建築・環境計画研究室 (山田あすか)

東京電機大学未来科学部建築学科

建築・環境計画研究室

この研究室は,2006年4月に立命館大学にて開設され,2009年10月に東京電機大学に移りました.研究テーマは,建築計画,環境行動です. 特に,こどもや高齢者,障碍をもつ人々への環境によるサポートや,都市空間における人々の行動特性などについて,研究をしています.

*当ページの文章や画像の無断引用・転載を禁じます*

ケア環境づくり 全国ネットワーク

2010-05-31 11:15:06 | 研究日誌
日本社会事業大学社会福祉学部の児玉桂子先生が中心になって企画してこられた,
(現在は主に)高齢者のためのケア環境づくり 全国ネットワークのweb siteが立ち上がっていました.

【趣旨文(転載)】
わが国でも高齢者ケア環境に関する研究が多く蓄積されてきましたが、
その成果は一部のひとにしか知られていません。
「ケア環境づくり全国ネットワーク」は、
日本建築学会や日本認知症ケア学会などで活躍するメンバーの存在をアピールして、
高齢者ケアに関わる環境とケア実践の分野の連携の輪が広がることを目的にまず第一歩をスタートしました。

建築計画,福祉学などの分野では,いろいろと研究をしても,
それをどう社会に還元し,実地に活かすのか?
ということには課題もあったと思いますので,こういった取り組みから
よりよい環境づくりへの動きが拡がっていったらすばらしいと思います.




p.s.
ところで山田のページはなにか・・・
このイラストは・・・描いていただいたのであれなんですけど・・・
自分で「こうだ」と思っている自分の顔とは,ちょっとあれです.
シベリアとアラスカくらいは違う感じがします.
そうか,実際はこんな感じなのか・・・.
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佐野亮子:オープンスクール卒業生の追跡調査(2)-面接調査における学習環境に関する語りの調査-

2010-05-28 17:26:23 | 書架(こども関係)

オープンスクール卒業生の追跡調査(2)
—面接調査における学習環境に関する語りの分析—              

佐野亮子

出典:上智大学教育論集(34),22-31,1999


1.研究目的
 近年、我が国において学習環境の問題に関心が向けられるようになった背景の一つに、科学技術の進歩に伴って学校に持ち込まれた「モノ」すなわち物的環境の変化を挙げることができる。1980年代以降、単なる「器」や「道具」に過ぎなかった学校建築や様々な教育機器は「新しい学校空間」「新しい教育メディア」として、その重要性や可能性が検討されるようになってきている。学校の物的環境を児童の学習に影響を及ぼす要因として重要視し、積極的な環境整備を教育方法の一つに位置づけたのは、オープンスクールの教師たちであった。オープンスクールの教育は、児童が学習の主体者となる授業の中で「自己学習力」の育成を目指すものである。様々な「モノ・ヒト・コト」とのかかわりを通して自学を支援するという考えに基づいて学習環境が構成されており、児童の学びを深めるものとしては、物的環境も人的環境も同じレベルで考えられている。こうした学習環境は、児童にどのように受け止められ、卒業した現在どのように評価されているであろうか。本研究はオープンスクールの卒業生を対象として、追跡調査と面接調査を行い、その内容について分析・考察を試みる。

2.研究方法
2-1.調査対象
 開校後20年が経過し、現在も実践が続けられている3つのオープンスクールの卒業生を対象にする。
 *愛知県東浦町立緒川小学校  *愛知県東浦町立卯ノ里小学校  *岐阜県池田町立池田小学校
2-2.調査方法
  質問調査と面接調査の2つの方法で行う。質問調査では、�卒業した小学校の印象、�「学習」についての現在の考え方、�「学校教育」に対する現在の考え方、について質問項目を設け、4段階で評定を求める。面接調査は母校に来校してもらい個別で行い、時間は30分を目安として、小学校の思い出や小学校卒業から現在のことなどについて自由に話してもらう。質問内容については、�小学校の思い出、�小学校から現在までの教育の在り方について、�自己イメージ・自分の生き方について、�社会性について、対話を重視しながら具体的なエピソードを語ってもらうようにした。

