建築・環境計画研究室 (山田あすか)

東京電機大学未来科学部建築学科

建築・環境計画研究室

この研究室は,2006年4月に立命館大学にて開設され,2009年10月に東京電機大学に移りました.研究テーマは,建築計画,環境行動です. 特に,こどもや高齢者,障碍をもつ人々への環境によるサポートや,都市空間における人々の行動特性などについて,研究をしています.

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認知失調症高齢者グループホームにおける空間構成と入居者の滞在様態に関する研究(2006)

2007-04-30 13:46:47 | □研究・設計業績(論文/プロジェクト等)

*主任研究者*

[第一住宅建設協会 研究報告書より]


研究報告要旨

 近年,認知症高齢者ケアを目的とした居住施設の一形態として認知症高齢者グループホームが注目されている.グループホームは,小規模で家庭的な環境での主体的生活が認知症症状の進行や身体機能低下の緩和に効果があると期待されている.
 グループホームの空間構成は様々であるが,居室と共用空間の関係,複数の共用空間同士の関係など,空間構成と入居者の生活の有り様にどのような関係があるかについては,未だ明らかになされていない.
 本調査研究は,入居者の滞在様態とグループホームの空間との関係を明らかにし,もってグループホームのあるべき空間構成について考察することを目的とする.
 本研究は,第部,第部からなる.
 第部ではまず,文献調査とアンケート調査によるグループホームの平面事例の収集を行った.次に,3章でグループホームの空間構成を,「居室と共用空間の関係」「(複数の)共用空間同士の関係」に着目して[廊下型・混合型・ホール型][一体型・分節型・分割型]への類型化し,これに基づいてグループホームの計画動向の整理を行った.また,アンケート調査の結果を整理し,既存建物改修型のグループホームについて運営者が感じるメリットとデメリットを整理した.さらに,4章では空間構成類型の異なる6つの民家改修型グループホームでの入居者の滞在場所を調べる終日観察調査の結果から,入居者の属性を勘案しつつグループホームの空間構成が入居者の滞在場所に与える影響について考察した.最後に,5章では改修によって空間構成類型が変化したグループホームの事例をとりあげ,空間構成の変化が入居者の滞在場所に与える影響について考察した.
 第部では,4つの民家改修型グループホームでの観察調査に基づき,入居者の視線:なにを見ているか,と対人距離に着目して,共用空間の空間構成や,共用空間の広さ,家具のスケールや配置などの建築要素のあり方について検討している.まず,2章で入居者の生活と入居者の一日の行動,ADLや認知症の程度と行為内容の関係を整理し,3章では入居者の行為を「会話のみ」「見る,眺める」「無為」に分類して,行為種別ごとに居合わせる他者との距離,姿勢(向き)のとり方,視線を比較して,それぞれの特性を明らかにした.4章では総括として,無為状態を軽減し会話を促すための空間スケールや設えのとり方,入居者の座席の配置などについて提言を述べている.


Abstract

Recently group homes for demented elderly people (hereinafter referred as "group homes"), a type of residential care homes for elderly people suffering from dementia, are attracting attention. Group homes are expected to be effective to slow or alleviate the progress of residents' dementia and physical inability, because of the relatively independent living style at small size and homely environment.
Though there is a variety of constitution of space provided among group homes, the relationship between a constitution of space and residents' living aspects, namely, the relationship between private wards and a shared space, or among shared spaces, are not clarified yet. The object of this research study is to clarify the relationship between group home residents' living styles and the constitution of space there, and thus consider what the desirable constitution of space should be offered to group homes.
This study consists of Part I and II.
In Part I, floor plans of group homes by collecting literatures and carrying out questionnaire surveys were firstly demonstrated. Chapter 3 then classified the constitution of space provided at group homes into the "corridor type + mixed type + hall type" and the "integrated type + segment type + division type" from the perspective of the relationship between private wards and a shared space, and among shared spaces. Based on the result thereof, the trends of group home planning were sorted out. In addition, by arranging the result of the questionnaire study, this paper sorted out the merit and demerit answered by managers at group homes that were rebuilt by improvement of general houses. Chapter 4 studied the effects of the constitution of space on the group home residents' selection of the place of staying while giving consideration to their attributions. This was lead by full-day observation researches conducted at six group homes that were rebuilt by improvement of general houses and are of different types of constitution of space. Lastly, Chapter 5 saw the effects of the change of constitution of space on the group home residents' selection of the place of staying by observing the group homes whose constitution of space had changed due to repairs.
Part II examined, based on the observation research at four group homes that were rebuilt by improvement of general houses, what architectural elements, such as the constitution of space and width of shared space, and scales and allocation of furniture, should be, while paying attention to residents' eyes - what they are looking at - and distance with others. Chapter 2 sorted out the residents' living and full-day behavior, and the relationship between the disability degree of ADL or dementia and its influence on behavior. Chapter 3 then classified the residents' behavior into "only conversation," "watch or see," and "inaction," and according to this classification, this paper clarified the characteristics of each type by comparing distance, posture, and eyes with or for others attending there. Chapter 4 suggests, as a conclusion, what space scale and furniture should be provided to decrease inactive state and to promote conversation, and what allocation of residents' sheets should be adopted. 

