建築・環境計画研究室
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地域施設計画研究38 2020年7月日本建築学会
建築計画委員会 施設計画運営委員会 地域施設計画小委員会
Regional Community Facilities Planning and Design, AIJ, Vol.38, Jul., 2020
イオンレイクタウンにおけるユニバーサルデザイン導入による影響と効果
-大型ショッピングセンターにおけるユニバーサルデザインに関する研究 その1-
日本建築学会大会学術講演梗慨集(北陸)2010年9月
上原健一 田中直人 老田智美
1、研究の背景と目的
高齢者や障碍者のみならずすべての人に使いやすく安全で快適なものが求められるユニバーサルデザイン(以下UD)。そのUDの導入を試みたショッピングセンター(以下SC)であるイオンレイクタウンにおいて、来館者を対象にその評価を把握し、今後の検討課題を導き出すことでUDの改善を図るための知見を見出すことを目的とする。
2、調査概要
新築開店後、約3か月半が経過した2009年1月に調査実施。調査方法はアンケート形式で調査対象者はレイクタウン来館者。主な調査内容としては ①来館者属性および雷管状況 ②属性別、滞在時間 ③導入したUD整備内容に関する評価 ④乳幼児連れ来館者による子供関連施設に関する評価
3、結果
施設全体の評価としては、他のSCと比較し、10項目について3段階評価を設定「良い=2点」「あまり変わらない=0点」「良くない=-2点」平均値を算出した。その結果「施設全体としての評価」が1.37点と最も高く次いで「店内のデザインや雰囲気」が1.35点、「トイレの利用のしやすさ」1.19点とつづく。すべての項目において0.5点以上を得ていることから、他のSCと比較してイオンレイクタウンが高い評価を受けていることが分かる。
さらにUD整備における3つの共通課題であった「駐車場」「子供用トイレ」「館内サイン」。これを既存のSCと比較してもらったところ、「駐車場」は出入口の遠目からの視認性を意識した大型サインの設置や視線誘導を図ったことが評価につながった。「子供用トイレ」はより多くの来館者属性に対応した選択肢のあるトイレ環境を整備しており子供トイレの環境の充実が評価された。また「館内サイン」は目的地の手がかりとなる情報について確認し、比較対象の施設に比べイオンレイクタウンの方が人に尋ねることが少ないことからサイン環境で十分機能が果たせていることが確認できた。
4、まとめ
①UDを導入したことで既存SCなどと比べ、総合的に高く評価されている
②SCの主力顧客である45際以下の来館者の評価が高い項目に対し、45際以上の来館者では比較的低くなる傾向が認められた
③既存SCでの共通課題であった「駐車場」「子供用トイレ」「館内サイン」に関する3項目は、積極的なUD導入によって解決が可能であることが確認できた
5、感想
SCでのUD導入の必要性というものがよくわかった。特に子供用トイレは子連れの利用者にとって必要な環境であり、男女両方のトイレに設置されるべきであると思った。
木村沙織
親と子の談話室・とぽす」の開設プロセスにみる「場の許容性」についての一考察
−「場所の主」へのインタビューを通して−
田中康裕、鈴木毅
日本建築学会計画系論文集 第74巻 第636号 379-386 2009年2月
1.研究の背景と目的
人々の交流する場として設けられた「とぽす」が開設されるまでのプロセスに注目し、物理的なものが設えられる際に、どのような状況を実現することによって人々がいることを許容しようとされたのかを明らかにする。
2.研究の方法
運営者への開設されるまでの経緯に至るインタビューや、座談会などの自由な発言による分析。
3.運営と来訪者の概要
オープン当初は子どもたちも訪れていたが、現在は30~50歳くらいの年代が足を運ぶ。
今でも学校帰りの子供たちが水を飲みに立ち寄ったり、子どものころ「とぽす」を訪れていた人が大人になっ て再び訪れているケースがある。精神的な病を持った人が落ち着く空間にもなっている。
4.まとめ・今後の課題
開設プロセスにおいて考えられたこと
1)外からの視線にさらされないこと
2)いつもと同じであること
3)そこに居られる大義名分があること
4)行為が限定されないこと
5)それぞれが別の事をしながら居合わせていられること
このような場をつくることに、運営方法やルールの設定などの多様な観点を含めた考察が今後の課題となるだろう。
5.感想
この場所においての「親と子」は「地域の大人と子ども」と言えると思った。
いまはあまり子どもが利用しているように感じられないので、どのようにすれば利用されやすいのか考えてみたい。「いつもと同じであること」が、逆に新しい人をいれる機会を少なくしているような気がした。
少子化社会における市街地高層高密度団地の活用に関する研究
定行まり子,小池孝子,井本佐保里
日本建築学会計画系論文集 第632号,2033-2039,2008年10月
1.背景と目的
1960年代後半から70年代にかけて,都市部では工場の移転に伴う跡地を利用して高層高密度団地が次々と建設された,都市再生機構によれば,1965年以降に建設した団地は建て替えを行わず,順次リニューアルを進めていく方針である.少子高齢化が予想される高層高密度団地を対象に,店舗や地域施設・オープンスペースの転用の履歴を追跡し,これらの共用空間が建設当初から現在までに,団地や地域の中でどのような役割を果たし,特に子供の住環境という観点から市街地高層高密度団地の存在意義,今後の役割を問いたい.