3.研究結果・考察
 3-1.物的環境についての認知と評価
 �空間の開放性と学校の印象
  オープン校の卒業生は、校舎内部の空間が広いことについて多くが肯定的である。中学・高校で従来型の校舎を経験し、「仕切られていて圧迫感がある」「廊下の長さにびっくりした」「教室と廊下しかなくて薄っぺらくて狭い」と感じていたようだ。授業中自分の席に座り続けていなければいけないことに違和感や威圧感を感じた人も少なくない。
 �学習空間への意識・感情
  個別の学習形態が充実していく中で、オープンスペースや多目的ホールはみんなで使う「学習の広場」という認識が、次第に児童にも定着していった。それに対し、教室は私的な空間という意識が芽生え「私たちの場所」といった感覚をより強めたのではないか。オープンスペースに可動の壁があった小学校では、壁の移動には児童も手伝ったという。大壁面がスルスルと動いて、そのたびに空間の景色が変わる。児童にとってはそれだけで「ワクワクする」出来事だったそうだ。壁には学習に関係する様々な掲示物が貼られ、そこが学習コーナーになることもしばしばあった。このように空間づくりに直接かかわった経験が、校舎への印象や愛着を一層強めていると考えられる。
�授業の記憶と連動する学習環境
   一般に小学校時代の思い出の中に授業の話はあまり出てこない。教師の話を黙って聞いているだけの授業は記憶に残りにくいと考えられる。オープン校では、児童が積極的に「モノ・ヒト・コト」にかかわることに通して自ら課題解決をしていく授業が行われている。様々なモノを使い、多くのヒトと出会い、多様なコトに臨んだ経験が、その場所の風景とともに記憶に刻まれていることがわかる。
 �学習環境整備についての評価
  オープンスペースには、学習テーマや中心的な課題は大きな切り文字で象徴的に掲示され、学習のねらいや課題など具体的な内容が書かれた掲示物が貼られる。その周辺には関連図書や印刷教材、手作りの実験装置、視聴覚機器・教材や展示物などが置かれて、魅力的な学習コーナーが作られている。これらを単元展開中は経常的に児童が眺め、利用していることになる。こうした整備には、児童の学習成立を授業中のみに限定するのではなく、環境に介して日常的に学びを誘発しようという教師の意図があった。
 �モノとの出会いによる成果
  小学校時代のモノとの出会いが現在の職業に結びついている卒業生もいた。

3-2.オープンスペースにおける人的環境
 �空間の開放性とティーム・ティーチング
  オープン校に共通している学習形態で特徴的なのが、ティーム・ティーチングである。特に個別学習の場面では、オープンスペースを利用し学年でティーム・ティーチングを行うことが多い。学級担任以外の教師に叱られたという語りがいくつかあった。また違う学年の先生に褒められたり、叱られたりすることがあったようである。教室にこもらず、交流の機会をつくるために、自由に使える広いスペースの存在が重要ではないだろうか。
 �人的環境との関わりによる影響
  ティーム・ティーチングは校内の教師だけとは限らない。学習活動によっては、地域のボランティアや、PTAのお母さん達も児童に影響を与えた「先生」であった。様々な大人たちの技術や経験、人柄に触れる機会が児童にとっては活動の内容以上に貴重な学習経験となったようだ。校長先生や友達同士も学習を深めたり、広げたり刺激を与える人的環境となっていたことがわかる。

4.まとめ
・建築的な開放性はオープン校の教育方針と認知的不協和音を起こしておらず、肯定的な評価として語られている。
・児童が自主的に行動できるよう配慮された学習環境での活動は、従来の一斉指導による授業よりも記憶に残っている。
・小学校時代に主体的に学習環境とかかわった経験が、現在の自分に何らかの形で影響しているという自覚的な語りがある。