目次

研究報告要旨


 認知症高齢者グループホームにおける
  空間構成と入居者の滞在様態に関する研究・・・・・・1
    主任研究者 山田あすか

1.研究の背景と目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
 1.1 研究の背景
  1)高齢化の進行と認知症高齢者の増加 
  2)グループホームの導入とその急速な普及
  3)グループホームに関する先行研究と本研究の位置づけ
 1.2 研究の目的
 1.3 研究の構成

2.調査概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
 2.1 文献調査
 2.2 アンケート調査
 2.3 観察調査

3.グループホームの空間構成の類型化・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
 3.1 類型化の定義
 3.2 類型によってみるグループホームの空間構成の全体的な傾向
 3.3 新築型グループホームの空間構成
 3.4 改修型グループホームの空間構成
  1)アンケートで収集された平面事例の概要
  2)改修型グループホームの空間構成
 3.5 アンケート結果に見る改修型のメリット・デメリット
  1)アンケート結果の概要
  2)空間構成のメリット・デメリット
  3)改修型のメリット・デメリット,その他コメント

4.空間構成の異なるホームでの入居者の滞在様態の比較・・・・・・・・・・14
 4.1 調査対象施設概要
  1)An(愛知県犬山市):廊下型・分節型 
  2)Ff(石川県金沢市):廊下型・分節型
  3)Au(愛知県高浜市):廊下型・分割型
  4)Sa06(山形県米沢市):混合型・分割型
  5)By(長野県上田市):混合型・一体型
  6)Mg(長野県上田市):混合型・分割型
 4.2 各ホームでの入居者の生活
  1)調査の概要
  2)調査結果の概要
 4.3 ホームごとの滞在場所割合の比較
  1)滞在場所割合の整理
  2)各ホームでの場所別滞在割合
 4.4 入居者の滞在場所と空間構成
 4.5 属性による比較
  1)ADLと場所別滞在割合
  2)認知症の程度と場所別滞在割合
  3)ホームごとにみた属性と場所別滞在割合

5.空間構成に変化があったホームでの入居者の滞在様態の比 ・・・・・・・・32
 5.1 調査対象施設概要
 5.2 空間構成と滞在場所の変化

6.まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35
 6.1 研究の概要
 6.2 各章で得られた知見
 6.3 グループホームにおける空間構成のあり方
 6.4 今後の展望と課題


参考文献


 入居者の対人距離,視線の特性に関する考察・・・・・41
    研究協力者 山田和幸,生田京子,山下哲郎

1章 研究の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43
 1-1 研究の背景
 1-2 研究の目的
 1-3 研究の方法
 1-4 調査概要

2章 入居者の行動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47
 2-2 入居者の生活のようす
 2-3 施設別の入居者の行為
 2-3 身体状況別の入居者の行為
 2-4 小結

3章 入居者の行為と周辺環境の物理的関係・・・・・・・・・・・・・・・・50
 3-1 それぞれの行為と他者との距離・向き
 3-2 「会話のみ」時における相手との物理的関係
 3-3 「見る・眺める」時の入居者の視線
 3-4 「無為」時における他者との物理的関係
 3-5 小結

4章 まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・62
 結論

謝辞
参考文献

 

関連する研究成果:

