「まだちょっと…出版の目処はついていないんですけどね」

「あ,そうですか。じゃあ,がんばってくださいね!」

「ありがとうございます!」

 

 

「…励まされてしまいました」

「励まされてしまいましたね」

「若干誤解されてしまいました。…じゃあ,がんばりましょうか」

「がんばりましょう。え,何を?」

「調査の本筋に戻りましょう」

「ですね」

 

というわけで京の五条の橋の上のお話はこれでおしまいです。

あのすれ違った老夫婦も含めて,居合わせたひとたち“それぞれ”,見るところが違うなあ。

同じ世界に居合わせても,それぞれの環世界(Umwelt)のなかで生きているんだな,見えているもの感じているもの読み取っているものすべて違うんだな。

という,出会いとすれ違いと気づきの物語でした。

 

 

(参考)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

出典:世界の民謡・童謡,牛若丸 うしわかまる,<http://www.worldfolksong.com/songbook/japan/doyo/ushiwakamaru.htm>,参照2016.12.12

【試聴】牛若丸 みみちゃんレコード童謡集

<iframe src="http://www.youtube.com/embed/8DZ4wnAmMBM?rel=0" frameborder="0" width="480" height="360"></iframe>

【歌詞】 牛若丸

京の五条の橋の上
大のおとこの弁慶は
長い薙刀ふりあげて
牛若めがけて切りかかる

牛若丸は飛び退いて
持った扇を投げつけて
来い来い来いと欄干の
上へあがって手を叩く

前やうしろや右左
ここと思えば またあちら
燕のような早業に
鬼の弁慶あやまった

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ハルニレテラス

2016-11-26 22:00:38 | 【雑感・寄稿文他】建築・都市・環境探訪
設計製図の講義でオンサイトの鈴木先生から、最近のプロジェクト〜、で見せていただいたもので。
おお、行きたいなぁと思っていたら近くを通りかかるではありませんか?

行って来ました。ハルニレテラス。



白と黒、そこにクリスマスカラーの装飾が差し色になって。雪も映えますねえ。

配置図

(看板アップ)

地形と、元の立木をなるべく生かしたとのことで、テラスの段差の分散配置の家並みが気持ちよく繋がっています。
無関係のお客さんが写り込まない、というのがなかなか難しくてここに貼れる写真が少ないのですが…(混んでました!さすが!)


テラスの段差とファニチャの関係づけ。


既存樹木との取り合い


段差のところがそのままベンチになる仕掛け…だと思うのですけれど、今日は雪がココに溜められちゃってました


川に向かって開けたテラスがいくつかあります。それぞれ違うデザイン。違う性格。





石の削られ方で。座った時の関係性が違うわけですね。粋!


お店とのバッファになる軒。


それぞれの季節でいろんな表情が楽しめそうです。
富良野のニングルテラスも思い出してました。


すてきなところでした!




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石の教会

2016-11-26 21:50:20 | 【雑感・寄稿文他】建築・都市・環境探訪
車を返すルートと時間の関係でちょっと時間調整


雪の「石の教会」。
久しぶりに来ました。
良い風情です


冬モードのオーナメント



冬の木立の隙間から見える外観、きれいです。


8年前に初めて来た時、多分その時もうっすら雪が積もっていたな。

懐かしい気持ちでした。
教会の中は写真撮れませんので。
自分で行くしかない!ぜひ!

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意匠と計画の間には

2016-11-12 20:59:20 | 【雑感・寄稿文他】建築・都市・環境探訪

時々冷たい雨が降るけど,あたたかい日差しに満ちあふれるようにするのが設計の醍醐味ではないでしょうか。

 

どうもです。

研究の打ち合わせで,カッコイイ大学キャンパスに来ました。

巨匠の作品です。

カッコイイ。

よくドラマのロケに使われるそうで,教職員・学生に撮影のお知らせ(その時間帯に出ないでくださいとか,協力依頼)が来るんだそうです。

 

 

この大学の方(非建築系)に,キャンパスカッコイイですね? とお話をうかがうと,ロケなどに使われるカッコイイ建物なのは良いよね,でも「迷う」「寒い」「使いにくい箇所が」と色々ご評判があるようで。

 

(自分は守衛室がわからず,守衛室前に立っている守衛さんに,守衛室の場所を聞いてしまいました。バス降車場から死角になっていて見えなかったのです。ココだよと言われてもわかりませんでした。ビックリするくらい,見えないのです。そういう人が多いので,守衛さん,守衛室から出てずっと立ってらっしゃるのかと思いました。寒いのに。。。)