2.調査概要
調査対象となった団地の図面を収集し,住宅管理センターへの聞き取り調査及び現地に赴き,共用空間の機能変化,施設の用途変化を観察,子供の施設利用の観察を調査し,記録した.また施設利用者及び施設長へのヒアリング,アンケート調査を実施.さらに団地ごとの人口変化を知るために統計局に保管されているデータを収集し,分析した.
3.団地共用空間転用の変遷
団地は少子高齢化が急速に進む中でも,子ども施設への転用が建設当初から現在に至るまで目的や対象者を変えながらも常に繰り返されて,子ども施設は団地内に絶えず設置され続け,そしてそのほとんどが存続していることが明らかになった.
4.団地内における子ども施設の特徴
4-1子ども施設の利用者は,徐々に団地内から団地外住民へ変化してきており,少子化の進行が著しい団地においても,団地内住居者から地域住民へと対象を変化させながら運営され続けていることが明らかになった.
4-2団地内には豊かな屋外広場が確保されており,子ども施設は公園や施設周辺のオープンスペース等を活用して保育を行っていることが判明し,市街地では得にくいこれらの広場や子ども施設が存在することで,団地の地域の子どもの居場所として有効に機能していることが確認された.
4-3団地自治会等との連携によりイベントは常に子どもで賑い,施設に通うことをきっかけに休日も団地に遊びに来る子どもも多く,子ども施設の存在が団地に賑いをもたらしていることが確認された.
5.まとめ
子ども施設は団地活性化において重要な存在で,地域の活性化にとっても非常に有効である.施設間や自治会との連帯を強めるといった配慮も重要である.
6.感想
子ども施設と地域との関係について,詳しく調べてみたいと思った.
横井 玲伊
商店街における高齢者のたまり場に関する研究
—豊四季台団地内の商店街を対象として—
日本建築学会大会学術講演梗概集(北陸) 2010年9月 李潤貞 西出和彦
1 はじめに
孤独死が社会問題の一つとして懸念される日本において、地域の文化、コミュニティーの中心だった、商店街本来の姿を取り戻そうという動きが出ている。
本研究では、地域の公共空間の一つである商店街が人々の居場所となるための計画的要件を得ることを目的とする。その手法として豊四季台団地内の商店街のパブリックスペースが高齢者のたまり場になっている事に注目し、そこでの行動観察を主とした実態調査を行った。
2 概要
この研究は、商店街における公共空間での空間状況、および人の利用活動の実態を調べ、商店街での公共空間の利用のされ方を把握し、行動と空間の関係性を探る事を目的とした。
3 調査方法
2009年11月3日~11月5日の3日間、9時~5時までの間、豊四季台団地内の商店街を対象に、その中でも地域住民の利用が多い団地内商店街のパブリックスペースで現地調査を行った。利用する人の性別、年齢を推測して記録し、5分ごとにその利用行動を記録した。
4 調査の結果
商店街のたまり行為は、6か所のベンチで多くみられた。また、3日間の利用状況は時間の流れによって大きく変わった。また、たまり場ではおしゃべり、タバコ、寝るなど、様々な行動が観察された。
5 まとめ
(1) たまり場の形成に、ベンチや椅子等の座る器具が重要な働きをする。
(2) たまり場の選択場所や利用時間等、男女の性別により利用実態の相違が大きい。
(3) たまり場では人間同士の交流が生まれやすい。
今後、アンケートやヒアリング調査などによる具体的な調査を進めて、仮説を検証する必要があると考えられる。
6 感想
たまり場に集まる男女の利用時間の違いなど、さらに詳しく調べてみるのもおもしろそうだと思った。
なぜ集まるのか、実態たまり場にいる人に直接調査することが必要だと感じた。
09fa055 副島眸
「駅舎内における飲食店利用者のトイレ利用行動に関する研究」レビュー
仲川ゆり、越川康夫、村川三郎、堀敏之、高津靖夫
日本建築学会計画系論文集 第614号 2007年4月 09FA030小林志乃
目的