5.感想
面接調査や質問調査で得られていたデータの中には学校の空間としての記憶が多く残っていたようだ。教室に壁がないことや床に絨毯が敷いてあったことが強く印象に残っているようだった。また、オープンスペースでの学習やオープンスペースの空間づくりなど、児童が直接かかわった経験は記憶に残りやすいようだ。オープンスペースがあると学習形態も工夫されているので、従来の学習形態より記憶に残りやすいのではないか。様々なモノを使い、多くのヒトと出会い、多様なコトに臨んだ経験が、その場所の風景とともに記憶に刻まれていることがわかった。

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5月27日(木)のつぶやき

2010-05-28 01:18:46 | つぶやきの倉庫(あすか)

18:06 from web
女性だからという理由で呼ばれる/選ばれることは,女性だからという理由で呼ばれない/選ばれないことと同様あるいはそれ以上に腹立たしいことである場合もある.
18:08 from web
依頼論文委員役員その他...(見せかけの)女性進出率を上げる要員にカウントされるのはごめんこうむりたい,実績とか実力とか人柄とかで選んで貰えませんかできれば.人柄だと選ばれないかもしれないけど.
18:08 from web
実力でも実績でも選ばれないかもしれない(その可能性は大きい)けど.それならそれでいいので.
18:09 from web
でも「今日のゼミはケーキありますよー.あっ,おんなのコ優先ね!」といったお呼ばれにはうきうきしてしまう自分が情けないのであります.いただきます.もぐもぐ.美味.美味です.ごちそうさまでした.
by yamadaasukalab on Twitter

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山田あすか,佐藤栄治,他:小規模保育拠点の保育者による子育て環境としての都市環境評価に関する研究

2010-05-24 20:09:49 | 書架(こども関係)

山田あすか,佐藤 栄治,讃岐 亮

小規模保育拠点の保育者による子育て環境としての都市環境評価に関する研究
−0~2歳児を保育する世田谷区・家庭保育福祉員と京都市・昼間里親を対象として−

日本都市計画学会 都市計画論文集 No.44-3,pp.175-180,2009.10

1.研究目的
本研究は,仕事と子育ての両立の困難さや少子化などの,子育てに関する問題点を都市構造の観点から考察しようとする研究の一環である.我が国では,子育てと就労の両立支援の拡充が求められているが,都市部を中心に待機児童の問題が深刻化している.そこで自治体によっては保育サービスの供給において従来の大規模保育施設ではなく,小規模な保育施設を住居地域や駅前に設けて保育サービスの拡充に努めようとしている.しかし,こうした保育拠点による保育サービス提供を行うためには公園などの都市環境が周囲に適切に整備されていることが必須の条件となる.本研究は,公園や歩道などの都市環境を活用した小規模保育拠点(以下;拠点)に着目し,多様な拠点制度や地域差を視野にいれ拠点制度と都市環境のあり方が異なる保育拠点の保育者による都市環境評価の様相を比較・分析する.そして,拠点保育を支える環境として都市空間に求められる事柄を明らかにすることを目的とする.

2.研究方法
 調査対象として小規模保育拠点事業を実施する自治体のうち保育ママ制度の典型として世田谷区,同事業のモデルとなった「昼間里親」制度を実施する京都市を選定した.いずれの地域も都心部の商業地と住宅地が混在する地域に位置するが歩道の整備状況には差異がある.2つの地域を比較検討することにより都市環境が異なる地域における外出保育の位置づけ,保育者による外出保育時の都市環境への評価を明らかにするために以下の調査を行った.調査内容は�:運営概要と外出状況についてのヒアリング調査,�:終日の活動の様子についての観察調査(京都市のみ),�:キャプション調査法による都市環境についての評価コメントの収集とした.調査に際して保育者に「満足(好き・良い)/不満(嫌い・悪い)/満足でも不満でもないが気になる」(以下【評価】)ことがら(以下【対象】)を指摘してもらい,その理由についてのコメント(以下【理由】)の記録と対象の写真撮影を行った.これらの【評価・対象・理由】について評価の対象と理由を分解し,場面を[滞在]と[移動]に分けた上で,類似した内容をまとめていくという手順をとった.