これが守衛室。

 

カッコイイ(意匠)と,使いやすい・迷わない(計画,環境行動),心地よい(環境設備)と,もちろん安全(構造,防災)を融合させていく,それらのバランスの中でどの辺に設計を落とすか。というのは総合芸術としての建築の課題そのものだな。と感じました。

 

でもかっこよかったです。写真たくさん撮りました。こういうのも建築の力だものなあ。。

 

こうやって後付けで経路表示貼られちゃうと,あ,動線認知にだめ出しされてる。

と読み取るのが計画の人。で,どういう風だったら良かったのだろうかと,考える。勉強する。次につなげる。

 

 

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建築・都市・環境探訪 目次

2013-10-21 11:08:03 | 【雑感・寄稿文他】建築・都市・環境探訪

住宅/集合住宅

集合住宅いろいろ(ロンドン近郊,パリ近郊,シュトゥットガルト近郊)

ヴァイセンホーフ・ジードルンクWeissenhofsiedlung (Stuttgart)

 

美術館/博物館/展示場

ポルシェミュージアムPorsche Museum (Stuttgart) Designed by Delugan Meiss Associated Architects

ケ・ブランリー美術館Musée du quai Branly Designed by J. Nouvel, G. Clément and P. Blanc

Pavillon de l'Arsenal

 

保育所/幼稚園/プレイルーム

園庭保育園と建築こども園

新しいプレイルーム! 検証も課題?

 

学校

サレジオ小・中学校見学会(DPⅤ)

空き教室/空き校舎利用

総合支援学校の観察調査

 

公共建築

原広司先生設計:札幌ドーム外周見学130904

 

公園/ランドスケープ

札幌市南区 石山緑地 【おすすめ!!】

 

病院/クリニック

篠崎産科・婦人科 お産の森 いのちの里

 

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ケ・ブランリー美術館Musée du quai Branly Designed by J. Nouvel, G. Clément and P. Blanc

2013-10-21 10:52:13 | 【雑感・寄稿文他】建築・都市・環境探訪

パトリック・ブランによるミュゼ・ドゥ・ケ・ブランリーの「生きた壁」。雨上がりでしっとり濡れていて、みなさんがそっと手を触れられていた。人を優しくする壁。 pic.twitter.com/ZRvdwqV32E


 
 
エントランスホール。左奥が図書室,まんなかがスロープで上階の展示空間にあがるところ,
その右側が下階のホールへの動線,右側がガラスの筒に展示された収蔵品。
 
「川」という作品に導かれて,緩やかなスロープを上っていきます。
文化の川。
 
 
 
 

ケ・ブランリー、内部。外側に見えているハコ、内側からはそれぞれ趣向を変えた展示スペース。まったく探検家の気分。直接ご覧になったときの感動を大切にすべく、仔細はぶきます。 pic.twitter.com/WRMRr92xoZ


ケ・ブランリー内部。緩やかなスロープで構成されていて、見えない人が手触りでルートを辿り、展示を楽しめる仕掛けがあります。車いすでももちろん大丈夫。触る壁は革張り。実際に数人お見かけしました。一緒に楽しめること、じんわり嬉しい。 pic.twitter.com/WzFo6fHkqI

 
さわって理解するための模型もあります
 

ちなみに、ケ・ブランリーは夕暮れ時に行くのがおすすめ。

外観をみているうち、だんだんと宵闇に沈んでいく庭、ライトアップで茂みはさらに深く見え、

 

 

夜の博物館の赤と黒基調の内装に黄色みの光で展示物が怪しく浮かび上がる。

(ほんと,暗くて撮れないので,写真撮るなら昼間です。目は暗順応してるけど,カメラは物理反応なので・・だけど夜の雰囲気最高)

 

「はこ」は夜はソトとの境界のガラスが見えなくなって,中からはさらに浮かんで見えます。

 

てすりのぐにゃぐにゃがおもしろい。 

 

 

興奮覚めやらず外に出るとキラキラのエッフェル塔。最高。

*エッフェル塔,毎時ごと(7時ジャスト,8時ジャスト,9時ジャスト・・・)に5分間キラキラします。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ちなみに最高に気に入った,夜の図書室。
 
 
 
ここからは,緑の壁の裏側にあるオフィス棟が見えます。
 
 
楽しかった。ぜひ夕方行くべし!!
 