「駅舎内のトイレ適正規模算定法」の算定基準となるトイレ到着率算定条件設定のため、この算定法に影響を及ぼす要因のひとつとして駅舎内の飲食店に着目し、飲食店利用者の特性とトイレ利用との関連性を検討する。
調査概要
調査対象駅
・改札内にトイレと複数の飲食店が所在する(飲食店利用とトイレ利用の関連付けが煩雑にならないようにするため、複数のトイレの選択肢が距離的に考えられるものは除外)
・飲食店からトイレへの追跡が可能(飲食店間近にトイレがある)
・東京都内にあり、1日の乗降者数が50万人から110万人
各駅の特徴
A駅 付近に教育施設や住宅地が多い
B駅 ターミナル駅で、長距離列車の利用者も多い
C駅 周辺に事務所ビルやホテルが多く、新幹線が停車する
各駅のトイレの数・飲食店の数・店内にトイレがある店の数
A駅 1・3・0
B駅 2・6・3
C駅 1・7・0
調査内容
・駅トイレの利用者数
・飲食店利用者と飲食店内トイレ利用者状況
飲食店利用
飲食店利用→駅トイレ利用
飲食店利用→店内トイレ利用
・飲食店における利用者行動
着席時刻、退席時刻、性別、年齢、飲食内容
結果
トイレ利用率に関係に大きく関わる要因は、男女ともに飲食店での滞留時間、グループ人数、酒類の提供であった。
男女比と年代はあまり関係しないと考えられる。
飲食店数と駅トイレ利用者数に対する飲食店利用者数は比例関係になる。また、3駅ともに女性の割合のほうが男性よりも高くなっている。
店舗の増加によりトイレの適正規模を検討する際には、男女別に利用者数の増加を検討する必要があると考えられる。
感想
女性の方がトイレを多く利用しているイメージがあったので、トイレ利用率に男女比があまり関係しないという結果におどろいた。また、飲食店での滞留時間と酒類の提供がトイレ利用率に関わるのは納得できるが、グループ人数が関係するのは一人よりもグループでいる方が店舗に長居してしまうから、ということなのだろうか。
この調査では、店舗に間近のトイレが対象であったが、休憩スペースなど店舗ではないが飲食をする可能性のある場所付近のトイレでも似たような結果が出るのではないかと思った。
「祭事における商店街来街者の座り空間整備に関する研究」レビュー
平田圭子、浅沼則行、菅原辰幸 日本建築学会計画系論文集 第76巻 第663号 2011年5月
09FA030 小林志乃
目的
本来座るところではないが、催事の時など疲労や飲食のために座ってしまう物や空間などを通して、祭事以外の日常においても来街者の身近で役立ち、気軽に外出する助けとなる空間整備の新しい指針を得ること
研究方法
現地調査とアンケートによって実施した。対象地は広島県郊外にあるコイン通りである。
祭事の現地調査
祭事が行われている商店街などの調査
祭事の内容や祭事空間分類及び祭事空間のイベント内容と来街者との関係
座り空間の分類
座り空間での体勢
コイン通りにおける祭事の座り空間に関するアンケート調査
地域住民のアンケート対象者の属性、祭事に行く頻度、行く祭事、祭事に一緒に行く人数、祭事に行って困ること、滞在時間、滞在時間ごとの座りたくなる目的
祭事の座り空間の場所別の座る目的、理由
コイン通りにおける散歩行動の座り空間に関するアンケート調査
地域住民のアンケート対象者の属性、散歩行動の実施、時間、ベンチ以外での座り空間
散歩行動中の休憩場所の提案プランに関する利用希望とその是非、座り空間に欲しい機能
調査結果
1)広島県内で行われている13の祭事の現地調査から、座り空間の分類においては、最初から座るために用意された椅子やベンチ・テント以外に、祭事を取り囲む空間形態の中から高さや幅などのなんらかの要素を利用して、来街者が座る様子が多くみられた。
2)祭事に関してのアンケート結果から
祭事に行って困ることのひとつに「座る場所」があげられている。
座る目的として、休憩・飲食・パレードなどの見物・コミュニケーションが挙げられ、座る場所は仮設のベンチや椅子であるが、段差・縁石・駐車ブロック・階段などにも多く座られていた。
3)散歩行動に関してのアンケート結果から
ベンチ以外の座る場所は、階段・縁石・車止め・ガードパイプに腰かけたり、寄りかかっている例が多い。