3.研究結果及び考察
本研究の結果及び考察の概要は以下の通りである.
世田谷区・家庭保育福祉員7拠点,京都市・昼間里親8拠点を対象として調査を行った.
3.1.�,�の調査によって,対象とした小規模保育拠点における日常の中で外出保育の位置づけを把握した.外出時間は1~1時間半程度の事例が最も多く,外出頻度は毎日と答えた事例がほとんどである.外出時間に占める移動時間は京都市よりも世田谷区の方が総じて長く,滞在時間は京都市の方が比較的長い傾向がある.おもな外出先は2か所程度と回答した事例が多かった.しかし一方で,外部の状況によって外出を控えているという事例もあり,外出保育が出来るか否かは外部の状況に依拠している様子もわかった.総じていずれの拠点においても日常的に外出しており,都市空間が保育の場として重要な役割を担っているとわかる.
3.2.�の調査によって都市環境評価の整理を行った.
場面の[滞在]と[移動]別では世田谷区,京都市ともに評価の対象はそれぞれ30%と70%という割合で示された.このことから都市空間を利用する際には目的地はもとより移動空間についてより多くの意識が払われていることがわかる.これは移動空間の重要性を示す結果である.
<【評価】について>世田谷区では[満足]の割合が75%程度だが京都市では不満の割合が高い.これを[滞在]と[移動]別で見てみると[移動]の場面で京都市と世田谷区での[不満]割合の差が大きいことがわかった.これより両地域では[移動]場面での環境の価値基準に差異があると考えられる.
<【対象】について>評価の対象として意識に上る事柄は両地域において差異が大きく,類似性の低いものだった.
<【理由】について>両地域ともに多いのは[安全性][保育資源としての価値:遊び場所][保育資源としての価値:興味・発話のきっかけ]である.[安全性]は両地域ともに[不満]の割合が高く,特に京都市では[滞在/移動]場面のいずれも[安全性]の強い意識を伺える.その事に関係して[道の設備]を始めとした[道・道にあるもの]についても京都市では[安全性]の観点から[不満]と指摘された件数が比較的多かった.また,世田谷区では[保育資源としての価値:興味・発話のきっかけ]への[満足]の評価が多いことは特徴的である.

4.結論
 分析の結果,小規模保育拠点の保育者が都市環境を積極的に利用し,評価していることが分った.また,都市環境の利用の際には滞留する場所だけでなく移動の空間が重要であること,道だけでなく道に面する民家等の都市環境への寄与,外出保育時の人数規模による外出先となる都市施設選択の差異の可能性を指摘した.

5.まとめ
 小規模保育拠点において外出保育を行うために都市環境の整備は不可欠であり,特に移動空間の整備に保育者の意識が高いことが分かった.それはその地域の道路の整備状況や地域性も関係してきていると考えられる.一方で道路空間を積極的に保育に利用していることも分かった.これは調査を行った場所の地域性に依るものであるのかもう少し検討が必要であると考える.                                               
07fa021 大谷優

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5月15日(土)のつぶやき

2010-05-16 01:00:20 | つぶやきの倉庫(あすか)