  1. 山田和幸,山田あすか,生田京子,山下哲郎:入居者の対人距離,視線の方向とその先にあるものに関する試論 −認知症高齢者グループホームにおける入居者の行動実態の研究−,日本建築学会技術報告集 第28号,pp.535-5402008.10
  2.  山田あすか:民家改修型認知症高齢者グループホームにおける空間構成と入居者の滞在場所に関する研究,日本建築学会計画系論文集 第74巻 第638号,pp.781-7902009.04

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利用者行動と立体都市空間構成を反映した都市再構築のためのアクセシビリティモデル(2005-2006)

2007-04-30 09:25:20 | □研究・設計業績(論文/プロジェクト等)
*研究協力者*

[科学研究費補助金データベースより]

レコードタイプ 研究実績報告
報告年度 2006
研究期間 2005-2006
研究課題番号 05J52982
研究課題名 利用者行動と立体都市空間構成を反映した都市再構築のためのアクセシビリティモデル
研究代表者 佐藤 栄治  (サトウ エイジ) 首都大学東京・都市環境科学研究科・特別研究員(PD)
研究機関 首都大学東京 研究機関番号:22604
研究種目 特別研究員奨励費 研究種目コード:500
審査区分 国内 区分コード:21
研究分野[3] 都市計画・建築計画 研究分野コード:5303
キーワード 都市再構築 / 歩行距離 / 地形 / 身体能力 / 高齢者 / 換算距離
 
研究概要
本研究課題は,利用者の利用形態や身体条件と都市の諸機能を勘案し,都市の実状に近しい条件を付加した上で,利用者・居住者による都市の利用しやすさ,アクセシビリティを定量化する指標を開発し,グラフあるいは地図によって都市空間に内在するアクセシビリティを表現しつつ,最も「便利な」都市空間のモデルを構築することにある.
本研究では,人々が地形による上り坂や下り坂,階段などの起伏のある地域で生活する場合,それらの起伏が徒歩による生活の抵抗となっていることに着目した.特に高齢者にとっては,起伏による抵抗を受けやすい.新規の都市を計画する場合,または現在の都市を再構築する場合,さらに公共施設配置や都市の諸機能配置を考える時,これらの抵抗を考慮することは,都市計画上非常に重要なことである.年齢階級ごとの身体能力を指標化すること,また上記の抵抗を指標化すること,さらにこれらの指標を用いて「便利な」都市空間モデルを提示することで,これからの都市計画に非常に有用な知見を得られると考えた.
本年度は,昨年度行ったアンケート調査結果の詳細な分析と理論モデルの実証,理論モデルから実際の都市計画に利用できる都市再構築手法の開発を行った.実施した研究の概要は以下の通り.
1.移動目的先別の移動行動への指標の適用
傾斜路や階段を上り下りする場合の消費カロリーから抵抗を代謝的換算距離として理論化した指標を用いて,都市空間での,買い物,食事,公共施設利用,中心市街地利用の行動を,徒歩行動に着目して分析した.
2.高齢者に着目した地域居住者の人口予測と都市再構築手法の例示
徒歩行動の再現性を確認した代謝的換算距離指標を用いて,これからの近い将来に激増が予測される高齢者に着目し,居住者の徒歩による移動行動を最適にする都市再構築手法を例示した.


 
発表文献
1)Eiji SATOH, Tohru YOSHIKAWA:  
  "A Method to Quantify Accessibility in Urban Space Reflecting Space Function and Kind of Users -Focusing on Newly Developed Urban Space in Large Cities of Japan-"  
  International Symposium on Urban Planning 2006 Proceedings 2006.  260-270  (2006)  

2)中林綾, 佐藤栄治, 吉川徹:  
  "不動産価格の形成要因からみた多摩ニュータウンの居住環境評価"  
  日本都市計画学会都市計画論文集 NO.41-3.  677-682  (2006)  

3)佐藤栄治, 吉川徹, 山田あすか:  
   "地形による負荷と年齢による身体能力の変化を勘案した歩行換算距離の検討
    -地形条件と高齢化を勘案した地域施設配置モデル その1-"  
  日本建築学会計画系論文集 No.610.  133-139  (2006)  

4)佐藤栄治, 吉川徹:  
  "地形と年齢を勘案した歩行換算距離の経路立体携帯への応答 -2つの定義の比較"  
  日本建築学会大会梗概集 F1.  773-774  (2006)  


 
簡易URL http://seika.nii.ac.jp/search_pjno.html?PJNO=05J52982

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