また、利用したい座り空間は植木鉢・車止めポール・ガードパイプが多く、利用したくない座り空間はブロック塀・フェンスが多かった。
散歩行動中に座り空間は必要か、という質問には約半数の人が必要だと答えた。
散歩行動中の座り空間に欲しい機能は、荷物置きとしての場、衣類の汚れない、体を預けても安定感のある背もたれが求められている。
以上のことから非日常的な祭事空間だけでなく、日常的な生活空間で座り空間の整備における指針と成り得る指針のいくつかを得られた。
感想
祭事の時に本来座るためのものではないところに座ってイベントを楽しむことも、非日常なわくわく感が高まるという人もいると思うので、祭事の時を想定した座り空間をあまり重視しなくてもいいのではないかと思った。ただ、日常の中で座り空間が必要だという意見が多かったので、日常的に使われ、地域の交流場にもなり得る空間である、座り空間の整備は重要だと思った。
街路空間における滞在行動に関する研究
日本建築学会大会学術講演梗概集2001年9月 吉野真也 奥田宗幸
1. 背景と目的
人々は街路において、腰を下ろし周囲で起きる出来事を眺めたり、休息したりする傾向がある。人の滞在行動を促進したり、制限する空間構成要素及びその利用のされ方を把握することは快適で賑わいを持った街路を設計する際に非常に有用だと考える。本研究では、滞留行動の分布・滞留状況と空間構成要素の対応関係から、空間構成要素がいかなるとき、街路利用者の滞留行動が発生するのかを実施調査した。
2. 研究の概要
<事例選定条件>
1.歩行者専用街路またはそれに準ずる街路であること
2.商業地域(又はそれを含む区域)に面する街路であること
とした。
<実施調査と分析用データの作成>
デジタルカメラにより滞留行動を撮影し、その位置を地図にプロットした。プロットした点が5ヶ所を越える部分を滞留箇所とし、そこで物理的要素を実測した。
<分析と考察>
街路全体の視点と滞留箇所における部分的な視点から、滞留行動の分布・滞留状況に影響すると思われる空間構成要素の項目を挙げ分析・考察した。
3. 街路全体にみる滞留行動をアフォードする構成要素
街路からセットバックした部分、街路上に点在する構造物周辺、公共性の高い建物の外部空間、テイクアウト可能な食物サービス周辺に滞留行動が集中し発生しており、それら構成要素が滞留行動をアフォードしていると考えられる。
4. 滞留箇所にみる滞留行動をアフォードする構成要素
座具として利用できるもの周辺とそれらが近接している箇所、腰掛けた際の背面の設えとして植栽を有する箇所などに滞在行動が多く発生しており、それらが滞留行動をアフォードしているといえる。
5. 滞留行動をアフォードする手法
<街路全体における手法>
・人がとどまれる場を生成すること(構造物を点在させる、凹凸をつくる)
・着座する場所を多様に用意(街路の外縁の手すり、植栽帯の配置)
・飲食しながらの滞在行動を可能にする(テイクアウト可能な食物サービス) などがあげられる。
<部分的な箇所における手法>
路面との差異を生み出し、座面を用意すること、植栽帯を背面に配し背面の仕上げから滞留
アフォードする手法などが考えられる。
6. 総括
実施調査を基に街路における滞留状況とそれに影響を与えている空間構成要素を街路全体からのマクロ
な視点、滞留行動が多く発生した滞留箇所でのミクロな視点から把握することが出来た。滞留状況と空間
構成要素の様態との対応関係から空間構成要素の持つアフォーダンスを抽出し、設計段階でこれらを用いることで、これれまでの設計とは異なる人間の行為を主体にした手助けとなるだろう。
7.感想 空間の構成要素も大切であるが、設計の際は、その街路を、通勤・通学経路として用いる人のことも考え、安全性や快適性など、他の要素も考慮することが滞留行動を促す要因としては大切である。
歌代有起
09/02/10
シリーズ〈人間と建築〉1 『環境と空間』
高橋鷹志、長澤泰、西出和彦[編]
2280060053-0 藤田晴彦
シリーズ〈人間と建築〉について