10:52 from web
保育所の見学にうかがい,たくさんいただいてきた資料を読んでいます.このなかに,大型の遊具などをつくっている「アネビー」という会社の『園庭設計カタログ2008』という自社作品&商品紹介冊子があるのですが,そのなかの
10:53 from web
アネビー保育研究室:室長・高橋綾さん が書かれている,ある保育園での保育の一幕を紹介した箇所に泣きそうになっています・・
10:54 from web
(以下引用)  一本の大きな木の根が一面に張っている斜面を,根っこにつかまりながら,登るときもあります.ある時,斜面途中の木の根の付近で,こども達の列が渋滞を起こしてしまいました.
10:55 from web
(引用続き)  その光景を見た園長の声が,森の中に響きます.「みんな前の人と同じところを登るから,そうなるんだぞ.それぞれ自分の道をみつけて登れ」.  (引用終わり)
10:57 from web
ああ,これが保育で,子育てなんだなと.こどもたちが自分で自分の道を見つけて,自分の力で登っていくことができるように −道を教えたり,引っ張り上げたりまして抱っこして登らせてやるんじゃなく− 導くことがそうなんだな,と.あー,涙出ます.
11:05 from web
高校時代の英語の時間に,struggle one's way(困難をかき分けて自分の道を切り開く) というタームを習った(聞いた?)ことがあるんですが,それがすごく頭に残っていて,ときどきふっとそのイメージがわくことがあります.
11:07 from web
あー,いまstruggle one's wayだなー,などと. (この場合は正しくはmy own wayと思いますがタームの印象が強すぎて)
11:09 from web
自分にも,そういう「自分でやれよ自分で」を教えてくれた環境があったんだなと思うと,感謝の気持ちです.自分でやること,責任を持つこと,やるべきことをやること,に対する意識がないと,だいたい人間ダメになると思うので.その価値観をもてるように育てられてよかった.
11:11 from web
いただいたものはひとに(とくにこどもたちに)返していかないと.という信条なので,生物学的&社会的なわたしのこどもたち:みなさんに返していくので! 「自分でやれ!」ってね.今日から急にスパルタになってたら某園長先生のせいなので.
by yamadaasukalab on Twitter

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浦添綾子・仙田満・辻吉隆・矢田努:『あそび環境よりみた小児専門病院病棟の建築計画に関する基礎的研究』

2010-05-15 19:15:02 | 書架(療養環境関係)

あそびも大切ですが勉強のための環境とかも整えてあげるべきなのかなと思います。
病院のプレイルーム、実はあまり目にしたことがないです。
大きい病院は古くからあると基本的にそういう環境は後付けになるから整いにくいんじゃないかと思います。

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鈴木賢一・岡崎純子:『小児病棟における壁面装飾の印象と効果に関する研究』

2010-05-15 19:14:22 | 書架(療養環境関係)

何事もほどほどに、が大切だと思いました。
キャラクターものやカラフルな絵で埋め尽くされた壁とかはあまり落ち着かないかと。

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園庭保育園と建築こども園

2010-05-13 20:46:54 | 【雑感・寄稿文他】建築・都市・環境探訪

(山田あすか)

建築学会の福祉施設小委員会・こども施設WGの企画で,
保育施設の見学に行ってきました.
園庭の環境づくりに「ものすごく」力を入れている保育園と,
著名な設計グループが設計した幼保一体型施設です.

前者の園(仮称:園庭保育園)は名物園長の主導のもと,
それはもうものすごい情熱をかけて園庭をつくっています.
安全性を過度に保障することは,結局こどもたちから安全と危険を
学ぶ機会を奪うことだ,という信念が渦巻いています.
保護者の参加も並大抵ではなく,園庭の維持費をまかなうための
バザーや,卒園制作などなど保護者がこどもや保育園と
一緒に楽しんだり,成長したり,コミュニティをつくっていく
たくさんの仕掛けがあります.
こどもたちは本当に楽しそう(そしてとても大変そう・笑),
毎日冒険と挑戦の日々でしょう.

でも,待機児童はいないそうです.

説明会をすると,半分の保護者は「うちは無理です.他に行きます」
っておっしゃるのだそう.
まあ,その気持ちもわかるような・・(いろんなご事情や考えの家庭が
ありますから.こどもの性格(と親が考えているもの)もあるでしょうし).