 
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Pavillon de l'Arsenal

2013-10-21 09:40:33 | 【雑感・寄稿文他】建築・都市・環境探訪

Pavillon de l'Arsenal。都市計画や,集合住宅や複合施設による都市再開発等の地区計画の展示場。最新のプロジェクトなどもたくさん紹介ありおもしろい。地図になくわかりにくいけどSully Morland駅のすぐ近く。 pic.twitter.com/kH5AVRIVZX

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集合住宅いろいろ(ロンドン近郊,パリ近郊,シュトゥットガルト近郊)

2013-10-21 09:30:06 | 【雑感・寄稿文他】建築・都市・環境探訪

集合住宅1 ついでに旅先で見かけた「おっ」という集合住宅の画像も。DP4(集合住宅)のファサードデザインの参考になるかな? こちらはパリのBercy地区からセーヌ川の対岸を見てます。13区ですね。 pic.twitter.com/Bu3Ijb6WL1

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集合住宅2 同じく13区セーヌ川沿いの集合住宅。きれいなファサードです。右側が華奢なデザインで窓が大きくセーヌ川に向いて開いているのに,左側の住宅は壁面を多くとって開口を制限している,対比もおもしろいです。同じ条件なのにね。 pic.twitter.com/R4Ag52Eqmv

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集合住宅3 Bercy Villageから撮っています,引きがとれなくて見にくいですが,昔の倉庫街(いまはショッピングモールにリノベされてます)の軸線,昔軌道が敷かれていた軸線を空けて,ブリッジを渡して設計されています。 pic.twitter.com/C535zTuude


集合住宅4 3の建物の道を挟んで左側。ベランダをずらすことで生まれているリズムと開放感が好きです。 pic.twitter.com/9VbvsnPyWf

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集合住宅5 「ファサードのデザイン」の参考になりそう。壁の面とガラスの面,縦の線と横の線のバランスが好き。2年生だと(上級生でも・・),「のぺっ」とした外観で,ファサードデザインしていないケースが多いので意識してみてほしいです。 pic.twitter.com/ZfCRLJTwqQ

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集合住宅6 Pavillon de l'Arsenal (Paris) ,都市計画,地区デザインの展示場に集合住宅プロジェクト紹介のコーナーがありまして,そこで展示されていたものです。パリ17区のプロジェクト。 pic.twitter.com/zVe8CqQt6k


集合住宅7 同じくPavillon de l'Arsenalから。あんまり載せると著作権アレなのでここまで。他にも都市施設の紹介多数。何時間でも居られる。ガイドブックにはないのですが,すばらしい展示場なのでぜひお運びいただきたい。 pic.twitter.com/bno4h36HNx


集合住宅8 モンパルナス駅前の集合住宅。これはこれで・・迫力・・ pic.twitter.com/MPj4mhWAEB


集合住宅9 ロンドンの集合住宅(テラスハウス)。100年前からの建物に,手を入れながら大切に使う文化です。地震や戦災や,素材の違いや,日本とはいろいろ条件の差はありますが,わび・さび好きですよねお互い,としみじみ。 pic.twitter.com/NeYdxIqpLs

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集合住宅10 ロンドン。同じく100年モノ。この陰影のある表情,文句なしに大好き。 pic.twitter.com/pQqPoszOeP

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集合住宅11 ロンドン,ケンジントンガーデンズの前の。ユニオンジャックが翻っているところをみると,これはたぶん特別な…。完全にお城だわ。とにかくきれい。住みたいかどうかはともかくとして,目の保養です。 pic.twitter.com/6OiqGTzFD1

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集合住宅12 パリ郊外の集合住宅地。このデザインは,この周辺に以前からあった倉庫街の形状をモチーフにしています。あんまり生活の様子が見えないように撮ったので,見にくくて申し訳ないですが,この連なる感じはとてもステキだったのです。 pic.twitter.com/mYZzvxT4sN


集合住宅13 南ドイツの集合住宅。廊下側がこんなに素敵にデザインされているというところに感動。 pic.twitter.com/lggdFWmAGB

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集合住宅14-1 TGVから見たのだけど,どこだったっけ・・?フランスには入っていたような気がします。なんだかアジアンなテイストも感じたりして面白いです。たこから草の文様みたいで。 pic.twitter.com/I8zuTMR0wv

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集合住宅14-2 同じ住宅が,見る角度で印象がだいぶん違うので,そこもまたおもしろいのです。 pic.twitter.com/qlgUSOFona

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14-3 たくさん並んでると,目が回る・・・。しまうまがたくさん並んで,1頭分がどこまでかわからないという錯覚を利用して身を守っているというデザインのように思えます。 pic.twitter.com/JKN2VN0fmk

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