本書は、「学部・大学院を問わず講義や演習の副読本として、自在に利用できるような、近年行われた個々の計画研究の成果をわかりやすくまとめた叢書を企画」し作られたものであり、シリーズ〈人間と建築〉として、『環境と空間』、『環境と行動』、『環境とデザイン』の3巻でまとめられている。
本書はその第1巻であり、「個人の身体空間や知覚空間におけるP-in-Eの諸相を分析したものとなった」巻である。(P-in-Eとは、Person-in-Environmentの略称)
1.人間と環境
1.1人間にとっての環境
○住環境とは、一日の変化、季節の変化、まわりの人々の生活、植物、動物などの生態系も含み、「環境を構成する要素1つ1つはどんなに些細なものでも、一見不要に見えるものでも、不必要なものはない。フォーマルにせよインフォーマルにせよなんらかの役割をもっている。」
○空間を作る建築物(木、コンクリート、鉄、鉄などの材料で、壁、床、屋根・天井、柱などでつくられる)も環境のひとつであるが、人間も環境のひとつとしている。腰掛けている人がいることで、それを見てまた次から次へと人が座っていき、人が集まる賑やかな場ができる。つまり、人間が環境をつくり出す役割を担っている。
○1つの建築をつくることは単にそれだけのことではなく、周囲の環境や既存の街・村との関係を生み出す。重要なのはいろいろな立場でいろいろな関わり方をもつ人間との関係をも生み出す。
1.2人間の視点から見た環境のとらえ方
○我々が動き行き来できる範囲を限定したり支えたりする境界面、すなわち壁や床や天井などの面は、人間行動に対して直接的な役割を果たす。空間を変えると人間に対する行動の可能性が変わる。それをその空間の目的と合うようにすることが空間デザインの意義である。
○デザインとは今までにないまったく新しいものを提案することに意義がある。「環境の問題点を見出し、そのより良き、あるべき方向を考え、実現するための基礎」として、環境に関わる様々な立場の人々が人間と環境の関わりをよく見る必要がある。
⇒建築をつくるということは、環境をつくるということであり、どのような材料でつくるか、どのような平面計画にするかということも大切であるが、人にどのような心理的影響を与えるか、どのような行動を促すかということも考えてデザインすることを進めなければならない。
2.人体のまわりのエコロジー
2.1身体と座
○人間の視点からの環境デザインを試みるときに着目すべき重要な概念に、行動セッティングとアフォーダンスがある。
行動セッティング(behavior setting)…特定の時間・空間において繰り返してある行動が生起する社会的・物理的な諸状況を意味する。
アフォーダンス(affordance)…知覚者によって見出される環境が備えている資質のこと。
○休息する姿勢は様々あり、物的環境が様々な姿勢をアフォード(提供する、可能にするの意
)する。「後方によりかかる姿勢」「しゃがむ姿勢」「腰かける姿勢」「肘をのせて支持する姿勢」「脚をのせて支持するしせい」「脚をのせて支持する姿勢」「身体をはめ込んで支持する姿勢」
2.2人間のまわりの空間
○人が生まれ育った文化・習慣によって、人との距離のとり方、パーソナルスペース、指示領域は異なる。
2.3空間の視知覚特性
○人間は広く開放的な部屋で過ごしたいという欲求をもつ一方、小さく閉じられた部屋で落ち着きたいという欲求も併せ持っている。
⇒休息する姿勢は「後方によりかかる姿勢」「しゃがむ姿勢」「腰かける姿勢」の一意的な姿勢ばかり想像しがちであるが、「肘をのせて支持する姿勢」「脚をのせて支持する姿勢」など、様々な姿勢がある。人はそういった一意的でない、様々な姿勢をすることを考え、デザインしなければならない。
アフォーダンスは人によって様々であるが、その様々なアフォーダンスと行動セッティングを想定しなければならない。
⇒個人によって異なった意識、反応、文化、歴史をもつ。そうした個人の差異性を考慮しなければならない。さらに、人間に共通する傾向も把握し、最適値を決めて空間をつくっていくべきである。