後者の園(仮称:建築こども園)は室内環境,園庭環境もデザインされて
います,でも園庭保育園ほどつきぬけていない,というか・・
イメージでいうと,こどもが喜ぶ・よくできた公園チックです.
(対する園庭保育園は「ジャングル」)
こちらでは,幼稚園的(短時間)利用のご家庭と,保育所的(長時間)
利用のご家庭をどうつなぐか? 相互理解を促進するか? ということに
かなり心を砕いておいででした.
ふたつの施設の園長先生たちは旧知の間柄とのことで,図らずもお二人の
座談会が実現してしまったのですが,建築こども園の園長先生がおっしゃった
「いろんなご家庭があるので」「選択肢があることはいい,園庭保育園のような
園がひとつあるのとないのとでは大きく違う」という一言は耳に残りました.

園庭保育園は確かにすごい.でも半分のご家庭しか,選ぶことができない.
その理念に共感できる人たちが集まってきて,その環境をどんどん発展させて
いく.もともと,環境への共感力がある人たち.

じゃあ,そうではないご家庭とこどもたちはどこへ行こう?

建築こども園は,そういうご家庭やこどもたちも(もちろん,もともと環境への
共感力が強い方たちも)引き受けている.園庭保育所の仕掛けを100%だとしたら,
70%出力くらいに押さえておくことで,幅広い層を受け入れ,環境(づくり)への
共感力があまり高くなかったご家庭の共感力も高めていく装置となっているのかも
しれない.

このふたつの園を一日で見比べられたのはとても良い経験でした.座談会になって
しまった経緯も含めて,めちゃくちゃ有意義な一日でした.
もともと,建築こども園の方には調査などで入らせていただいたこともあったのです
がやはり再訪して,そのときどきのいろんな視点から見ていくことはすごく大切だと
思った次第です.

それから両園の園長先生がおっしゃっていた,「子育てを通して親自身が生き直したり
成長したりする,園はその親子の育ちをサポートする」ということは,この時代に
ものすごく大切なことだと思いました.

自分も子育てをしながら(させてもらいながら)彼と一緒に成長しようと思った次第です,
簡単ではないですけど.

 

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趙晟恩,佐藤栄治,他:多摩ニュータウンにおける子育て期の親による都市環境の利用と評価

2010-05-10 11:34:04 | 書架(こども関係)

2010.4.1(小林 陽)

多摩ニュータウンにおける子育て期の親による都市環境の利用と評価
  子育て環境としての都市環境評価に関する研究 その1

趙 晟 恩,佐藤 栄治,山田 あすか,佐藤 将之,西出 和彦



日本建築学会計画系論文集 第74巻 第643号,2003-2012,2009年9月


1. 研究の概要
背景と目的
近年の急速な少子高齢化の進展の一因として、親の就労状況や保育サービスの不備などのよる未就学児を育てることへの困難さが挙げられる。未就学児を育てやすい環境をつくるために、生活面での支援や都市環境、子育て支援サービスのあり方を一体的に捉えた子育て支援環境が望まれている。
この研究では子どもたちの活動の様子に主たる焦点が置かれているが、多くの場合、「どこに」「どのように」子どもたちと外出するかを決定するのは保護者や保育者であり、その決定には目的地や経路などの安全性や子どもの遊びやすさなど環境のあり方が大きく影響していると考えられる。そこで、都市環境を利用する際、子どもを連れた保護者や保育者がどのような環境要素に意識を置き、価値あるものとして評価しているか、あるいは問題と認識しているかを調べることは、子育て環境としての都市環境を考える際に重要な視点であると考えた。
屋内外の施設を含む都市環境を未就学児の子育てや保育につかう保護者や保育者の視点から都市環境の評価を試行し、環境の質の向上に資する知見を得ようとした。本稿では、計画的市街地における保護者による都市環境評価について論じる。

2. 調査の概要と方法
 調査対象地域の諏訪・永山地域は、1960年代から供給された多摩ニュータウンの初期開発地域であり、親子が自由に利用できる地域施設が計画初期に配置されたこともあり、多種多様な公共施設が整備されている。
 対象地域内での行動や評価対象の選定を被験者に委ねるキャプション評価法を用いて、子育て環境としての都市の評価を得た。
 調査方法は、携帯電話の写真撮影機能を用いて子育てするにあたって[満足]か[不満]か[気になる]ものを撮影しいてもらい、その【評価】を選択し、選択理由をその場面の「何【対象】」が「どう感じられる【理由】」から、という定型自由記述形式で明記する。(図2)
調査期間は2007年10月から11月の2ヶ月間である。


3. 子育て期の親からみた都市環境の認識と評価
1)満足
・全回答数の半数以上に該当し、都市環境に関して肯定的に捉えている撮影箇所が多いといえる。
・[公園][人的環境][催し物]は、ほぼ肯定的に捉えられている。
・都市環境の満足感は感覚的な認識を刺激すること、~できるという行動の確実性と選択肢の多様性、によって高まる。
・とりわけ子どもの遊びや関心を引き出す対象についてや、親自身の気分を和ませたり関心を引き出す対象について評価される。
・移動空間に子どもの遊びや親子の関心を引き出す対象や、自然の要素を配することで、都市環境の満足度が高まる。
2)不満
・[人工のもの]に対しての件数が突出して多い。
・都市環境の環境は親子で生活するにあたっては安全面においての負の評価が加えられやすいといえ、安全への配慮がより求められている。
3)気になる
・評価総数が少なく、満足の要因と不満の要因が混在した記述となっている。
・必要性や必然性は理解しつつも[不満]もあるため、[気になる]と評価するという構造にあると推察される。

評価された【対象】と【理由】についての考察
・遊具、スロープ、路面の凸凹、歩道における自転車と歩行者の混在による危険性、歩行時の車などは「有無」によって[満足・不満]の評価がなされており、対立する見解はあまりみられない。
・車止めのブロックや段差、植え込みや木々、オブジェなどの対象については被験者により異なる認識がなされ、様々な理由により評価がわかれる。
・子どもの嗜好や性行、子どもの年齢などの条件の差により評価に差が出ると考えられる。

4. 利用者類型と都市環境の認識・評価の関係
・保育所利用者については、他の利用者類型に比してコメントの総数が少なく、休日に写真撮影をした割合が高い。
・保育所利用者は公園という「場所」があることや公園自体の特徴などについて特に意識せず、公園にある「もの」について意識していると解釈できる。
・都市環境に対して事実を超えた保護者本人なりの意味づけや子どもにとっての価値を見出すコメントが少ない。
・幼稚園利用者は子どもが自然の要素を利用して遊べることについての評価が多い。
・幼稚園利用者を含め、その他A、Bは施設や場所本来の機能面について記述している例が見られた。
・都市空間へのニーズや評価には子どもの年齢差や移動の状況が影響していることが把握できた。

5. まとめ
 ・[公園][人的環境][催し物]は、ほぼ肯定的に捉えられており、子育て環境としての価値が高い。
・移動空間に子どもの遊びや親子の関心を引き出す対象や、自然の要素を配することで、都市環境の満足度が高まる。
・公園や建物に対しては、便利性・安全性が求められている。
・道や道になる事物については、安全に関しての配慮が求められている。
・物理的環境以外でも、親子で過ごすための機会を作ることが大事である。
・子どもの年齢があがるにつれ移動時に認識する対象に変化が現れる。
・社会的な子育て支援のみならず、都市環境が保護者の子育てや子ども本人の育ちを支援している様子が把握できた。
・都市環境の利用頻度の高い保護者と子どもにとって安全で遊びを見いだしやすい環境を提供する必要性が確認された。

感想など
・10月~11月ではなく春や夏など別の季節だったらまた違う気にするところがあったかもしれない。1年通してみたら どうなるのか気になる。
・調査期間が1週間なので、もっと長くしてもいいのではないか。
・「気になる」という理由は それぞれの人の嗜好によって変わってくると思うが、必要性は認めながら不便と感じるものをどうにかできないかと思う。
・都市環境は子どもの成長だけでなく、親にとっても影響を与えているのではないか。

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山田あすか,佐藤栄治,他:小規模保育拠点の保育者による子育て環境としての都市環境評価に関する研究

2010-05-10 11:00:30 | 書架(こども関係)

2010.4.1(小林 陽)

小規模保育拠点の保育者による子育て環境としての都市環境評価に関する研究
 − 0~2歳児を保育する世田谷区・家庭保育福祉員と京都市・昼間里親を対象として −


山田あすか,佐藤 栄治,讃岐 亮

都市計画論文集(44),175-180,2009
日本都市計画学会


1. 研究の背景と目的
 本研究は、仕事と子育ての両立の困難さや少子化などの子育てに関する問題点を都市構造の観点から考究しようという研究の一環である。
 小規模保育拠点を地域に多数配する保育サービス配置手法は早く安価に保育サービスを提供でき保育ニーズの変動に対応しやすいをいう利点がある。こうした保育拠点による保育サービス提供を行うためには、公園などの都市環境が周囲に適切に整備されていることが必須の条件となる。
 拠点制度と都市環境のあり方が異なる保育拠点の保育者による都市環境評価の様相を比較・分析し、拠点保育を支える環境としての都市空間の整備に求められることがらを明らかにうることを目的とする。

2. 研究方法
 国の保育ママ制度の典型として世田谷区と、同事業のモデルとなった「昼間里親」制度を実施する京都市を選定した。
1) 世田谷区・家庭保育福祉員
一人の保育者が3名までのこどもを自宅で保育する。7拠点で調査を実施した。
2) 京都市・昼間里親
一拠点での受入人数は10人。8拠点で調査を実施した。
調査が可能であった合計14の事例についてキャプション調査法を実施した。



3. 外出保育での都市環境評価
 京都市では世田谷区よりも保育人数が多く、外出時のこどもの人数もおおいなど運営上の条件も影響している。

4. 感想など
移動空間に立ち止まれる場所などをもうけ道をふれあいの場として発展させたらどうか。
 

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5月8日(土)のつぶやき

2010-05-09 01:39:44 | つぶやきの倉庫(あすか)

13:56 from web
子育て支援系のNPOを紹介する原稿を書いてという依頼をいただき,改めて「子育て」にどんな支援がほしかったかなあと考えています
13:57 from web
保育園・・保育園に迎えに行けないときのセカンド保育園(託児所/送迎サービス)・・これは便利でした.我が家はおこさんが小さいときは2人暮らしだったので.
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それで・・子育て支援広場事業とかはわたしはほぼ使ってないなあと思い,保育所を利用していたりの世帯ってたいがい使わない(使う暇がない)かもしれないという前提で,(一過性)専業主婦/夫世帯に多いニーズと認識してまあよかろうかとか
14:00 from web
保育所利用世帯の場合,保育所のあとまたは保育所がない日に出かける時間がないというのもそれはそれで切ないモノだと思うと,北欧なんかでは育児休暇がかなり制度としてしっかり機能していて(キャリアダウンがなくて)子育て支援事業が「~世帯向け」ということじゃなく全体向きに機能している
14:01 from web
といったことを考えると,保育所を充実すればそれでいいかというとそうじゃないよなワークライフバランスだよなと
14:01 from web
そっち系ってNPOじゃ支援できないよなとか
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男女共同参画シンポのパネラーやってとご依頼をいただいたときに感じた違和感:それを女性が考えて発信してもあんまり意味なくないですかというー女性(の働き方)が(極端に)変わらないためには,変わらないといけないのは男性の働き方ではないのですかというー 違和感がよみがえってきたり
14:04 from web
わたしの父親もうちのおこさんの父親も世間様一般の「普通」とは違うんだろうなあと思ってみたり,で,子育て支援NPOどうしましょうと,情報収集に戻ります.
by yamadaasukalab on Twitter

コメント (2)
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